第18話 修羅場だョ!全員集合 その1(軽井沢編⑤)
軽井沢タリアセン。
1971年、塩沢湖周辺に塩沢遊園が開園し、1983年、軽井沢レイクランドに改称、1996年に総合レクしエ―ション施設「軽井沢タリアセン」となった。
敷地は約10万㎥。塩沢湖の湖畔にボートなどの遊具施設、イングリッシュローズ・ガーデン、美術館、レストランなどを設営。遊歩道を巡らせた広大なレクリエーションゾーンである。
(以上、ウィキペディア「軽井沢タリアセン」より抜粋)
というわけで、やってきた軽井沢タリアセン。
これもウィキペディア情報だが、タリアセンとは、建築家ライトが主催する「創造的集落」の名前で、意味は「輝く額」だという。
なんとなく建築家の名前とタリアセンの意味から、「ハゲ頭」をイメージしてしまうのだが、ライトがハゲだったかどうかまではわからない。
入口には小さい川が流れて、そこには出店がこまごまとあり、ウグイス笛を頻繁に吹き続けるおじさんがいた。
若干、不安になったが、中央ゲートを超えると、湖の周りに「THE軽井沢」といった光景が広がり、先輩と俺はさっそくボートに乗ることにした。
スワンボートに乗るのは、何年ぶりだろうか。
湖には、俺たちと同じように大勢の家族やカップルがスワンボートに乗っていた。
先輩は「私、これに乗るの初めてかもしれないな」と言ってゆっくりペダルを漕ぐ。
俺は、「じゃあ、もっと早く動かしましょう」と言ってペダルを思いきり漕いだ。
スピードを上げたボートが大きく揺れる。
「もう、やめろよー」と先輩は俺をぽかぽかとたたく。
湖にいたカモは、すいすいと優雅に泳ぐ。
嗚呼、なんという平和。
これが、俺の望んでいたものだったのだろうか。
もう、会社を辞めて、このまま軽井沢に先輩と何もかも忘れて暮らしてしまってもいいのではないか、と思い始めた時に、「先輩?」と、聞きなれたあいつの声が聞こえる。
幻聴だろう。
まさか、幻聴まで聞こえるほどに、あいつのことを考えていたということに対しては驚かざるを得ないが。
軽井沢にあいつが、小石川梓がいるわけがないのだ。
「せんぱーい。何気が付かないふりしてるんですか?」
スワンボートに乗っている小石川が俺の横にいた。
同乗者には、驚くべきことに、超一流のマッサージ師兼探偵の久能美咲もいた。
幻聴に続いて、幻覚。
なるほど夢か。
夢の中だとしたら、あり得ないシチュエーションも起こりえるはずだ。
俺の頭で井上陽水の「夢の中へ」が鳴り響く。
忘れ物はないですか?見つけにくいものですか?
「なーに、汗だくになってんすか。現実っすよ。現実。受け入れてください」
と、美咲は悪い笑みをこぼしながら言う。
「知り合いなのか?」と、先輩は訝しげに聞いた。
夢の中へ夢の中へ行ってみたいと思いませんか?
「ウフッフー」と、俺は思わず口に出していた。
「あ、壊れた」
と、誰が言ったのかはわからないが、とりあえず、腹が減ってきたのは間違いないので、岸に上がって、俺たちは、ご飯を食べることにした。
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