導きたい
森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸
夢を見る
ある日の黄昏時のちょっと前の時、紺拮便色をした布を何枚も重ねた様な服を着ており、両二の腕に円盾を装備していて腰には鞘に収まった剣が見え、木目調で穴が無く、頭全体が覆われた
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町役場で依頼をし 宿へ戻る道で、街並みを眺めているとふと、武器屋の雑に並べられているロングソードの1つに目が留まった。
そのロングソードは、なぜ雑に並べられているのか不思議なほど刀身に刃零れが無く、美しい鋼色をしており、綺麗に研がれていた。鍔には竜の紋様が施されている。握りと柄頭は、防犯の為なのか鎖が巻かれていて判らないが……。
早速、店番に許可を求め見せて貰った。
握りは綺麗に鞣された獣の毛皮が使われているようで、新品のような光沢があった。柄頭は、十本程の触手の様な形状をしており、まるで何かが嵌まりそうな感じだった。
何故こんな風に置かれているのか不思議に思い つい、剣を持ち上げてしまった。
その瞬間、身体全体に悪寒が迸った。吃驚したが、何故剣を持った瞬間悪寒が走ったのか好奇心が疼き、購入する事にした。
購入する事を店番に告げると、
「武器の買い取りもしているから縁があったら来てくれ」
と、値段掲示と共に言われた。
宿へ戻り、その剣を精査していると何処からか声が聞こえて来た……。
── お前は違う……放せ…… ──
と、男とも女ともつかない嗄れた声が……。
顔を上げ、耳を澄ますも聴こえて来るのは寝息と、下からの話し声だけ……。
今はもう、夕飯も食べ終え、殆どの者が明日へ備えて寝静まるような時間……何より、自分が借りている部屋の両側は誰も居ないはず。意識しないで聞こえる程大きな声とは思えなかった。
「もしや」と思い手に収まっている綺麗なロングソードに目線を移した。
するとまた、
── お前は違う……放せ ──
と聞こえて来た。今度は不思議と
「この綺麗なロングソードが語り掛けて来ているのだな」と認識できた。
益々好奇心が大きく成った私はどうにか語り掛ける事は出来ないかと、綺麗なロングソードへ念を送ったりしたが、反応は無く、また、
── お前は違う……放せ ──
と語り掛けて来た。
つい、
「じゃあ、誰だったら良いんだ?
なんなら、私が見つけるのを手伝おうか?」
と、自嘲気味に口にしたところ、
── だが……店に居た方が効率が良いだろう? だから手放せ ──
と、妙にフランクに返答が来た。
「声に出さなきゃ駄目なのか」と思いつつ、嬉しさと面白さと好奇心で、綺麗なロングソードに質問を色々した。
語尾に「手放せ」と付くが、律儀な事に質問には全て答えてくれた。
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一先ず、分かった事柄を整理しよう。
①銘が無い事。
銘を付けようかと思ったが、意思を伝える剣なんて
②気に入った者にしか使われたくない事。
気に入らかったら、最初持った時の悪寒――所持者を不快にさせたりなどして追い払うという事。
それで駄目でも話し掛ければ売ってくれていたらしい。
③造られてから約50年間一度も使われた事が無い事。
私が産まれる前から存在するのに一度もパートナーが居た事が無いと言う事か。
装飾用の剣には見えないのだが……。
拘りが強い性格のようだ。
④刃零れしても再生し、斬りつけた相手の動きを一時的に鈍らせれる
⑤柄頭は持ち主に合わせた珠玉が生成され、遠く離れても飛んで行く事ができ、持ち主によって特殊な力が追加されるらしい。
刃零れしても再生はありふれているが、他が便利なうえに面白そうだ。
「さて、この剣どうしたものか」と思っている時 ふと、御伽噺の力を試す賢者を思い出した。
この剣は破格の力を持っている、御伽噺で登場する英雄が試練を突破して手に入れる聖剣の様に凄い力を秘めている。
持ち主によって力が変わる所なんて正にだ。
私は茶番をしたく成った。御伽噺に出て来る賢者を演じてみたくなった。
飽きれば望み通り、何処かの街で手放せば良い。
早速、剣に説得を試みる。
「なぁ、一つの場所に留まって運命の相手を待つよりは、自分から運命の相手を探しに行った方が良くないか?」
── ううむ……だがなぁ ──
「私は旅の様なものをしているし、
