第15話 俺達の問題


「まァ、そうかスナ…ワレもソウしタイノだが……シカし……しかシなァ……アンタらガガしテくレテも、われガコノ姿スがタアラわしたときから、ズッとワれにラんでオる、アノ…早漏そウもれギミの小僧こゾうが、ソうヤスヤスとにガしテくれんノヨ……シカも、あの人間にンゲん小僧コぞウには…我々ワれワれ言葉コトばこエるラシイ…」


      そうづかなかった…


  「なに!?人間アダムの子が!?」


ディエールがその存在そんざいづかなかったのも無理むりはない、なぜなら、その人間にんげん冤罪えんざいのキルステンのみに、つよ思念しねんをぶつけていたからである、だから冤罪えんざいのキルステン以外いがいだれづかなかった…このならざるもの到達とうたつできる世界せかいに、介入かいにゅうできる人間にんげん1人ひとりいたことを、冤罪えんざいのキルステンにつよ復讐心ふくしゅうしん人間にんげんを……。



…それがまだ、17さい少年しょうねんレオであることに。


て…お前達まえたちはなしをいたぞ……ふざけるな…なぜがす…アルテミスって野郎やろうのあのうごきなら、わけもないはず…」


ディエールはレオがちゃんと理解りかいしていること驚愕きょうがくした。


「お…おどろいた…私達わたしたち言葉ことばを、理解りかいしうる人間にんげんがいるなんて……人間にんげんでは私達わたしたちら、このざるもの交信こうしんできるのは、天使てんし御加護ごかごけた神父しんぷのみなはずです………はては加護かごけたものか?……いや、そうにはえないが…。」


じつはこのときレオのよこには、人間にんげん治療ちりょうめいじられた天使てんしがいたが、そのレオだけ治療ちりょうができないでいた。


レオがその治療ちりょうこばんでいたからだ。


「ディエール…この我々われわれ治療ちりょう拒否きょひしています…正確せいかくには治療ちりょうをしているのですが、このけつけずかえすのです……。」


「あたりまえだ…なおされてたまるか!これはただの怪我けがじゃない…ただのいたみじゃない!!このいたみは、志半こころざしなかばでんでいった、スティーヴ…デフォー…ウィリアムたちのこした無念むねんいたみ………このいたみがおれふるいたたせてくれる、だから……なおすな!!」


常人じょうじんでは理解りかいできないであろう3にんともへのおもいにしばられたレオのこころからだかたくなに天使達てんしたち干渉かんしょうこばんだ。


おれことはどうでもいい…おれにかまうな!それよりもなぜがす…まさかあいつらに怖気おじけづいたのか?それとも……おまえらとくろモヤくろモヤ野郎やろううらつながっているのか?」


    「ばっ…だれが!!」


アルテミスが、レオの自分達じぶんたち天使てんし見下みさげたそのいに、反論はんろんしようとした瞬間しゅんかんとなりにいたディエールがアルテミスのくちさえぎり、ディエールみずからがレオのそのいにこたえだした。


私達わたしたち怖気おじけづいているわけでもうらつながっているわけでもありませんよ、ただ、これ以上いじょうせないというだけです、そこにはきみふくめたこのにいる人間アダムの子、の安全あんぜんを|優先ゆうせんするという意味いみをありますが…理由りゆうほかにもあります………。私達わたしたち言葉ことば理解りかいする少年しょうねんよ、あなたのために、わかりやすいように罪深つみふかもの人間アダムの子や、私達わたしたち天使てんしにどんな悪影響あくえいきょうおよぼすかご説明せつめいしましょう。」


ディエールはそうべると、レオに丁寧ていねい説明せつめいしだした。


「まず、冤罪えんざいのキルステンのあのくろいモヤは、罪霧ざいむいあれにれれば人間アダムの子人体じんたい悪影響あくえいきょうおよぼします、それは冤罪えんざいかぎったはなしではなくほか罪深つみぶかものしかりです。そして、私達わたくしたち天使てんしはそれらの影響下えいきょうかにははいりません…が、1つひとつだけ特例とくれいがあります、それが冤罪えんざいです。冤罪えんざい特異とくいつみなすけは、私達わたくしたち天使てんしには有効ゆうこうで、冤罪えんざいれられるだけで堕天だてんしてしまいます。…備考びこうですが堕天だてんすると彼等かれらのように体全体からだぜんたいくろいモヤがかかります、いわば堕天使だてんしあかし。で……本題ほんだいですね、いまところ私達わたくしたち天使てんしには、残念ざんねんながら…冤罪えんざいたいする対抗策たいこうさくはありません。だからこれ以上いじょうこのことあらげてしまったら、私達わたくしたち堕天だてんしかねないのです。」


こうディエールはレオに説明せつめいしたもののやはり、いまのレオにはディエールたち怖気おじけづいているようにしかこえなかった。


臆病者おくびょうものめ……おまえらがそいつらにせないのなら、おれわりにブチのめす……もともとそのつもりだったしな」



無理むりはよせ!!あんちゃん!!」


レオにこえがけしたこのこえは、レオを看病かんびょうしていたあの小太こぶとりのおっさんだ。どうやら、怪我けがしていたレオがになり船内せんないからてきたようだ。


「おっさんはだまってろ!!これは俺達おれたち問題もんだいだ!!」


そういのけたレオの血走ちばしっておりそして、はげしく興奮こうふんしているせいかくちからは吐血とけつさえしていた。

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