4.

城の外に出たレオとサジタはドラゴン退治の剣を使いこなす練習にはげんでいた。

「あの斬撃をドラゴンの急所に当てなければなりません」

「へー、急所ってなぁどのへんだべか?」

「頭か、心臓です。

 ドラゴンの大きさを考えて狙いを定める必要があります」

レオは広場の中央にある大きな像を指さした。

カレイド王国の創始者である勇者リトの像だ。


「ドラゴンはあの像くらいの大きさです。

 あれで大きさをイメージして練習しましょう」

「あのチリチリパーマの像だな!

 っしゃぁー!

 ザシュッ!!!」

サジタは間髪入れず斬撃を放った!


「あ゛っ!!! ちょっ、まっ!!」

斬撃はチリチリパーマの顔面に直撃したが、破壊されることはなかった。


「あ、あのっ・・・

 直接当てずに、ギリでお願いします!!

 あくまで大きさのイメージってことで!!」

まさか国の英雄に躊躇せず攻撃を加えるとは思っていなかったが、説明していなかったレオにも責任の一端はある。

ドラゴン用の武器で本当によかった。


サジタがドラゴン退治の剣を使いこなすのに時間はかからなかった。

次は城外でモンスターを相手により実践的な訓練を行う予定だが、レオの見立てではサジタは既にドラゴン討伐に十分なを備えていることは明らかだった。

それはつまるところサジタを見殺しにすることが決まってしまうということでもある。


しかし、レオがウソをついてサジタにはドラゴン退治はムリだと報告すれば、ドラゴン退治はレオの役目となるだろう。


あまりにも重い命の選択をつきつけられ、険しい表情でサジタを見つめるレオの耳に怪音が聞こえた。


「グゴワァァァァァッッッッ!!」


すぐそばに巨大な鎧ワニが近づいていたのだ。


「わっわっわっ!!

 でっけえワニ!!」

サジタは元いた世界では見たことのない大きさのワニの出現に面食らってしまった。


ドラゴン退治の剣の斬撃はワニにはあまりダメージを与えられない。

普通に剣として戦うしかないのだが、レオは肝心の武器をサジタに渡してしまっている。


彼を守るため、レオはとっさに魔法を唱えた。


「サンダーストーム!!!」


鎧ワニは雷撃に包まれ全身黒こげになったが、そのまま身をひるがえして逃げ去っていった。


「な、な、なんだそれ!?

 魔法だべか?

 かっけぇなぁーーー!!」

「私は魔法専門ではないので、あまり強力な呪文は使えないのですが、いろいろな敵に対処できるようにいつくか魔法を覚えているんです」

「なるほどなあー。

 あんちゃんみたいな人がいると、やっぱ頼りになるだな!

 がっはっは」

サジタのなにげないセリフにレオは気づかされた。

自分には国を守るという重要な役目がある。自分の命は自分だけのものではないのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る