ジモティーはいつだって本気

煌びやかな地下王宮で、きらきらの笑みを浮かべたレオナルド様はジェラール様と対面した。


「初めてお目にかかる。この国の王太子で【エレノアの婚約者】のレオナルドだ」


エレノアの婚約者を強調しましたね!

ハルトくんから事情を聞いたレオナルド様は、ちょうど私たちの話が一段落したときに光に包まれてやってきた。


当然、マティアス様も一緒に。

彼は私の姿を見るとホッと安堵した表情に変わり、かなり心配をかけてしまったみたいで申し訳ない。


ジェラール様は、淡々と挨拶を返した。


「ヴァンパイア王、ジェラールだ。1000年眠っていたゆえ俗世のことはわからぬが、そなたらに悪意がないことはわかる。歓迎しよう」


「ははっ、それはありがたい」


レオナルド様は笑みを浮かべているが、ジェラール様が敵か味方か測りかねているようだった。

それはまぁ、そうだろうな……。

だって私たちと違って、いきなりヴァンパイア王が蘇りましたって言われても「は?」ってなるでしょうね。


マティアス様とハルトくんという護衛がついているとはいえ、王太子がここまで来たことが普通ではありえない。


「エレノアはどうしました?」


転移は3名まで。私がエレノアのことを尋ねると、マティアス様がそっと耳打ちしてくれた。


「エレノア嬢はいったん離宮へ戻った。どこにも異常は見られなかったが念のため医師の診察も受けるようにと、レオナルド様が命じられて」


「そうですか」


半日とはいえ行方不明だったのだから、妥当な判断だと思った。


レオナルド様はジェラール様と向かい合い、あっという間に今後のことを決めていく。


「ミッドランドへ、ということですが、そちらは少々根回しに時間がかかります。こちらとしては、ジェラール殿の城へは入りたくないという希望を汲み、ひとまずは離宮に滞在していただきたい。稀有な能力をお持ちですから、城で衆目を集めればよからぬことを企てる者に利用されかねないということもあります」


「わかった」


我が国としても、ジェラール様が持つ力をよそに取り込まれるのはよしとしない、というのは想像できる。


けれど、ミッドランド行きを阻止することもできない。

だってどう考えても魔法を使えるジェラール様の方が強いから。


レオナルド様の考えとしては、あくまでジェラール様は我が国の賓客であり、ミッドランドへは観光名目で移動する……というものだろう。



ジェラール様もすべて理解した上で滞在を了承してくれて、私たちは皆で地上へ向かうことに。


ただし、一度に移動できる人数は3名。

いったん私とシル様、レオナルド様が地上へ向かい、その6時間後にハルトくんとマティアス様、ジェラール様が転移することに決まった。


「私も残りますっ!」


マティアス様を残していくのが不安な私は必死で縋るも、彼に絶対にダメだと言われてしまった。


今生の別れのように抱き着いて涙する私を見て、レオナルド様はちょっと引いている。


「マティアスもハルクライトも立派な騎士だ。なぜそれほどまでに案じる?」


理解できない、という風に呆れるレオナルド様。

私はそっとマティアス様に背中を撫でられ、言いくるめられた。


「フォルレットは自分の身体にことだけを考えてくれ。私たちの子を産めるのは君だけなのだから」


「それはそうなんですけれど~!」


しかしここで、まんざらでもない顔でシル様が提案する。


「私がハルト様と一緒にここに残るわ。ええ、親友であるフォルレットのためですもの、それくらい当然です」


頬を赤らめ、明らかに私欲で動くシル様。

ハルトくんと一緒にいたい、その内心がばっちり伝わってくる。


「シルフェミスタ王女、なんてお優しい……!」


ハルトくん、まさかの好感度アップ!

シル様は手ごたえを感じ、にやけている。


レオナルド様はシル様がここに残ることに難色を示したが、「ジェラール様とミッドランドでのことを話したい」というシル様のごり押しに負けて、結局それは実現した。


「フォルレット!またあとでね!!」(意:ハルトくんと仲を深めるわ!)


「シル様!またあとで!」


ジェラール様はすべてを察し、シル様の恋心に関心していた。


「己の幸福を追い求めるのはいいことだ」


エレノア行方不明をきっかけに、私たちは新たなキャラに出会うことができたのだった。


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【本編完結後の番外編】悪役令嬢は推し未亡人!? 転生したので婚約者の運命を改変します! 柊 一葉 @ichihahiiragi

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