第14話 宣戦布告


キルステンというは、冤罪えんざい英語読えいごよみでも、イタリア語読ごよみでもない、ただの人間にんげんだ。


疑問ぎもんおもうだろう、なぜ人間にんげんなのか…それは罪深つみぶかもの誕生たんじょう起因きいんする。


罪深つみぶかもの人間アダムからまれ、それは人間にんげんつみおかせば、罪深つみぶかものまれるという道理どうりとなった。

そしてそのことは、人間にんげん罪深つみぶかものが、表裏一体ひょうりいったいであることし、そのつみおかした人間にんげんが、そのものからまれた罪深つみぶかものにそのままいた。



最初さいしょ23にんころされたのかとおもいましたが……冤罪えんざい…なるほど、それで彼等かれら堕天だてんしたのか……」


冤罪えんざいはなしをきディエールは、あせながした。


冤罪えんざい無実むじつであるのに犯罪者はんざいしゃとしてあつかわれてしまうこと、いわば、ぎぬ…」


天使てんしつみおかしたりするとてんからとされる、それを堕天だてんという。

そして堕天使だてんしになると、とされるだけではなくしゅから排除対象はいじょたいしょうとみなされ天使てんしからきびしい追撃ついげきけることになる。


それはそのえるまでわることはないという……。


冤罪えんざいのキルステンの能力のうりょく、その目的もくてき天使てんしつみぎぬ)を堕天だてんさせること

たとえそれが冤罪えんざいでもつみつみである、堕天だてんからはのがれられない。


ディエールには、そのことにかかることがあった。

それは、なぜ彼等かれら23にん堕天だてんさせたのか…


それはあたまなかである程度ていど予想よそうはついていたが、ディエールは、そのこたえに、よりたしかな確証かくしょうために、冤罪えんざいのキルステンにいただしてみた。


冤罪えんざいのキルステンよ、彼等かれら23にんの※天使てんしを、堕天だてんさせてどうするつもりだ?」


ディエールのとい冤罪えんざいのキルステンがこたえるそのまえに、ディエールの天使てんしとはなにか、そして以前いぜんせい天使てんしについての記述きじゅつを、ここにしるしておかねばならない。


天使てんしなかにはせい天使てんし天使てんし存在そんざいする。

せい天使てんしとはきるちからあたえてくれる天使てんしだ、そのせい天使てんし代表だいひょうとされる能力のうりょく万物ばんぶつ治癒ちゆというちからがある、それは、からだきずいやことはもちろん先程さきほどディエールがせたひとこころをもいやこともできる。


ちなみにアルテミスは天使てんしで、人間にんげん治療ちりょうをしているのがせい天使てんしだ。

そしてディエールは存知ぞんじのとおりせい天使てんしである。


そして天使てんしとは、いのちあるものすべてにあたえ、そしてつたえ、またいのちあるものすべてが自分じぶん人生じんせいまっとうしえ、いのちきるそのときに、冥府めいふへの使者ししゃとしてあらわれる。

人間にんげんあいだでは死神しにがみとしてばれおそれられている。



「ドうスルつもリかって?フッ、そのコたエはヒトつヨ、ワレラは武力ブリョくたん、ヒとあざけり、まドわシ、狂気キョうキサセるコトしかデキんのだ、そノため天使テンシナカでも武力ブりョくガあル天使テんシヲ、堕天ダてんさせわレ一族イチぞくヘイとセねバならんノよ…。」



へい………やはり…最後さいご審判しんぱんか?」


最後さいご審判しんぱんとはかみが12がつ24にち現世げんせ再臨さいりんし12がつ25にちから年末ねんまつまでの7日間なのかかんしゅ天地創造てんちそうぞうをしたときおな日数にっすう森羅万象しんらばんしょう審判しんぱん決行けっこうされる世界せかい終末しゅうまつである。


ディエールのその言葉ことば冤罪えんざいのキルステンは「ニッ」と不敵ふてきみをかべた。


「きサま…タダのセイ天使てンしジャないな?」


「さぁ…なんのことだか…」

ディエールは、はぐらかした。


「ふっ、まぁよイ…アンタの正体ショウたイなドいまは、るにラン小言コゴとよ、どウでもイイ」


冤罪えんざいのキルステンはさらにつづいた。


最後さいご審判シンぱン我々われワれもっとオソれテいるコト、ソレにくらべ…イイよなぁ人間にんげンは…天国行テんゴくいきか地獄行ジゴクいキかさバカレて…いイよナァ…我々ワレわれ一族イちぞクサばきもされズに無条件厶じょウけン地獄ジごクとサレるノに……オナじ、アだムからマれタのに…いいヨナぁァ人間にンゲんハ…」


