第22話 地上世界から地下世界へ

3.5次元地球


今朝のニュースをお伝えします


Darkウイルスも終息し


爆発事故による復帰作業も順調に進み


また、以前の日本を取り戻したかのように


思われます


ただ、一度は滅亡の危機にまで陥った


日本、いえ地球


皆さまにおかれましては


また、何か起こるのではないかと


常に警戒をされていることでしょう


そんな中、同時期に起きました


行方不明者の捜索ですが


依然として状況は変わらず


行方は分からないままとなっています


現時点での行方不明者は、80名


警察に届け出が出ているもののみとなり


実際には、100名以上とも言われています


次のニュースにうつりますが


画面下に行方不明者の情報を流しますので


ご存知の方はご連絡いたたければと思います





テロップが流れる

 

トクトクトク

コップに水を入れる


ゴク


ゴク


成田suguru 千葉県在住、当時24才


えっ、成田.....


酒井issei 東京都在住、当時27才


酒井.....


この世の中に同性同名の人間は


一体、どれほど存在するのだろうか


この二人の名前が同時にテロップに流れ


同時期に日本から姿を消している


そして、俺がつい先日までいたあの世界


Dark Worldに同性同名の二人が存在している


よって、ここに名前が挙がっている二人は


あの二人で間違いないだろう


ということは


ここに流れている全ての人間は


何らかの理由で


あの世界に以前いたボスと接触を図り


地球を捨て


Dark Worldに寝返ったのだろう


そうだ、メシ、メシ


監視されていない貴重な時間


シャカシャカ

味噌汁を混ぜる


物を食べる時、人は口を動かす


すると、こめかみあたりが動く


このこめかみにかかる力の強さで


食事かどうかを判断し


モニターはシャットアウトされるらしい


仮に、ガムを噛んでみたが


どうやら、食事をしている時とは


かかる力が異なるらしく


モニターはシャットアウトされなかった


彼らを欺くことはそう容易なことではない


別に、欺きたい訳ではない


ただ、あの世界の人間として生きていく


Hybridとして生きていく決心が


まだできていないだけだ


俺のこの体に流れる遠藤家の血が


その決意を揺らがしているのか





続いて、次のニュースです


今年も年に二回


東京と京都の芸術ホールで


四国地方から選抜された女性たちによる


バレエの発表会が開催されます


四国は、謎に包まれた場所とも言われ


彼女たちが本島に姿を表すのは


年に二回のみとなります


そんな神秘に包まれた彼女たちの様子を


一目見ようと


今年もチケットの争奪戦が予測されます


去年は、オークションで


一枚、100万円という高値がついたことでも


大変話題になりましたが


今年もチケットを巡り


料金は高騰することでしょう


四国.... か


カチ

時計の針の音


カチ


チラッ6時45分


まずい、もうこんな時間か


約束のあの場所に行かなければ


チャリン

鍵を取る


ガチャ

扉を開ける


バタンッ





俺は、この世界の人間ではない


かと言って、まだ正式には


Dark Worldの人間でもない


その中間の立場にいる


人によってはこれを中途半端と言うだろう


過去の俺を振り返っても


いつも他人の意見に流され


もしも俺の人生に題名をつけるとすれば


中途半端という言葉が、しっくりくるだろう


だが、俺はこの4文字が一番嫌いな言葉だ


「中途半端」と人に言われる度に


馬鹿にされてる気がしてならない


そして、俺が住むこのアパート


異世界次元ビルから歩いて


12分の場所にある


見た目は、そう新しくないが


東京都のど真ん中にあり


1K、バス・トイレ別


家賃は、8万5千円


この場所にしては安い部類に入るだろう


俺は、この部屋で寝食をしている


仕事は


彼らから差し出されたリストの中から


選択をした


さすがは、闇の世界の人間


給料の良い職場から順に並んでいたが


上位は、なかなか厳しいものがあり


選択をしなかった


いや、できなかった


それを躊躇することなくできるなら


こんな中立の立場を選択することなく


向こう側の人間に今頃なっていたはずだ


そんな俺が選んだ仕事


俗にいうなんでも屋


その名の通り何でもする


依頼人のどんな依頼も引き受けるこの仕事


殺人以外は、何でもする


殺人だけは、できない....だろう?


