第13話「パンドラボックスpart1」
「で、今度は何をやらかしたんだ」
白い清潔感のある床を歩きながら――白く磨かれた床はコリントの潔癖症の現れといっても過言ではない――コリントは言った。
「そうですね……いくつかの革命に参加したり、妹の行方を捜したりしてました」
コリントの嘆息に、シエラはげんなりとした。またお説教だ。
「全く、お前のご両親がいたらなんと言うか」
「……会えたら聞いてみますよ」
そう肩をすくめてみせると、コリントがこちらを振り返って睨みつけた。それから怒りを鎮めるように再び息を吐いて、
「だがなぜ今更なのだ? 彼女を放っておいたのは君だろう?」
「それは……」
反論の余地がないことなど、シエラには分かり切ったことだった。
両親の死から逃げるように、任務に明け暮れた日々を思い出す。それがシキを孤独にさせたことは、理解しているつもりだ。
だが本当の意味で、シエラは彼女の気持ちなど理解できるはずもなかった。
そんな様子を見かねたコリントは目頭を押さえると、シエラに向き直った。
「彼らが何者にしろ、〈サンクチュアリ〉に届けたのなら、ここに戻ってこい」
「え?」
思わぬ言葉に驚いたシエラが、目をぱちくりとさせる。
「お前は、お前が思っている以上に強い。それに何か、嫌な予感がするのだ」
「嫌な予感って……」
「私にも分からん。だが最近、アムリタ様の様子がおかしい。何かを、怖れていらっしゃるかのようだ」
シエラは腕を組むと、前髪をかきあげるように息を吐いた。
「艦長クラスともなれば、自由に謁見出来ますものね」
「嫌味を言うものでは」
「分かってますよ」
なら、と肩に乗せられた手に、シエラは自らの手を重ねた。心のどこかでは、ここが帰るべき場所だと言ってる。しかし、今はそれよりもやるべきことがあった。
転生したという少年には、どこか興味を惹かれる。それにこれは直感だが、妹との繋がりもあるように思えた。
「コリント艦長……とても申し訳ないんですけど、私はしばらくあの少年と一緒に行動してみるつもりです。何か、何か妹の件と繋がってそうなんです」
妹の情報を追って潜入した船にあったレリックの発掘計画。そしてそこで出会った『転生した』少年リュウトとレリック、さらには記憶喪失の少女。シキはきっと、何か大きな事に巻き込まれてしまったのかもしれない。
シエラはすいません、とだけ言って踵を返し、元来た道を速足で戻り始めた。
「あの少年は、一体何者なんだ!」
「転生者なんですって!」
きょとんとした表情のまま固まったコリントを置いて、シエラはリュウトが案内されている部屋へと向かった。
「私を口説こうたって、そう簡単にいくもんですか」
それからさっきのコリントの表情を思い出して、小さく笑った。
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