花火

花火大会を見にきた。久しぶりに見た。いつぶりだろう、覚えてない。つまらないと思っていたけど、きれいだなあ。スマホで撮ろうと思ったけど、画質が荒いからいいか。目で見るだけでいいや。



お腹がすいたので夜店の焼き鳥を三本買った。豚バラと鶏モモと鶏カワ、大きくて食べにくい。暗い道路の縁石に座って黙々と食べた。やっぱり夜店で買う焼き鳥はなぜか美味しい。



花火が案外長かったので、飽きてきて途中だけど帰ることにした。見慣れない民家の並びを歩いていたら、夏の夜のぬるい空気で汗が少しずつ肌に張り付いてきて、少しいやな気分になったような、懐かしさを感じたような、そんな気分になった。



花火の鳴る音が後ろから聞こえる。それに合わせるように、前に見える民家の並びがいろんな色に光る。それを見て、これは花火よりきれいなのかもしれないと思った。太陽に照らされる月があるように、花火が照らす人間の営みは、きれいで鮮やかに光ってみえた。



夜の虫の鳴き声と、夜店から漂ってくる焦げたような、美味しそうな匂いが、帰り道になってはっきり感覚に染み込んできた。それを感じながら、しばらく歩いた。



近くの中学校のグラウンドに臨時でつくられた駐車場にいって、車の中にはいった。車内はいくらか暑くなっていて、エンジンをつけて車の中を冷やした。窓を少し開けると花火の音がまだはっきり聞こえた。しばらくそのまま暑さを冷ますように、車の中でじっと花火の音を聞いていた。







花火の音が消えると、僕は車で見慣れない道をゆっくり走って家へ帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る