冤罪えんざいのキルステンはうらメシそうにいくさった。


罪深つみぶかものはそのむかししゅつくったとされる人間にんげんへのばつである、しかししゅつくったモノであるのだが、その地獄堕じごくおちは絶対ぜったいであり一切いっさい特例とくれいのない不変ふへんなモノである。

なぜなら、罪深つみぶかもの邪心じゃしんそのもの、天使てんししゅからてもがいでしかないからである。


ただ唯一ゆいいつ罪深つみぶかもの最後さいご審判しんぱん回避かいひできる方法ほうほうがある。


それは…………………。


天上てんじょう天使達てんしたち武力討伐ぶりょくとうばつしゅ喉元のどもとやいばきつけること……。


「で…へいつく一族いちぞく戦力せんりょく拡大かくだいはかったと…?いや……それだけならふね転覆てんぷくさせ、そのうえこのふねまでおそわせることはしないはず………。」



「きさま…まだなにかあるな?……。」


ディエールはそうって冤罪えんざいのキルステンをにらみつけた。







っテいた……。」



「なに?」



我々われわレマエに、アンたタチあラわレルのをッテイタノダ、フね沈没チんボつさせたノも、オそわセタのモ……アンタたち下界ゲかイきズリだスタメのタダのえサ…。」


「くっくっくっ」


「……なニガ…オかシイ…?」


わらごえはアルテミスのようだ


「いや、姿すがたせた途端とたん、ベラベラとしゃべようになったなと、コソコソかくれていたからてっきりずかしがりさんかとおもったが」


アルテミスはあたかも自分じぶんが、この主導権しゅどうけんにぎっているかのようくちぶりではな冤罪えんざいのキルステンがおかしく、そしてわないみたいだ。



「ふッ…ってロ」


アルテミスの挑発的ちょうはつてき言動げんどう冤罪えんざいのキルステンをイラつかせた。


その不快ふかいなイラつきをかんじたディエールは、あまり刺激しげきをするなとアルテミスをせいするように、すばやくつぎ縷言るげんみみをかたむけさせる。


大仰おおぎょうことおかし、私達わたくしたちきずりだすことにも成功せいこうし、その結果けっかたかったこととはなんだ?」


ディエールはそうえると周囲しゅうい警戒けいかいした。

なぜならわなられているとおもったからだ。


しかし…その至高しこう緊張きんちょう数秒すうびょうわりをつげる。



「…シん目的モくテキは、あンタらシュ使ツかイに直接チョくセつ宣戦布告セんせんフコくつタエルたメヨ…」


どうやら、わなでディエールたち一網打尽いちもうだじんにするわけではないようだ、ディエールは想像そうぞうしていたことちがっていたので、すこ拍子抜ひょうしぬけした……。

そして、罪深つみふかもののその突飛とっぴ行動こうどうおどろいた。


正気しょうきなのか?天敵てんてきともべる私達わたくしたち天使てんし宣戦布告せんせんふこくなど……普通ふつう謀略ぼうりゃくめぐらし、すき油断ゆだんをついていくさなどを仕掛しかけるモノだ、それを、わざわざこれからあなたたちとケンカをしますなどとつたえにるとは…愚直ぐちょくすぎる……罪深つみぶかきはいくさらないただのバカか、それとも私達わたくしたち天使てんしを、終局しゅうきょく業火ごうか灰燼かいじん自信じしんがあって、堂々どうどうあらわれたのか…?



安心アンしンしろ…他意タイはナい」


冤罪えんざいのキルステンは、先程さきほどのディエールがした警戒けいかい強張こわばりをかんじたのか、まっさらな潔白けっぱく言葉ことばを、ディエールに贈おくった。



余裕よゆうのある口振くちぶりだ、おそらく後者こうしゃでしょう…。


ディエールは冤罪えんざいのキルステンのその平坦へいたんさと、気位きいある態度たいどからそうった。


「わかった、目的もくてきがそれだけというなら、これ以上いじょう殺戮さつりくいますぐ、このからるがよい…」


「ふっフっガしてクれルノか?

…サすがヨクわかッてイルよ………イマのあンたらジャわレあシセないコとを」


「おい…いいになるなよ、普段ふだんならこのからっているところだ……しのごのわずさっさとれ」


「フふふッ…」


どうやらディエールたち天使てんし冤罪えんざいのキルステンや堕天使達だてんしたちがすらしい。

それはここで戦闘せんとうはじめれば、このにいる人間にんげんにこれ以上いじょう被害ひがいおよぼしかねなくなり、それゆえ人間にんげん安全あんぜん第一だいいちかんがえた、がすなのだろう…。



しかし、ディエールのそのがす決断けつだんに、到底とうてい納得なっとくできないものがいた。

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