セクハラ警察

 最近、警察の不祥事が続く。

 O県警の射撃訓練場で、教官が女性刑事に訴えられるという事件が起きた。その老教官が訓練中にセクハラ行為に及んだというのだ。

 ところが、そのワイセツ教官を取り調べる刑事たちは皆、かつての彼の教え子でなのである。取調室は、どうにもいやな雰囲気になった。

「えっと……」

 見ると教官はぐったりとうなだれて、とても情けなさそうだった。その顔はバンソウコウだらけで、痛々しく腫上がっていた。どうやらセクハラに及ぼうとしたとき、女性刑事にボコボコにされたらしい。

「君、被害者の主張を読んでくれ」

 主任刑事に指名された新米刑事は機械のような声で読み上げた。

「以下は被害者の供述です。射撃スタイルを指導するために、私の身体を触ることは我慢できました。でも、そのとき、耳元で『パンティー売って』って囁いたのよ。こんなひどいセクハラ許せませんわ……ということです」

「ぬ、濡れ衣だ」

「教官!」

 うろたえる老教官を見て、主任刑事が残念そうに話し掛けた。

「まさか、あなたが女性の下着を集めるのが趣味だとは思ってもいませんでした。こんな事件を起こす前になぜ相談してくれなかったのですか」 

 新米刑事は、もし相談したらこの人はどうするというのか、と思った。

「僭越ながら、私の妻の下着を差し上げることもできたのですよ」

 ……そういう問題ではあるまい。

 ともあれ、老教官は相変わらず、かたくなに自分の犯した罪を認めようとしない。

「訓練中に彼女の体に触りましたね」

「射撃スタイルの指導をしていたのだから、体に触ることもある。彼女の誤解だ、解放してくれ」

 立場の逆転というものは人間をここまで動揺させるものらしい。老教官の姿は、これまで見てきた多くの犯罪者と何から何まで同じだった。

「パンティを売ってくれといったのですね!」

 主任刑事の追求に、老教官は、血相を変えて叫んだ。

「違うんだ」

教官は現場を再現しようと身振りを加えながら呟くようにいった。

「射撃スタイルは決まった。だから……ああっー!」

彼は青ざめた顔で大声を上げた。こりゃ誤解を解くのは大変だぞ!

その時の言葉。


「じゃ、パーンって撃って」

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