お前に【挑戦者募集!!】とか何とか書いた布でも巻いて持ち歩けば良いだけだしな」
── ううむ……だがなぁ、そんな物を背負って歩き回るのは恥ずかしいだろう? ──
「私は全然大丈夫だよ。
……否定しないって事は承諾したって事で良いよね? ありがとう」
と言った。少々強引かな?とは思ったが……。
その後はずっと「ううむ……」と唸っているだけで否定しなかった。
いやぁ……楽しみだなぁ……。
明日の予定を考えながら、日課を終え、明日の準備をし、自分には説得の才能は無いのでは?と訝しみながら寝た。
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朝飯を
其処でロングソードが目立つようにスリングを買い、ロングソードを背負った。そして店番に、「背負っているロングソードを欲しがっている奴が来たら教えてやってくれ」と自分の特徴と行き先が縫われた布を渡した。
其の足で昨日町役場で依頼した
そして職員に依頼の取り下げを申し入れ、武器屋と同じように自分の特徴と行き先が縫われた布を渡した。
この町には
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木目調の仮面は町を出て、近くに在る山を迂回する様に有る道路を外れ、山を挟んで丁度反対側にある街を目指して歩きだした。
するとロングソードが、
── おい、そっちは人気がないぞ ──
と木目調の仮面へ語り掛け。
木目調の仮面は、
「此方の方が街に着くのが速いからね」
と答えたりしていた。
川から少し外れて山へと入った木目調の仮面は、均された道と同じような足取りでスイスイと山を登って行った。
日が頂点に昇っている時には、一定の範囲に留まり、音の出る罠や寝床を乾パンを食わえながら作っていた。
一段落したのか「飯」と呟き、木をひょいひょいっと登り、木から木へと跳び移り川が流れている方向へ跳んでいった。
……運が良い事に、丁度川で
木目調の仮面は
乗っている木が揺れ、目線を下に落としたところ、
咄嗟に大灰熊の腕に矢を射れたため難を逃れたが、「
だが、何時まで経っても大灰熊は諦めずに木を伝って逃げる木目調の仮面を追って来ていた。流石にずっと追い駆けっコしている訳にもいかず、振り返り大灰熊の顔に狙いを定め、矢を放った。
放たれた矢は果たして、左目に突き立った。
が、突進の勢いは衰えず、痛みを和らげる為なのか咆哮を上げるだけだった。
木目調の仮面は仕留めれていない事に残念そうではあるが、予測できていたようで咆哮を上げる大きく開いた大灰熊の喉奥へと矢が吸い込まれて行った。
流石にこれには堪えた様で、動きが鈍り、そこに間髪入れずに矢が放たれ右目に深く突き刺さった。
コレには堪らず、脚を縺れさせ、地面を擦りながら大灰熊は止まった。
木から降りた木目調の仮面は、弓と矢を
大灰熊の躯は「ビクッ」と跳ね、頭が存在したであろう空間には血がトクトクと流れ、川が出来ていた。
その後、慣れた手つきで矢を回収し、股間部から首に向けて、ナイフを入れ皮を剥ぎ。鉈を使って内臓を取り出し、肉を少し取り、残りは放置して仮拠点へと上機嫌で戻った。
戻った時にはもう夕暮れ時だった為、急いで夕飯の準備に取り掛かった、「今夜は熊のハツだ」と上機嫌に熊の心臓を丸焼きにし、林檎と共に食べた。
少し硬かったが、ジューシーな肉と酸っぱい林檎に大変満足した。
――食べ終えた頃には陽が完全に沈んでいた。
焚き火にそこら辺に転がっていた枝を投げ入れ、「
明くる日、山が登りから下りへと移り、昨日の獲物が残っているからか、陽が頂点から少し降りた時に仮拠点を造り、夕飯である熊鍋を食べ床へ就き、その次の日には平野へと抜けていた。
汗を散す程急いで街へと向かったが、運悪く閉門に間に合わず、同じ様な者たちと飯を食い、寝た。まだ少し冷えるが、確かに暖かく成っているのを感じる夜だった。
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街へ入る為の列に並び、「ロングソードにどんな文句を縫った布を巻こうか」と考えていたが、
ふと、「其れは主人公の導き手たる姿なのか?」と思い、どうしようかとウンウン悩んでいたが……
そろそろ自分の番だと気付き、「とりあえず、街に入って落ち着いてから考えよう」
と問題を先送りにした。
……自分の番が来た。
いつも通り名前と出身地を言い、色とりどりの花が彫られた
少し待っている間、余程暇なのか、
若い門兵が
