第8話 色々説明してくれてるようなんですが。(改稿版)
特殊技能集団・
それは『世界に調和を』を
「……で? そこには、こんな変態ばっか所属してるワケ?」
アイスカフェモカをズズっとすすりながら、私は横に座って
「
そんな事を呟きつつ、ソイツは指差した手を大きく骨張った手でフンワリ包んできたので、光速で振り払った。
「まっさかー! そんなワケないじゃないですかー。こんなのと一緒にしないで下さいよー。私は至って普通の庶民ですよー?」
アイスソイラテキャラメルソーストッピングから口を離し、明るくあはははと笑うのは
……ホントに普通の庶民がこんな物言いするかなー?
「あのっ……確かにちょっと変わり者が多いのは事実ですが、僕たちは至って普通ですよ?!」
そう言い繕って来たのは、アイスコーヒーを飲んでいた困り童顔の
「普通の人間、手からいきなり何かを、生やしたりしない」
そう返すと、ぐぅと
ここは駅近くのカフェのテラス席。
休日という事もあり、家族連れやカップル、遊びに出かける学生たち等、様々な人達がテラス席の横を楽しげに行き交っていた。
秋口といえどまだまだ日差しは強く、今日のように晴れた日の
支局長だという着物女性・
暑いにも関わらずテラス席に陣取っているのは、私が喫煙者だから。屋内喫煙席は、空気がこもって服に臭いが付くから正直嫌い。
だからテラス席にしたんだけど──こんな人通りも多い場所でおおっぴらにして良い話なのかと聞いてみたら『こんな話を信じるのは頭オカシイか不治の病にかかってる人だから、ある意味ヤバイけど大丈夫ですよー』と清々しい笑顔で返された。
現に貧乏ゆすりが止まらない。
……この三人も、
いつでも逃げ出せるように──そんな下心もあった。
左掌にある、火傷跡のような文様に違和感を感じて
「まぁ、例え普通の人が所属してたとしたって、変な団体には変わりないよね。第一何なん? 特殊技能って。こんなん使える人間がそうポコポコ居てたまるか」
そう言いつつ、私は布に包まれて
手に持っていなくても、私からある一定距離内にあれば身体に戻らないのだと教えてもらった。
この左掌に浮いた火傷の
……馴染まなくていい。
「それに、こんなのが私みたいな普通の人間に簡単に出し入れしたり使えたりしたら、それこそ簡単にニュースになっとるわ」
「そうでもないよ
そう、
「……え? 十人に一人?」
「はい。資質を持ってたとしても、本人がソレに気づかない事も多いんですよ。力の強弱もありますし、大概は訓練をしないと特殊能力は使えるようになりません」
案外その高い割合に驚いて聞き返すと、
そして、ソイラテをクルクル回しながらルリさんが続ける。
「だって、現に
「……
「そうですかー?」
そうだよ。こちとら微妙なお年頃やぞ。
ルリさんに更にそう突っ込もうとして──ヤメた。
話が進まなくなる予感が絶大だったから。
それに、突っ込んだら倍返し食らうわ、絶対。
咳払いをし、気を取り直す。
そして、話を続けようとした。
「……まあいいや。つまりまぁそこそこいる、その特別な能力者たちの一人が、その……」
言葉が止まる。
その名前を出すには、まだ抵抗があった。
考えただけでも、ギリリと頭が締め付けられ背筋が寒くなる。
それを察したのか、
「
「ヤダよ! 泣かねェし! 泣いたとしてもお前の胸なんかゴメンだね!!」
感傷的な気持ちが思いっきり吹き飛んだ。
反射でツッコミ入れたけれど、少しだけ、本当に少しだけ、有難いという気持ちが
「素直じゃないところも格別に可愛いよ。ゾクゾクする。……
「嬉しかねェわ! 呼ばねェし!」
早速気持ちが消し飛んだ。
しかし、
スッと私の方へと顔を寄せてくる。
「呼んでくれないと──」
そう言うのが早いか行動の方が早いか。ヤツは突然私の肩をドンと押した。
椅子に座っていたのでそのまま横に倒れそうになる──が、スルリと腰に手が回され受け止められた。
驚くと同時に眼前に寄せられる
私の顔にヤツの前髪がハラリと落ちる。
「この場でハリウッドキスするよ。飛び切り濃厚なのを、ね」
体の芯に響きそうな低く掠れた声。
甘やかなその声に、背筋がゾクリとする──悪寒で。
「キモい」
冷え切った心から、自分でも信じられないぐらい低くドスの効いた声が飛び出してきた。
キョトン顔の
私の体勢を元に戻しポリポリと頭を掻いた。
そして真顔で
「
いきなり自分に話を振られて、
「え?! あ、はい。そうですね」
「芸能人にも引けを取らないよな?」
「……そ、そうですね」
「落ちない女はいないよな?」
「それはど──はい、そうですね……」
途中から返答がしどろもどろになっとるわ。
「それ、先輩から後輩へのパワハラじゃね?」
が。
「何言ってるんですかー。
最後のソイラテをズズズと吸っていたルリさんが、そうアハハと笑った。
「そうなの? ここの先輩後輩のパワーバランスおかしくない?」
「
……相変わらず酷いな。どっちもディスらなきゃ気が済まないのかな……?
「まぁ組織のイカれ具合は置いとくとして。
その能力? それってそもそも何なの?
それに、さっき渡されたコレってどういうモノなの?」
先程から全く進まない話を再度進ませようと気を取り直す。
そして、さっき雑居ビル内で渡されて手首に装着していたモノを突き出して──
「百聞は一見に
私の行動を言葉で遮った、ルリさんのホンワカ笑顔に違和感を覚える。
その瞬間──
視界の端に、こちらへと猪突猛進してくる車が見えた気がした。
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