第31話「サプライズ・アタックpart1」
目を覚ますと、トリノ號の中央船室にあるソファで寝かされていることに気づいた。
天井から吊り下げられたチェーンのアクセサリーが、チャラチャラと音を立てている。それに埋め込まれた赤い輝石が、揺れる度に光を反射していた。
額に手を当てると、じっとりと汗ばんでいることに気づいた。たくさんの自分が死んでいる光景とシキ、そして例の黒い
「あの夢は……」
夢に見た光景を整理しようとした瞬間、船が大きく揺れた。
体がふわりと持ち上がり、床に落下する。痛みにあえいでいると、コックピットからクラークが飛んできてこちらの顔を覗いた。
「リュウト、大丈夫か?」
「あぁ、でも――」
そう立ち上がろうとすると、クラークは有無を言わさずに、リュウトの体に巻き付いて
『急げリュウト。この船は襲撃されている』
「パンドラは?」
『個室に避難させてある。だが戦況は……芳しくない』
「どうすればいい?」
『この船の機銃を使って追い払う』
「どこにあるんだ?」
『こっちだ』
立ち上がって、柱に取り付けられたはしごを登る。銃座に座ってディスプレイを点灯させると、トリノ號は複数の戦闘機に追われているのが分かった。ヤザックでトリノ號が戦っていたのと同じ機種だ。
一本だけ突き出た操縦桿を握ると、すぐさま機銃を後ろに向けて、戦闘機に向かって撃ちまくった。銃口からパルス弾が発射されるたびに座席ごと震える。
初めて機銃を使ったが、使い方は直感的に分かった。
「シエラさん!」
『リュウト君か! 目が覚めて何より。でも今は――』
「分かってます! 俺も加勢します!」
『助かる! イオ、状況は!』
『後方に敵機多数。上空には敵艦が三隻。シールドは残り二十五――』
船が揺れて、
『――二十パーセントです』
トーンが下がったイオの声に、リュウトは全身が粟立つのを感じた。このままでは落とされる。
トリノ號は複雑な軌道を描きながら必死に戦闘機の攻撃をかわしていたが、その被弾個所は増えるばかりだ。それにずっと飛び続けているわけにもいかない、いつかは燃料がなくなってしまう。
だがどのみち、燃料が切れるよりも先にトリノ號が撃墜されるのがオチだ。
しかし今のリュウトにはこの状況を打開する秘策など思いつくはずもなく、ただ歯を食いしばって機銃で攻撃するほかなかった。
船は急降下し、森林地帯すれすれに飛んだ。それに続こうとした戦闘機の一機が、突き出た巨木にぶつかって爆散する。
他の敵機の執拗な攻撃がトリノ號のシールドを削り、船体が軋みを上げて悲鳴の歌を奏でていた。
「リュウト!」
唐突に聞こえた呼び声に、思わず手が止まる。それはパンドラの声だった。すぐ下から聞こえてくる。まさか部屋から抜け出してきたのだろうか。
「パンドラ、ダメだ!」
敵機に向けられていた集中が途切れる。その一瞬が、命取りだった。
『リュウト危ない!』
クラークがフードを展開する。そして、銃座が爆発した。
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