第23話新たな生活

RRRRR


RRRRR


「はい、もしもし」


「山崎さんのお宅で宜しいでしょうか」


女性「はい」


職員「こちら、区役所の者です」


「えっ、どうかされましたか」


「実は、お隣の村上さん宅のお子さんが


一週間前から行方不明らしいんですよ」


「えっ、そうなんですか」


「えぇ、うちの職員の者が


先日、村上さん宅にお伺いしたところ


中からかなり酔っ払っていらっしゃる感じの


父親が出てきて


子供はいないの一点張りだったんですね」


「あれから、行ってくださったんですね」


「えぇ


ただ、父親の様子からしても


何か隠してる感じがしたので


何度もお願いして


中に上がらせてもらったんです」


「そうですか」


「家の中は散らかっていて


窓ガラスが割れたままになっていたり


しばらく生活する場として


機能していない様子でした


やはり山崎さんがおっしゃったように


家庭は崩壊していました」


「そうですか」


「ただ、父親の言うように


お子さんはいらっしゃいませんでした」


「そうですか」


「今日、お電話したのは


何か山崎さん


知っていらっしゃらないかと思いまして」


「えっ」


「いえ、随分と村上さんのお子さんのこと


気にされていましたし


こちらにまでご足労いただいて


いたものですから」


「あぁ」


「上のおねぇちゃんの学校と


下の子の保育園にも気になって


問い合わせしたんですが


先週、親戚と名乗る方から連絡が来て


二人とも体調不良でしばらく休むという


連絡があったみたいで


そのまま夏休みに入ってしまい


夏休み明けということになってると


言われたものですから」





ドキン





ドキン





「そ、そうだったんですね


ごめんなさい、私はよく分からないわ」


「そうですか


では、親戚の方が


引き取っていらっしゃるのかもしれませんね


お忙しい時間に突然、すみませんでした」


「いえ」





miko「お、お邪魔します」


mitsuru「どうぞ、散らかってるけど」


「いえ、とても綺麗です」


ススー

扉を開ける


「ここ、前姉さんが使ってた部屋なんだ


良かったらこの部屋を使ってね」


「わぁ、素敵


花魁にでもなった気分です」


「気に入ってくれて良かった


ここにあるもの何使ってくれても


構わないから」


「え、でもどれも高価そう」


「貴宝家で代々、受け継がれているものや


姉さん自身もアンティークが好きで


自分で足を運んで


購入したものもあると思うんだけど」


「そんな高価なもの使えません」


「このかんざしにしても


ネックレスにしても


このままこの部屋で眠っているのも


かわいそうだ


だったら、mikoちゃんに使ってもらえたら


姉さんも喜ぶと思う」


「あ、ありがとうございます」


「荷物の整理とかいろいろとあると思うから


俺は向こうに行ってるね


何か手伝えることがあればいつでも言って」


「はい、あっmitsuruさん」


「ん?」


「あの、ありがとうございます


家に呼んでくださって」


「いや、こちらこそありがとう


俺たちの同居が認められて良かったよ」


「ですね、私たち二人とも未成年なので


許可は降りないと思っていたので」


「俺もそう思ってたし


実際、はじめは難しそうだったんだけど


俺たちの置かれてる立場を説明したら


他から探すのは難しいと


最終的に判断したんだと思う


俺らの場合


誰とでも住めるわけじゃないからさ」


「そうですね」


「じゃあ」





部屋を見渡す


ほんとに素敵なお部屋


カーテンの色が朱色なんて珍しいけれど


この部屋の雰囲気にとてもマッチしている


ランプにしても、チェストにしても


この部屋の為に作られたかのように


全てがピタッとおさまっている


こうして私とmitsuruさんの


共同生活は始まった





ガチャ


男性「ただいま」


女性「あなた、お帰りなさい」


「子供たちは」


「今、二階にいるわ


それより、今日市役所から電話がきたの」


「市役所?」


「えぇ、隣の村上さんの子供たちのことで


何か知ってるかって」


「で、何て答えたんだ」


「何も知らないとだけ答えたわ」


「そうか」


「本当のこと言ったほうが良かったかしら」


「いや、伝えて父親に連絡がいって


自宅に戻ることにでもなったら


また、同じことを繰り返すだけだ」


「そうよね」





Rikuto「ぼく、やだ


おうちかえりたくない」


女性「Rikuちゃん、まだ起きてたの?」


Sakura(姉)「私もいやっ


おじさん、おばさん


私たちもっと良い子にするから


お父さんには知らせないで、おねがいっ」


「大丈夫よ、そんなことしないわ


安心して」


「ほんとに?」


「ほんとにほんとよ」


「ありがとう」


「Rikuちゃん、おばちゃんと寝ましょう」


Rikuto「うん!」





男性「Sakuraちゃんは


親戚とかはいるのかな?」


Sakura「親戚?昔会ったことあるけど


ここ数年、疎遠になってたから


よく分からない」


「そうか」


「親戚を探すの?」


「Sakuraちゃんたちが


おじさんの家でいいなら


探したりはしないよ」


「ほんとに?」


「うん」


「おじさんちがいい」


「分かった、じゃあこの話はおしまい」





ガチャ


男性「寝たのか」


女性「えぇ」


「お前もいるからちょうどいい


このままこの家にずっといることは


正直、難しいと思う


今は、夏休みだからいいが


Sakuraちゃんたちも


いつまでも家に引きこもりっぱなしって


わけにもいかない


かと言って、自宅は隣だ」


「そうねぇ」


「そこでだ


引っ越しをした方がいいのかもしれない」


「引っ越し」


「そう簡単じゃないことは


もちろん分かってる


この家は、持ち家だし


学校のこととか戸籍の問題とか


俺たちは、本当の家族ではない


滞りなく全てを順調に進めるには

 

どうするべきか


考えることは山積みだ」


「そうね


いつまでもこうしてはいられないわね


そろそろ現実的なことも 


考えないといけないわね」





miko「おはようございます」


mitsuru「休みの日なのに早いね」


「居候させてもらってるので


ご飯くらいは私が」


「居候じゃないよ、同居だよ


俺も助かってるし、気を使わないでね」


「ありがとうございます


朝ご飯、もうすぐできますから」


「うん、いい匂い、この匂いは〜」


「フレンチトーストです」


「やっぱり」


「大丈夫でした?


私、朝はご飯じゃなくてパンなんです」


「俺もそうだよ」


「良かった〜」


「しかもほぼ毎日、フレンチトースト」


「えっ」


「というより、フレンチトーストしか


美味しく作れないんだよね」


「mitsuruさん、フレンチトースト


得意なんですね」


「そうだね


フレンチトーストは、自信あるかな」


ニコッ


あっ、笑った


「じゃあ、明日はmitsuruさんの


フレンチトーストを食べましょう」


「俺の?」


「はい、是非食べたいです


毎日でもいいぐらい」


「毎日?は飽きちゃうんじゃ」


「全然!


私もフレンチトースト大好きなんで」


彼女が自然と毎日という表現を


してくれたことが嬉しかった


期間限定ではない気がして


「了解


実は俺もmikoちゃんと一緒で紅茶が好きで


色々と集めてるんだよね」


「えっ、ほんとですか?」


「うん、来て」


スタスタスタ


「ほら」


「うわぁ、すごいこんなに」


「今日はどれにしようか」


「えーっと、じゃあこれで」


「ローズティーだね、よし決まり」





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