第六殺世代交代の序章、殺戮軍団登場


八大旧魔人王の乱戦後、勝田咲は辺鄙へんぴな住宅街を歩いていたがそこに襲撃された。


戦車である、見かけないタイプだ、見かけないというのは既存の型ではないということ。


「戦車ねぇ……」


勝田咲はそれを見て、戦車の上に仁王立ちする紫色の軍服をした存在に気づいた。


「ナーハッハ!貴様が勝田咲か!我は新たなる魔人王の一人!六大勢力!殺戮軍団の軍団長のジェノサイド・カイザー!梅木墓浪うめきぼろうだぁ!ナーハッハッハ!くたばれエェーー!」


戦車から発射されるのは特殊な鉄鋼弾、音速を越えて吐き出されたそれは勝田咲の右腕を肘から先に炸裂して消し飛ばしてしまった。


「『魂濁塊ネクロコア』、死んだ人間の魂を集めて固めて作る死霊魔術の結晶、それを戦車の鉄鋼弾にして放つなんておぞましいなぁ」


「貴様が言うかぁ!こんな世の中にしたのは貴様のせいだ!諸悪の根源!この我が裁いてくれる!いくぜエェーー!二射目ェッ!」


二射目は今度は左腕に炸裂して、右腕と同じように肘から先を消し飛ばしてしまった。


しかし、勝田咲はそれに怯まず、口を開け、針を撃った!!


「うヴ!オヴォエエ!!!!」


それが梅木墓浪の右目に当たった。


「ウガアアァァァーーーッ!!き、貴様、貴様貴様貴様貴様アアァーーッ!何してくださりやがったんだど畜生鬼畜野郎がァーッ!」


梅木墓浪は激昂しながら絶叫する。


「一矢を報いたねぇ……」


勝田咲はそう呟き、梅木墓浪は針を眼球から抜いて、それを投げて更に絶叫を続ける。


「貴様貴様何様だアァーーッ!許さねぇ許さねぇ許さねぇエェーー!三射目エェーー!さっさと放ってお殺してあげなさーいッ!」


炸裂顔面の上半分、下、下顎と下歯は残るが鼻から上のライン、当然眼球頭蓋骨脳味噌耳髪の毛さえない、それを生きているのか?生きていると言えるのか?不思議であった。


だがーーーー


「ナチスコスプレ野郎が」


煽る。


「は?」


それに青筋を浮かべる梅木墓浪。


「軍服してるやつはナチスコスプレ野郎と相場が決まっている、中二病患者は家に帰ってネットで正義はない!キリッとかしとけ」


「ハアァーッ!?貴様本当に貴様!無様にゾンビって言うことがそれかぁアァーッ!やたらすぐナチス!その発言はナチス!その仕草はナチス!いつまで言ってるんだ?結局懐古厨共が!死ねくたばれ殺すぞゴミィ!我は!殺戮軍団は!意味もなく理想もなく!ジェノサイドを楽しむために作った殺人鬼同好会だ!ナチスなどという粕と一緒にするな!」


勝田咲はそれを聞いて張り合いたくなった。


「それは悪かったですね、ところで私、HUNTER×HUNTERにハマってましてね」


「それがどうかしたか?」


「貧者の薔薇みたいなの体内に埋め込んでいるんですよ、『魂濁塊ネクロコア』はふぐの毒肝みたいな有害物質ですが粉末上にして散布すれば立派な毒ガス兵器なんですよね、ではそれでは殺戮軍団に教えてあげましょう、殺戮とはこれなんですってことを!」


「バーガアァァアァァーッ!クソ!『冥界』に帰還する!貴様らは死んでいろォッ!」


梅木墓浪はおののき隣に黒い渦巻く球体を出してそこに自ら吸い込まれていく、戦車から出てきた者達もそこに入ろうとしたが遅かった。


勝田咲から凄絶な爆発音、そこから『魂濁塊ネクロコア』の粉末状になったモノが散布される。


「ウベエエエーッ!!死ぎゅう!!」


「ゲハアアァーーッ!アーアーアーッ!ぐグルジイ」


「靖子!靖子!!!死ぬときは一緒…ゴボァアッッ!」


「お父ちゃんがついてるガガガラナパッ」


「ヤットジネル」


「神よ神よ神よ神ヨオオオオォッー!」


阿鼻叫喚、南無三、それによりその辺鄙へんぴな住宅街は突然の毒ガス兵器の死の連続によりゴーストベットタウンになった。




勝田咲は『また』死んでしまったが勝田咲は『まだ』生きているーーー


まるでシュレディンガーの猫のように。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る