第七殺父親の影、歴史に染み渡る闇の流転
「ただいま」
貴城泉は自宅へと帰った、賃貸アパート、六階616号室、母親は夜職の人なのでいない、作りおきの夕食がそこに置かれていて。
「喧嘩したら傷が膿む前に必ず救急箱を開くこと!」
と注意書きのメモが書かれていた。
「……最近はずっと無傷だってーの」
それにしても、と彼は思う。
旧式の魔人王と新型の魔人王の差、それはとてつもないように溝があった。
「俺みたいなのも一人じゃないらしいからな、俺が『正当』と言われる筋合いもない、そもそも魔神鳥というのは……」
☣️☣️
平安時代、鵺と呼ばれるモノがいた、あらゆる動物的特性を持ち、鵺と呼ばれながらそれは和風のキメラに近かった、得たいの知れない者、不気味な者を鵺と呼ぶこともある。
そして鵺は魔神鳥を指す隠語でもある。
日本では魔神鳥は東京崩壊を招いたあの一匹だけではなく他にもいた、世界各地で魔神鳥は跋扈していた、理由は一つ、中国での鳳凰は生まれた時、虫けらである、虫けらが大きな鳥になるのを貧相な民草から貴賓溢れる者へと生まれ変わるのを意味していた。
貴種流離譚、英雄は、高位の両親、一般には王の血筋に連なる息子であり、彼の誕生には困難が伴う。予言によって、父親が子供の誕生を恐れられ、子供は、箱、かごなどに入れられて川に捨てられ、子供は、動物とか身分のいやしい人々に救われ、彼は、牝の動物かいやしい女によって養われ、大人になって、子供は貴い血筋の両親を見出され、この再会の方法は、物語によってかなり異なり、子供は、生みの父親に復讐する、子供は認知され、最高の栄誉を受ける。
簡単にいえばジャンプでよくある事だ、友情努力勝利より血統主義がジャンプでは秘められた最上級の貴種流離譚価値観なのだ。
虫けらのような者達は世界各地に溢れていた、西洋では魔女扱いされる女だろうし黒騎士だったりする、古代文明なら生け贄要員の人材、もしくは十字軍で敗れた子供の奴隷、なんならエジプト、ローマ、ギリシャのありふれた奴隷でもいい、今ではスラム街の人間、ホームレス、そして何より親なき養子というなら昔から今まで溢れるようにいた、日本ならば室町時代辺りの日本では異類異形と見なされたある種の人々―エミシ(俘囚)、サンカ、貧民窟、乞食、東光寺、弾左衛門、別所、となるだろう、かの豊臣秀吉もこの異類異形の出身だという。
そういう者達は現世そのもの、世界そのものに憎悪を抱く、何故、自分は絶望に追いやられたのか?自分は悪いことをしたのか?何故、奪われるだけなのか?いいや、生まれが悪い、それだけで奪われる存在になる、ならば逆になろう、悪逆無道になろう、狼心を持ち、あらゆる富める者から奪おう、天に唾を吐き、地平線の全てを黒い泥で見たそう、誰だって、無慈悲には無慈悲になりたくなる、貧すれば鈍するという言葉があり、例え、人徳ある素質のある子供も容易く怪童に変わってしまう、それが世の無情であった。
この生まれもってがネックであり、鳳凰は不死鳥なので死に、やがて、生まれ変わり、また虫けらになりまた大きな鳥になる、生々流転、つまり没落貴族になった後、また貴族になろうとするという話だろう、こと中国においては王政の移り変わりが激しく、没落した者の再興もまたよくあることであった。
だから貴城泉は思う、それは滅びてなお燻る野心の残留思念の結果、自分も生まれ直したのだ、そしてそれは本当の父親に仕組まれた事だったと感じている。
☣️☣️
「ならばこそ俺は『完全無欠』でいないといけないんだ、本当の父親の思惑はこうだろう、俺が最強であり続けるならば本当の無限、永遠の繁栄を手に入れられる、と、期待していてくれお前の思惑通りで動いてやるよ、お前の全てを奪い取ってやるがな!」
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