「オメェ、『探究者』の人なんだな。やっぱり、あれか?最近この街の北に新しく現れた
と話し掛けて来た。
「世間話しても良いのか?」と面倒に思い他2人の門兵を見たが……駄目だった。此処の門兵は偶然にも全員若い様子で、一人は興味が有るらしくチラチラ視線を寄越し。もう一人は興味無さげに列を見張っていた……。
面倒だが別に困る様な質問でも無く、別に良いかと思い。
「いや、其れは知らなかったな」
と返答してしまった。
その後は、バッチが戻って来るまで質問責めさせられてしまった……。
街へ入り、半ば惰性で宿を取り、街役場で依頼をし、宿へ戻りながら携帯食料を食み、真っ昼間から宿で酒を肴の猪肉と山菜と共に2瓶飲んだ、何か訊かれた気がしたが、気にせず寝た。
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空が白み始めた頃。
体を拭かずに寝た事に気付き少々不機嫌な
――新しく現れた
── おい……終わったか?なら主探しをしよう ──
その嗄れた声で我に返り、
「そうだなぁ……やっぱり、相手が来るのを待つだけじゃあ今迄と一緒だからなぁ……。
何か こういう奴なら良い! っていうのは無いの?」
と体を拭きながら答えると、
── 特に無いな、触れて貰わないと解らないからな ──
予想できていた返答だった為半ば聞き流しつつ、何か良い方法は無いかと考えていた。
英雄……英雄かぁ、市民が騎士に成って~とか、貴族が王の為に~とか、神から~とかしか知らないもんなぁ……うーん。
「まぁ、とりあえず、街に出るか」
と清められた双子である木目調の
木目調の仮面は黄昏時まで、飯や
――こう、ピンと来るのが居ないなぁ。
ロングソードも特に反応しないし……。
異界への準備も整ったし、もう宿に帰ろうかな。
そう思っていると、家と家の細い隙間から此方側を見ている子供が目についた。
なんとなしにその子にロングソードを持たせてみたくなり、そちらの方へ歩いて行き、
「ねぇ、この剣、持ってみない?ほら、食べ物あげるから……」
と、もっと巧い言い方は無かったのか?と自嘲しながら、剣の柄を差し出した。
少しの間そのままの体勢で止まっていたが、子供が恐る恐る手を伸ばし、剣の柄を握った。
結果は、顔を青ざめさせて柄から手を離してしまった。
駄目だったか……と自嘲気味に思いながら、子供に栄養満点クリーミーで美味しい携帯食料である虫団子を差し出した。
子供は少し躊躇っていたが、意を決した様に団子をひったくり、口に押し込みながら何処かへ走っていった。
収穫は無かったものの、
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今回の
あれから2日経った今、背負い袋に剣を巻き付けた木目調の仮面の目の前には、
既に『異界』の情報を満足とは言えないが、十分に仕入れている木目調の仮面は躊躇わずに、ぽっかりと開いた闇の中へと飛び降りた。
長い闇の中を落ちていき、気付いたら足に地面が触れている。という多少異なれど異界へ侵入した時独特の感覚を味わい。
持ち込んだ
木目調の仮面は足に地面が触れる感覚を覚えた瞬間に馴れた手つきで
……運が良い事に、周りに怪物は居ないようだった。
「情報だと、この洞窟から森林へ出るんだったな……」と確める様に思考しながら、前と後ろ、どっちの方がカンテラの光が変色するか翳してみたが……
運が悪い事に、変色しなかった……。
「これじゃあ、当てずっぽうで出口を探さなくては行けないな……」
と面倒に思いながらも、前進した。
情報通り、
鬱蒼とした少し暗い森を木から木へと跳び移りながら進み、出口を探した。
途中、足下で
……木目調の仮面は川を見付けた為、一応上流に進んでいる途中、情報には無かった
念の為、ヌビィハムの弱点である弓と矢を出し、180°回転して下流へと行こうとした。
が、何故か気付かれ、その重そうな体躯からは想像し難い速さで木々を跳び移って此方に迫って来た。
「何故だ!?雄鶏頭は音には鈍い筈なのに……」と頭の中で悪態を吐きながらふと、前にもこんな事が有ったな……と思いロングソードに、
「まさか、お前、厄介事を引き寄せて、所有者を強くする。みたいな力、持ってたりしないだろうな?」
と冗談半分で語り掛けた。
すると、ロングソードはその嗄れた声を少し不機嫌そうに震わせながら、
── そんな力が有ったら堪ったもんじゃないな ──
そんなクダラナイ問答をしている間にもぐんぐん此方に近付いて来るヌビィハム。
