第15話「サンクチュアリpart1」


「正気ですか?」

「私はいつだって正気さ」


 艦内に設けられたゲストルーム、そのワードローブで、リュウトはイオが用意してくれた服に着替えていた。

 渡されたその『プリントした』服は、妙に体に吸い付くような感触がした。白いシャツの上にジャケットを羽織る。


「服はあんまり変わんないんだな」


 もっと奇抜な服を渡されるのだと不安に思っていたリュウトは、ほっと胸を撫で下ろした。

 まだこの世界に来て数時間といったところなのだろうが、それでもこうやって生きていることに、リュウトは不思議な感じがした。


「大丈夫。俺ならうまくやれるさ」


 鏡に背を向け、そう自分に言い聞かせるように言うと、ワードローブのカーテンを開けた。二人で話し合っていたらしいシエラとイオが、こちらに向く。

 ベッドの上でつまらなそうに足をプラプラさせていたパンドラは、こちらに気づくや否や駆け寄って腰に抱き着いてきた。その直接的なスキンシップに慣れきっていないリュウトは、慎重にその頭を撫でる。


「うん、なかなか良いじゃん。イオのセンスも悪くない」

「あなたの好みに合わせたんですよ、シエラ様」

「なんで私の……」

「ケチ付けられるリュウト様が可哀想だと思いまして」


 全く、とシエラは鼻柱をつまんだ。


「まぁ、これもカッコイイと思いますよ」


 さすがに不憫だと思ったリュウトがそう言うと、シエラは水を得た魚のように目を輝かせて、「だろ? だろだろ!」


「良かったですね。シエラ様の理解者がいて」


 その発言が気に食わなかったのか、シエラはイオを睨みつけた。それからイオは少し焦るようなそぶりを見せると、話題を変えた。


「そういえばリュウト様は転生する前はどんな名前の星に住んでいたのですか? そもそも名前はついてました? あの服装から見て、ある程度の文明レベルはあるかと思いますが」

「ああ、一応『地球』っていう名前はあったけど……」


 その名前を聞いた二人は、目を丸くして顔を見合わせた。二人の様子に、リュウトは嫌な予感がした。緊張した空気を感じ取ったのか、パンドラは空中に浮いていたクラークをキャッチして、強く抱いた。


「リュウト……?」

「あー、なんか俺、まずいこと言いました?」

「あ、いや、別にそういうアレじゃないんだけど」


 シエラがイオを見る。イオは頷くと、壁面のコンソールを操作し始めた。


「リュウト様、あなたはもしかしたら別世界ではなく、過去から来たのかもしれません」

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