第10話 孤児院

我々われわれ天使てんしすくわれたのか?!」


「おぉ!きっとそうだ!!そうにちがいない!」


ひと九死きゅうし一生いっしょうると、神仏しんぶつしんじたくなるが、天使てんしという存在そんざいふるくからしんじられてきた。


キリストきょうでは天使てんしは、守護天使しゅごてんしとして教徒きょうと1人ひとりひとりをまもり、またあく退しりぞけるちからつと、かんがえられている。

そのため世界中せかいじゅうでは、天使てんし加護かごけるために、天使像てんしぞう建物たてものけるなどしていて、その代表的だいひょうてきなのが、フランスのモン・サン・ミシェルという修道院しゅうどういんである。

守護としていたのはミカエルで、創建そうけんは708ねん、モン・サン・ミシェルという名前なまえ意味いみは、ミシェルはフランスみのミカエル、サンはせい、モンはやまでモンサンミッシェル(せいミカエルのやま)だ。


「バカバカしい…天使てんしすくわれたなんて、じゃあんだ人達ひとたちはなんなんだよ…」



それはともうしなったレオには、がたいものであった。


レオはこれまでの人生じんせいで、天使てんしかかわりをったことはない、そしてこれからもいとおもっている。

しかし…天使てんしという存在そんざい、彼かれ身近みじかにはあった。

レオは孤児院こじいんだが、レオたちのいた孤児院こじいんじつは、教会きょうかい孤児院こじいん併設へいせつしているものであった、そのため教会きょうかい孤児院こじいん)は、子供達こどもたち守護天使しゅごてんしとして天使てんしあがめていた。

だがレオは…孤児院こじいんあまた存在そんざいする天使てんしの、だれ守護者しゅごしゃとしていたのか、まるで興味きょうみがなく神父しんぷがめざとく


自身じしんのためにいのりなさい」


いても、おいのりの時間じかんになったらげだしていた…だからおいのりすらしたことがない。


レオにはたしかにしんじられるともがいれば十分じゅうぶんであった。


「あいつら…アメリカ渡航当日とこうとうじつもおいのりしてたなぁ…なのに…なぜいのってない自分じぶんたすかり……あいつらはいのちとさなければならなかったんだ……孤児院こじいん天使てんしは、3人をまもらなかったじゃねぇか!」


レオはさわぎのもとがわかると、夕刻ゆうこくさむさもあってか早々そうそうと、船内せんないかえろうとした。



………だが。



甲板かんぱんひびわたったあるこえが、レオのあしをひきめた……。

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