ある少年の日常
沼ボン
第1話僕っていう人
こんにちは。はじめてお目にかかる人も多いかもしれないね。
僕は本名は言えないけど、じゃあ仮にもジョン・ドゥと名乗ろう。
皆は僕のことをジョンって呼んでくれていいよ。
簡単に僕の経歴を話すと、3人兄弟の末っ子として1992年に誕生したんだ。僕が5歳の頃に両親が離婚して、母に引き取られたんだよね。残りの兄弟は皆裕福な父のもとで暮らすことになった。僕の父から送られてくる養育費はわずかなものであり、苦しい生活を強いられた。母もこの状況に耐えられず、いつしか新興宗教に没頭するようになり、僕を放っておくようになったんだ。
僕は愛情を知らないまま時を過ごして、小学校に入った。小学校でも周りとの集団生活に馴染むことができず、校庭の裏で一人遊ぶか図書館にこもっていた。幼いながらも自分の存在意義やこの退屈で苦しい毎日を抜け出す方法をもがくように考えていた。学校はもちろんのこと、安息を味わえるはずの家ですら僕の居場所はなかった。家に帰っても母は宗教だの恋人で一杯になり、僕のことなんか構ってくれなかった。
僕は現実逃避するようになり、空想上のイマジナリーフレンドを作って遊ぶようになったんだ。イマジナリーフレンドと一緒にいる時は嫌なことも辛い孤独感を忘れさせてくれる。彼らは僕にとって一番の理解者であり、全てだった。母にイマジナリーフレンドの話をすると、母は僕のことを悪魔に憑りつかれた汚らわしい子どもと罵ってきた。彼女は僕をとある宗教施設に連れていき、監禁状態でお祓いの儀式を執り行った。僕はその恐怖のあまりイマジナリーフレンドの存在そのものを否定するようになり、しばらく放心状態が続いた。
お祓いの儀式を終えてから僕の心にはぽっかりと穴が開き、空虚そのものになった。僕はただ自分のことを理解してくれる友だちが欲しかっただけなのに、何故あそこまで虐げられないといけないのか。イマジナリーフレンドを考えるだけで、あの悍ましいお祓いの儀式を思い出してしまう。僕はいつしか母や自分を苦しめてくる人間たちに憎悪の感情を抱くようになったんだ。
ここまでが僕の簡単な経歴かな。僕の物語の続きはまた別の章で語ることにしよう。それでは読者諸君、またどこかで会おう。
ある少年の日常 沼ボン @numabon913
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