愚者の贈り物 オー・ヘンリーに

 ある街に、ジムとデラという若い夫婦が住んでいました。

 彼らの生活は貧しくつつましく、そして愛情豊かなものでした。ただ、妻のデラにはひとつの悲しみがありました。それは、彼女の顔の醜いことでした。

 ところが夫のジムは、街中の若い女性が通り過ぎると、かならず誰もが振り返ってみるほど、美しい容姿をもっていました。デラはいつも自分のことを恥ずかしく思い、ジムに釣り合わないのではないかと疑っていたのです。しかし、ジムはデラの心の美しさを愛していたのでした。

 さて、ここ数日、デラは結婚記念日に、夫に対してどんな贈り物を贈ろうか悩んでいました。夫の愛情に応えるには、お金に代えられないほどすばらしいプレゼントでなければいけません。

 ついに、その日。

 帰宅したジムの前に、デラは仮面をつけた姿で立っていました。

「これがあなたへのプレゼントよ」

 といいながら外した仮面の下は、この世のものとは思えないほど美しい女性の顔がありました。デラは持っているお金をすべてつぎ込んで、整形手術をしたのです。

 ジムはよろめきました。

 なんと、ジムも仮面をつけて帰ってきていたのです。

 彼は、空虚で皮肉な笑い声を出しながら、その仮面を剥ぎました。そこから現れたのは、一目見ただけで子供がひきつけを起こしてしまいそうなほど醜く歪んだ顔でした。

「君に合わせようと思って……」

 なんという神様のいたずらだったでしょう。でも、彼らの愛情だけは、宝石のように美しく、本物の光で輝いているのでした。


 しかしただひとつ思ってもいない誤解がありました。結局、この美しい夫婦の物語は、わずか三日後に悲劇で終わることになります。

 デラは知ってしまったのです。

 美しい女性が、それだけで世のすべての男性に対して、驚くべき強大な力を手中にしているのだということを。

 そのうえデラは、たいへんな面食いだったのです。

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