第3話アメリカン・ドリーム

しかし…。そうかんじたのは、レオたちだけじゃないかもしれない。

この4にんが、ふねは、新大陸しんたいりくアメリカへの期待きたいいだ人達ひとたちあふれていた。


彼等かれらは、レオたちおなじでアメリカへの行楽旅行こうらくりょこうでは、けしてちがう。

なぜならこのふね乗客じょうきゃくのほとんどが、失業しつぎょうした人々ひとびと仕事しごとつけられない人々ひとびとで、なけなしの全財産ぜんざいさんをはたいてアメリカへ渡航とこうしようとしていた。


19世紀当時せいきとうじのアメリカは、そのころすでに独立どくりつたしておりその経済けいざいは、植民地時代しょくみんちじだいから本国ほんごくイギリスを圧迫あっぱくしていたほどでさらに、アメリカの広大こうだい土地とちは、まだまだ開拓かいたく余地よちがあった。


そうこうしているうちに、レオたちは、アメリカまでの船旅ふなたびあいだ寝起ねおきする部屋へやに、どうやらいたようだ。

レオたち部屋へやは、3等室とうしつで2だんベッドが2ついてあるだけである。


4人は荷物にもつをそれぞれき、ベッドにこしとしてひといきついた。

そして、すわるなりスティーブが、3にんかたりだす。


「そうだ、アメリカにいたらみんななにするんだい?かなえたいゆめとかある?」


スティーブのそのきゅうといに、普段大人ふだんおとなしいデフォーが、いの1ばんこたえた。どうやらかたりたいゆめがあるらしい。


「もちろんあるよ!かなえたいゆめ!おれ保安官ほあんかん!!わるやつつかまえたい!こまってるひとたすけたいんだ!」


それをいたウィリアムは、デフォーにけじとそれにつづいた。


おれ医者いしゃだな…。まずしいひとでもへだてなく治療ちりょうできるそんな医者いしゃになるぜ!!そういうスティーブは?」


デフォー、ウィリアムは、きよらかでよどみのない少年しょうねんらしい無邪気むじゃきさで、おのがゆめかたったが…


「あるよ……。」


スティーブは、彼等かれらとはすこちが感慨深かんがいぶかげに、天井てんじょうつめ

そのおおいなるゆめへの道筋みちすじ確実かくじつとらええているかのようにゆめかたった。


「……ぼくはね、アメリカで大統領だいとうりょうになって、僕達ぼくたちよう孤児こじまない、ゆたかななかつくりたい。そのためには経済けいざい勉強べんきょうし、おかねかしこうごかしかたながれをり、はたらぐちやし、それこそ格差かくさ社会しゃかいにしなくてはならない。そのみちのりはけわしいだろうけど、そのゆめ実現じつげんためならこの身全みすべてを、ささげてもいいとぼくおもってるよ」


スティーブがそうゆめかたえたとき


ほかの3にんは、スティーブの、そのゆめへの並々なみなみならぬおもいと決意けついいきんでいた。

さしもウィリアムにいたっては、めんらっているようだ。


「スティーブはやっぱり俺達おれたちちがい、しっかりかんがえてるよな…」


「うん!!」


「あぁ…。それに、スティーブは頭良あたまいいから馬鹿ばかなデフォーやウィリアムより現実味げんじつみがあるな」


レオの突然とつぜん毒舌どくぜつにウィリアムは、わらいながらかえす。


「おい!!1ばんのバカのレオにはわれたくないわ!!」


りぃりぃ、ハッハッハッハッ」


「アッハッハッハッ」


レオたちのいる部屋へやは、あたたかいわらいにつつまれた。

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