第31話 仲間由紀恵とESTA

 「とりあえず、三寿さんはパスポートの更新してきてください。後は私がやっときますんで」

 

 美咲は頼もしくそう言った。

 さっそく、ハワイに出るため、どうすればいいのか美咲に相談しに行くと、後は全て任せろという。

 「いやいや、それは悪いって。自分でやるからいいよ」

 「だって、三寿さんESTAの登録とか、航空券とホテルの予約とか全然できないでしょ。新婚旅行のときも奥さんにまかせっきりだったんでしょ?どうせ」

 ぐっ。なぜ、そのことを……。

 全く言い返せなかった。

 ESTAとか、本当に意味がわからん。

 あんなものを自分で登録できる人って本当にすごい。

 「……まあ、そうなんだけど」

 「まるっとさっぱりお見通しなんすよ。まったく。ボンクラ男はみんなそうなんすよ」

 クソっ。仲間由紀恵め……。じゃなかった、美咲め。

 「ひどっ。ちょっと、そういうのが苦手なだけだ」

 「ま、そういうのも、らしいっちゃ、らしいですけど。あと、これ」

 美咲は一枚のメモ用紙を俺に渡した。

 そこには、ハワイの住所と時間が書いてあった。

 「ん?何これ」

 「あっちで予約したんですよ。奥さんがいる会社に撮影の依頼を。で、当然、奥さんをカメラマンで指名してます。書いてある時間にその住所に行ってください」

 ……いやいやいや、そこまでしてくれたのかよ。

 「……仕事、早すぎだろ」と、俺は感動した。

 「なめないでください。これでも一流の探偵ですよ?」

 「……いや、もう、探偵を超えてるような気がするけど」

 「まーまー、細かいことは気にしない。あ、でも絶対にお土産忘れないでくださいね。これは、そのリストです。一つでも買い忘れたら、三寿さんの恥ずかしい写真をSNSに公開します」

 恥ずかしい写真ってなんだ。

 ……思い当たるふしがあって、俺はぞわっとする。

 特に、ここで、マッサージを受けている時の俺は結構ヤバいはずだ。

 「ちょっ、それだけはやめろ。っていうか、いつの間に、そんなもん撮ってるんだよ!」

 「はは。冗談っす。まー、楽しめはしないでしょうけど、せっかくのハワイですし、それなりに楽しんでください」と、美咲は敬礼をした。

 「はは。うん。そうだな。それなりに楽しむよ」

 そう、せっかくだから、楽しむくらいの気持ちでいかなくてはいけないのだろう。

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