死ぬ事が分かることで

リナリア

第1話 虐められた少女

 皆さんは自分がもうすぐ死んでしまうと分かってしまったらどうしますか?

 残りの時間を大切な人と過ごしますか?

 やりたい事をやれるだけやりますか?

 誰かにやられたことの復讐をしますか?


 死神は常にどこでも存在しているのです。貴方の横にも迫っているかもしれませんね。






 「私は!!!」


 少女は叫ぶ。

 自分を無視しないでと。

 そこに置いてある無機物の置物のように、無価値な空気のようにと。


 私は!こんな生活を送るために生まれてきたんじゃない!

 もっと友達と他愛ない話とか、遊んだりとかしたかった。


 どうして私を責めるの?助けてくれないの?貴方達に何かしたわけでもないのにどうして?


 ムカつくから、面白くないから、反抗しないから、程度のいいストレス発散法だから、楽しいから。


 私は...私は貴方達のサンドバッグじゃない!ひとりのなの!


 少女は叫ぶ。

 周りが唖然とし、静けさに襲われた空間に自分の存在を示すように。

 クラス総出で、いや、家族も親戚も、自分に関わる全てに分からせるように。


 ーーー自分が居なくなった後、少しでも悲しさを受けてもらうために


 私は...私は...


 自分の命の終わりを告げられたから。


 私は知っている、自分がもうすぐ死ぬことを。

 この世のものではない奴に告げられた、お前はあと1日で死ぬと。


 だから私は...



 「そんなの、みんな分かってやってるんだよ」


 私が支配して居た空間はその一言によって破壊される。

 クラスの中で一番頭が良く、周りからも慕われている委員長。

 そいつが言葉を放ったからだ。


 その瞬間、今まで黙って居た奴らまで口々に私に対して暴言を吐く。

 中にはボールペンやカッターナイフ、椅子などを持つ奴まで居た。


自分は悪くない、お前が悪いんだ。


そんな事を口走りながら、私に対して行った行為に対してなんの罪悪感も感じずに。

 一種のクラス崩壊状態と化している。


 そして私は悟った。


 ああ、ここが奴が、この世のものでない奴が、死神が言っていた時なんだと。

結局自分の死は無駄になるんだなと。


 私はいつの間にか背後に回っていたクラスメイトの手によって命を、人として生きる事を奪われた。










 人間とはなんと儚く脆いものだな


 倒れた少女に対してクラス総出で暴力を加え続けている状況を冷たい目で見る。

 死神などと言われ、天界では色々と怖がられていたが、人間たちは怖いというものを知らないのか無垢な存在だった。


 そんな時、思いついたのだ。


 自分が死ぬ時期を知れたらどのように行動するのだろと。


 地上に来ていろんな人間を観察するたびに面白いようにいろんな奴がいた。

 他人の喜びを自分のことのように感じる奴もいれば、自分より下のやつを罵り好き勝手に行動するやつがいる。


 神様と呼ばれる奴らもそんな感じで、俺も自由気ままに動くやつとして生きている。


 自分が死ぬ時間を知ったあの少女は、結局クラスのみんなに言いたい事を言って返り討ちにあい死んだ。


 ちょうど期限の2日前に。


 もし、今日何もせず家に帰ってしまったら、その時は帰り道にトラックに轢かれて死ぬことになってなっていた。

 あんなどでかい鉄の塊を動かすことなど造作もないことなので、一番最初にこの方法を開発してくれた人には是非お礼をしたいものだ。

 まあ、今回は使わなかったが。



 人間とは本当に、どうしようもないな。

多分、殺したやつや虐めてたやつらは天罰が下るだろう。

 ま、決めるのは俺じゃないけど。


 俺は警察が来て、亡き者となった少女に暴行を続けているクラスの人間をを一方的に押さえつけているのを尻目に、自分の幼女(死神の鎌)の手を引き連れて、そこにはもともと何も無かったかのように、姿を消えた。





 ーーーイジメなんていうのは形のなさないもの、集団行動において必ず何処かで起きるもの。

大勢の人間が一人を虐めること、一対一で虐めること。


 それを見つけて、注意することができるのも、その他大勢の人なのだ...

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死ぬ事が分かることで リナリア @rinaria_8341

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