そして、俺は今


異世界次元ビルに向かっている


この場所に戻る条件として


食事・風呂・睡眠時間以外は全て彼らに


監視下に置かれること


それから、Dark Worldのことを一切


外部には漏らさないこと


両親、親戚、友人とは一切の


関わりを持たないこと


最後に、週に一度、水曜日の朝7時


異世界次元ビルに戻り


地球の情報を伝達することを条件に


俺は開放された





カツカツカツ


異世界次元ビル1階、エレベーター前


一週間しか経っていないのに


随分と久しぶりな気がする


約束の7時まであと





ten





nine





eight





seven





six





five





four





three





two





one





チーン





ガシャ

扉が開く





「なり.,...たさん」


成田「何だよ、ビックリした顔して」


「いえ」




Are you sure you want to go to Dark World underground world?

行き先は、Dark World地下世界で

宜しいでしょうか


ピピピピピッ

yes


Then it will descend

それでは、下降致します





ウィーン





成田「お前を見ると


改めて俺は闇世界の人間なんだと


気づかされるな」


「そうですか?俺はあまり違いは」


本心は違う


成田さんを改めて見て驚いた


彼は、人間ではないんだなと


地球人ばかりを見ていたからかもしれないが


ここにいた時よりも、よりそう思う


「さぁ、そろそろ着くぞ」


「はい」




Soon to arrive on the 10th floor of Dark World

Dark World地下10階にまもなく到着します




久しぶりの地下世界


息がしづらい


ゴホッ


ゴホッ


成田「やはり、お前にはこの場所は


負担がかかるようだな」


「大丈夫です」


心なしか頭痛もする


しばらくの我慢だ





チーン





成田「他の奴らももうHybridとして


生活している」


「そうでしたね」


ということは、加山もか


彼に会うのが少し怖い


ガチャ

扉を開ける


成田「葛城(遠藤)を連れてきた」


酒井「久しぶりだな」


葛城(遠藤)「はい」


加山「逃げないで戻って来たか」


ドキン


加山


葛城「逃げるわけないだろうが


俺は、仲介人だ」


フン

加山が鼻で笑う


葛城

見た目も変化しているが


中身もこの世界の因子が入ったことで


以前よりトゲトゲしい感じになった気が


成田「まぁ、座れ」


葛城「はい」


酒井「で、久しぶりの地球はどうだ」


葛城「いや、普通ですよ」


加山「良かったじゃないか、地球に戻れて」


葛城「どういう意味だ」


加山「深い意味はない」


このやたらと突っかかってくる感じ


やはり以前の加山ではなくなってる


成田「仕事も始めたみたいだな」


葛城「えぇ、まぁ」


酒井「見ている限りは大丈夫そうだが


俺らも全てを見張るわけにもいかない


ここのことは誰にも他言はしていないよな」


葛城「もちろんです」


酒井「親や知り合いとも連絡は」


葛城「一切、取ってないです」


酒井「ならいい」


葛城「命をかけているので」


成田「で、この一週間で何か


為になりそうな情報は掴んだか」


葛城「まだ一週間ですし


仕事も始めたばかりなので」


成田「何か一つぐらいあるだろう」


葛城「そういえば


成田さんたち地球で行方不明者扱いに


なってましたよ」


成田「まぁ、そうだろうな」


葛城「かなりの人数なんで


全国の警察が捜索してます」


「いくら探したって見つかるわけもない


俺らはもう地球にはいないんだ


それに、亡くなった奴もいるしな」


葛城「そうですよね


昨日のニュースでも特集されてたんで


成田さんたちは、有名人ですよ」


酒井「フン、有名人か」


葛城「顔写真も出回ってるので」


成田「家族が提出したのか、まぁいい


どのみち俺はもう地球とは縁を切ったんだ」


葛城「その点、顔を知られてない私は


お役に立てると思いますよ」


成田「ん?」


葛城「地球に偵察に行って


成田さんたちの顔を知ってる人に会ったら


大騒ぎになる」


成田「そういう意味か、それはそうだな」


加山「うまいこと逃げたな」


加山は、俺に対して怒っているのか


俺がHybridになることを拒否したから


拒否をした訳ではない


猶予期間が欲しかっただけだ


だが、加山には裏切りとうつったのだろう


もう以前のような関係には戻れないんだな


仕方ない、今は生きる世界も違うんだ


それに彼の心臓は既に半分


身体の隅々にまでDark因子が


入り込んでいるんだ


恐らく人間だった頃の感情も


なくなってしまったんだろう


だが、この世界で生きていくには


その感情は邪魔になるだけだ


これで良かったんだ


いずれ俺もそうなるんだ、いずれ















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