第81話 明日から解禁


 明日でちょうど一ヶ月、システム利用停止が解除される。

 瞬とまたデート出来る、一緒に居られる。

 嬉しい……凄く嬉しい。


 別に会おうと思えば会えた、学校でも話しかける事は出来た。

 でも、しなかった……瞬にわかって貰いたかったら……。


 私の覚悟を……。


 システムを使い続けると言う言葉の意味を……。


 私はベットの上で膝を抱える……膝の間に顔を埋める。

 身体を丸めて、目をつむる。

 あの人を思い出すと……切なくなる。

 あんなに嫌いだったのに……どうしてこんなに好きになってしまったんだろう……。


 あの人に笑った顔が、困った顔が、怒った顔が、頭に浮かぶ……。

 少し細くて筋肉質の身体、その腕が、胸が、背中が頭に浮かぶ……。


 私はそのままの姿勢で、膝を抱いていた手を離し、自らの身体を抱き締める。

 あの人に抱かれたい……ギュってして貰いたい。


 頭をナデナデして貰いたい……アニメのヒロイン達みたいに可愛がって貰いたい。

 私の主人公様に……私の王子様に……瞬に……。


 そのままの姿勢でパタリと倒れる、ベットの上で猫の様にさらに身体を丸める。

 明日まで待てない……次のデートまで待てない……すぐに、今すぐに会いたい。


 そして……もっと進みたい。


 手を繋いで……腕を組んで、肩を抱いて貰って、腰を抱いて貰って……ハグして貰って……そしてキスをして貰う。


 恋人達の楽しいデート……アニメや小説で見た、夢見た数々のデートシーン。


 瞬としたい……色んな事を瞬と経験したい……経験…………。


 「くっ……」

 経験……あの可愛いらしいいとこ……瞬のいとこ……。

 まさかあの……いとこ、と今頃経験してる? ううんそんな事しない……瞬はそんなに軽い奴じゃない……。

 マッチングされた相手は私の理想に限りなく近い人……の筈……私の理想の人が、そうホイホイと誘いに乗るわけがない。

 菫の誘いにも乗っていない……みたいだし……。


 でも……でも……。


「──でも……なあぁ……」

 入学当初瞬は女子相手に鼻の下伸ばして、だらしない顔で話しとかしてた……。

 私はそれを見て憎らしく思った。

 あいつに似ているから、余計腹が立った。

 私はあいつのせいで、中学の時のあいつのせいで……彼氏を作れなくなったのに……。

 だから……瞬に攻撃をした……ただの八つ当たり……。

 瞬だって彼女が欲しかったんだろう……私のせいでクラスの女子から敬遠された。

 だから瞬もマッチングシステムに……。


 マッチングシステムが無ければ、私と瞬はいまだに対立していただろう……こんなにも好きになる事は無かっただろう。


 瞬も私の事を好きだって言ってくれた……あの言葉を思い出す度に、頬が熱くなる、身体が火照る……私の芯が燃える。


 好き……大好き! 愛してる! 彼の胸に顔を埋めてそう叫びたい……。


 アニメの様にアニメのヒロイン達の様に……激しく……。


 今日も瞬の事を思い浮かべながら眠りにつく。

 もうすぐだ……もうすぐ瞬と……デート出来る……恋人同士として……瞬と……。


 そして進みたい……どこまでも瞬と……私の大好きな人と……一杯……経験したい。


 今は夢の中だけ……今は夢の中でだけの経験……。

 

 今日も瞬と……夢の中で…………。





 

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