第30話「ナイトメアpart2」
眼前に広がる不気味な光景に、思わず言葉を失った。自分が死んでいる? いや、転生前にも一回死んでいるのだから、不自然ではないかもしれない。
それでも、自分の死体を見るのは気分が悪かった。
「私は、止めようとしたの……」
最初の会った時の、あの不気味な声ではなく、凛とした自分の声で、シキは言った。
「でも、抗えなかった」
周囲をぐるりと見回すと、放射状に延びた道には様々な『龍斗』が、様々な死に方をしていた。
降ってきた鉄骨に貫かれた龍斗、ナイフで滅多刺しにされた龍斗、塀に思いっきり叩きつけられた龍斗……
「これは、どうなってる……?」
すぐ傍で死んでいる自分でない自分たちに、リュウトは気が狂いそうになった。どうしてこれほどの自分が死んでいるのだろうか。なぜ彼らは、死ななければならなかったのか。
死んだ龍斗は沢山いる。だが、トラックに潰されたリュウトはたった一人。なら彼らは何だ?
転生に失敗した? それともこれは、ただの悪夢か?
『違う。君は本当の意味で抗っていない』
背後から複数の囁き声が聞こえる。この声は知っている。転生する前と、そしてさっきだ。
さっき?
その時、今までの記憶が全て戻ってきた。そうだ。この声はターコイズ・ディストリクトで聞いた声だ。
振り向くと、そこにはあの黒い
『そう思い込みたいだけだ。そうやって自分を正当化しようとしてるだけだ。本当は何も間違っていないのに』
「私は!」
シキは頭を抱えた。
『結末は変えられない。それはお前が一番よく知っているだろう』
「それでも私は!」
シキが手を突き出す。そこから発せられた衝撃波はリュウトの身体を貫き――
◇◆◇
目を覚ますと、トリノ號の中央船室にあるソファで寝かされていることに気づいた。
天井から吊り下げられたチェーンのアクセサリーが、チャラチャラと音を立てている。それに埋め込まれた赤い輝石が、揺れる度に光を反射していた。
額に手を当てると、じっとりと汗ばんでいることに気づいた。たくさんの自分が死んでいる光景とシキ、そして例の黒い
「あの夢は……」
夢に見た光景を整理しようとした瞬間、船が大きく揺れた。
体がふわりと持ち上がり、床に落下する。痛みにあえいでいると、コックピットからクラークが飛んできてこちらの顔を覗いた。
「リュウト、大丈夫か?」
「あぁ、でも――」
そう立ち上がろうとすると、クラークは有無を言わさずに、リュウトの体に巻き付いて
『急げリュウト。この船は襲撃されている』
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