第91話 別れるかも知れない

 家に帰って俺はPCに向かいネットでマッチングシステムの事を片っ端から調べまくっていた

 

 高麗川の言っていた事に近い情報もいくつか出てきたが、それは数多ある噂話の一つ程度、高麗川の情報よりも厳しい意見もあれば、素晴らしいと賛辞を送る意見も多々あった。


 これでは真実かどうかなんてわかりようがない。


 そもそもネットの情報自体、監視され、改変されている可能性も否定できない



「一体……俺は……」

 キーボードから手を離し、机を拳で叩いた。

 このモヤモヤとした感情の落としどころか見付からない。


 俺は、自分の気持ちにも、瑠の気持ちにも疑心暗鬼に陥っていた。

 

 俺のこの気持ちは、瑠に抱いているこのどうしようもない感情は、本当に俺の気持ちなんだろうか? この恋心は……本物なのだろうか? 誘導された物だとしたら……。


 俺はベッドに寝転ぶと、天井を見上げ考え込む。


 そもそも……恋ってなんだろう?


「…………乙女か!」 

 そんな言葉が頭に浮かび慌てて自分の頬を叩いた。


 

 瑠と会いたい……話がしたい、何でもない、たわいもない話がしたい。

 そして……手を繋ぎたい、腕を組みたい、肩を抱きたい、キスをしたい、胸を触りたい、抱き締めたい……。


 これって……この感情って、恋心なのか? 性欲なのか? それとも少子化対策のシステムの誘導なのか?


 わからない……俺は自分の気持ちが全くわからない。


 瑠は、瑠はどう思っているんだ? 


 入学してからずっと俺達はいがみ合っていた、嫌っていた。

 口をきくのも、側にいるのも、嫌だった。プリントが配られそれを月夜野に渡すだけで睨まれ、月夜野の物に触れようものなら罵声を浴びせられた。


 それなのに……そんな俺達が僅か半年余りでキス迄してしまう関係になるなんて……。


 お互いの物にさえ触れられなかった俺達が、今や手を繋ぎ、腕を組みそして……唇迄が触れあった。


「……確かに……考えられない……よな」

 高麗川の言ってる事は全部理解出来る。

 あんな状態から……なんて……端から見たらおかしい。


 俺と瑠の関係はクラス内では、高麗川以外には全くバレていない。

 いや、むしろ教室内では全く口をきいていない為に、俺達はもうどうにもならないくらい憎しみあっていると思われている……ような雰囲気に感じられる。


 まあ……友達いないんでわからんけど……。

 

 とにかく、このままではいけない……、今ならまだ……キス止まりの今なら……まだ……なんとかなるかも知れない。


 だけど……どうすれば……。


 俺達は……本当にこのまま付き合って良いのだろうか……このままシステムを利用して……良いのだろうか?


 瑠は俺を好きだって言っていた。

 でも……それも誘導だったとしたら?

 お互い趣味が一緒だって知ったから、秘密の共有をしたから……勘違いしてしまったから?

 

 それも誘導? わからない……。


 でも……一つだけわかっている事がある。そしてそれこそが俺に疑念を持たせる事になっている。


 それは……マッチングされたばかりの時に言っていた月夜野の言葉……。

「私はこの間システムじゃなきゃ駄目なの」と言っていた事だ。


 なぜ駄目なのか? どうしてなのか? そして瑠は当初、俺とマッチングを解消し、来年もう一度マッチングしようとしていた。

 別の男と来年……そう考えた時……俺の胸がズキッっと痛んだ。

 

 瑠が他の男となんて……。


 今は考えられない……そんな事考えたくもない。


 でも……瑠は……もし俺と駄目だったら……来年もう一度マッチングシステムを利用するのか?

 いや、多分するだろう……瑠はシステムを最後まで利用するって宣言していた。


 そこまでこだわる理由って……一体……。

 俺は考えた……今までの瑠との事、高麗川との事、悪い頭をフル回転させ、これまでの事から推測した。


「例えば……急いで結婚したい? そして子供を……ってそれじゃ本当に誘導されているって事じゃないか!」


 駄目だ……このままじゃ埒が開かない……一度話してみよう……瑠にそれとなく……聞いてみよう。


 でも……もし……もしも……俺と瑠が……高麗川の言っていたように……システムに誘導されているとしたら……。

 今までの事が全部嘘って事になる……。


 そしてもしそうなら……俺は自分の気持ちも瑠の気持ちも信じられなくなる。


 そうなったら……俺は…………瑠と…………。




 別れるかも……知れない……。





【あとがき】

 ブクマ、レビュー★を宜しくお願いいたします。

 レビューは文字を入力する必要はありません。最新話の下から★をクリックするだけの簡単なお仕事で、作者がめちゃくちゃ喜びます。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾ヨロシク

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