そして遂に、ティルラプムが駆けて来ていた方の広場の近くに着き、ヌビィハムの弱点である【弓から放たれた矢】を行使したが、矢はヌビィハムの近く迄行った所で軌道を変え、あらぬ方向へ飛んで行った。
どうやら、【盾の力】持ちのようだ。
「なんだそれ!反則だろ!」
と世の無情さを嘆きながら広場へ飛び降り、弓矢を消し、布を取り出しながら剣が巻かれた背負い袋を放り投げ、ヌビィハムの木片や果実の投擲を避けて広場の真ん中に陣取った。
ヌビィハムも自分の優位は崩したく無いらしく、「ガー」と啼きながら雷撃を放ってきた。
木目調の仮面は既に
そのやり取りが何度も続き、「埒が明かない」とばかりに【雷の力】を頭上へ通り抜けさせながら、ヌビィハムが地面へと飛び降りて来た。
それを確認した木目調の仮面は布を消し、愛剣を引き抜き、律儀に待ってくれないヌビィハムの左前足からの叩き付けを後ろへ回避した。
息を継く間も無くヌビィハムの力強い叩き付け、素早く鋭い嘴攻撃、砂を撒き散らす逞しく
後ろへ避けたり横へ走ったり、
ヌビィハムの攻撃の殆どが単調だった為、今までの経験値で捌けている様だ。
ヌビィハムは少しずつ傷が増えて行く自分に苛立ったのか、「ホーキョホーキョ、ジッジッジッジッ」と啼きながら体に電気を迸りさせ、その雄鶏頭で木目調の仮面を睨み付け、バチバチと音を発しながら放電した。
ヌビィハムと一定の距離を保ち戦闘していた木目調の仮面は、放電範囲内から抜けれるような位置には居らず、放電を喰らってしまう……。
白い光の中、自分の勝ちを確信するヌビィハムだったが、背中に異物を感じた。
だが、油断していた為反応に遅れ、
「その技は偶に私もやるんだ」と言うのに被さるように聞こえた「ピッ」という乾いた音と、顎を強く打った感触を最後にヌビィハムは意識を喪った。
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「危なかったな……今まで近寄って殺した事なんて無かったからな、あんな技使うなんて知らなかった……」
誰に言うでも無く、そう言い訳を吐きながら雄鶏頭に刺さった矢を引き抜こうとしている。焦げ茶色の革鎧を纏った木目調の仮面。
「あれ造るの、手間掛かるんだけどなぁ……」
と、引き抜けた矢の鏃が取れていたせいなのか、お腹が空いたからか、溜息を吐きながら剣が巻かれた背負い袋へ向かい、中に入っていた干し肉と水を腹に納め。
虚空から紺拮便色の体全体を覆えそうな布を取り出し革鎧の上にガサゴソしながら装備した。
装備の整備や腹ごしらえを済ました木目調の仮面は、
「元は取らないとな」と呟きながら、剣が巻かれた背負い袋から、
徐に『探究者』で一定以上の地位が無いと貰えない透明な水晶球を虚空から取り出し、水晶球に黒い光を放ちながら「希望」や「突き進む」を意味する白い花が浮かび上がったのを確認して、その場を後にした。
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川の上流は、他とは雰囲気が違う場所だった。
何か幻想的で神秘的な雰囲気を感じさせる空間で、その真ん中には、御伽噺の中に出て来るような石の台座が置かれて……埋まっていた。
「なんだあの石、お前をあそこに突き刺して、運命の相手が来るのを待つ方がロマンチックなんじゃないか?
ほら、時々私が
雰囲気のせいか、妙にセンチメンタルな心持ちに成った私は、ロングソードにそう語り掛けた。
ロングソードは特に感情が揺れた様な雰囲気をさせず、嗄れた声で、
── それだと、お前が死ぬ迄抜ける奴が居ないじゃないか。
クダラナイ事言ってないで、街に戻るか先に進め ──
と、急かした。
苦笑しながらもその言葉を受け入れ、周りの探索をした。
殆ど同じ高さの木々。此方に突き出た岩が有る黒と白の斑模様の岩壁の丘。細まっていた川はまた広くなり、その空間の奥には静謐とした湖が佇んでいた。
カンテラを見ると、暗い紺色の光が湖の中へと吸い込まれる様に淡く放たれていた……。
「次は『水』か……帰るか……!」
木目調の仮面は踵を返し、地上への道を探しに暗い森の中へと消えて行った……。
途中で、ティルラプムに追い掛けられていた子達に再会し剣を触らせたが、やはり駄目だった。
導きたい 森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸 @morityamin
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