第80話 いつかは……結婚

「ハア……ハア……」

 俺は桜を後ろから激しく攻め立てる。


「う、う……くっ、ふう」

 桜は小さな声で呻く。

 腰に回した手を強くひきつけリズムを取るかの様に小刻みに体をゆする。


「う……うん…くっ」

 桜は抑える様な、耐えるような声色を上げる。


「いくぞ!」


「あ……だ、お、お兄ちゃん! だ、駄目!」

 俺は桜の足を持ってフィニッシュの体制に入った。

 桜の身体がピンっと伸びる、耐える様に、身体を反らす。


「無駄だ!」


「いやあああ!」


 

 俺は畳の上で背中を取っていた桜の足をホールドしたままぐるりとひっくり返し、仰向けになった桜をそのまま力技でホールドする。


「ぐええええ」

 俺が覆い被さると桜はカエルが潰された様な鳴き声をあげた。


「おっし、フォール勝ち」

 桜の両肩が付いているのを確認して俺は起き上がりガッツポーズをする。

 

「ず、ずるい! 体重差ありすぎるのに力技とかお兄ちゃんズルっこい!」


「何言ってんだ、桜は3ポイントで俺はフォール勝ちのみ、しかも桜攻撃でのパーテールポジションからのスタートだろ?」


「ぶうううう」


「ぶうううう、じゃねえよ、オリンピック目指すなら俺程度に負けてる様じゃダメなんだからな」


「だから兄ちゃんとセックスすればって」


「だーーかーーらーー、そんなのに頼ってる時点で、もう負けてるんだよ」


「そんなのじゃなーーーーいーーーー!」


「全く……とにかく負けは負けだ、あ、き、ら、め、ろ」


「ふん! 嫌ですうううううう」

 指で目の下瞼を下げあっかんべーをする桜……正直限界だった。


 全くの子供、幼女ならいざ知らず、今の桜は少女と大人の中間……そろそろ出る所が出だしている。

 そこをなるべく触らずに今の桜に勝つのは結構大変だ。

 しかも短パンにTシャツ姿、おそらくはノーブラ……。

 Tシャツが汗で体にピタリと張り付き、桜の身体がの線がうっすら透けて見える。


 それでなくても現役から退いて数年、女子とは言え強化選手にもなっている桜、恐らく来年には手も足も出ないだろう……組んでみてそんな予感がしていた。


「お兄ちゃん……あの人と結婚するの?」

 桜はタオルで身体の汗を拭きながら、畳の上に正座をすると真剣な顔で俺にそう聞いてくる。


「結婚! いや……それはまだ……」

 桜にそう言われ何を言ってるんだと思った……まだ高校生で結婚なんて……そう思ったが……そうなんだ……マッチングシステムはそれが目的なんだいう事を思い出す。

 マッチングシステムは国による少子高齢化対策として成立した……高校生バージョンといえども最終目的はそれ……。


[そうか……そうなんだ」


「兄ちゃん?」


「……いや、何でもない……とにかく俺は、璃と付き合ってるんだ、あきらめろ」


「ふん! キスもした事ない癖に」


「うるせえ」


「まあ、いいや、私の儀式に童貞かどうかは関係ないし」


「おま! ど、童貞って……まあそうだけど」


「もう高校2年なんだから早く経験しなよ、お兄ちゃん、私はお兄ちゃんが下手くそでも気にしないから」


「うるせえよ! だからやらねえって言ってるだろ!」


「あははははは」



 そうなんだ……俺は璃が言ったあの「私はシステムを使い続ける」と言った事について深く考えていなかった。

 でも……あのセリフはあの宣言は……そういう事なんだ……。


 そう、このまま行くと、このままマッチングシステムを使い続けると、俺は璃と結婚……まあ高校生なので婚約する事になる。

 もしくはきっぱりと別れるか……更新して付き合い続けるという方法もあるが、ずっと使い続けると宣言した以上、いつかはどちらかを選択しなければならない。


 璃は俺にそう宣言したのだ。

 つまりは……璃は……俺と……。


「どうしたの? お兄ちゃん顔が真っ赤になってるよ?」


「え? あ、いや……」


「疲れた? チャンスじゃん! さあ、寝るまでにもう一本やろう!」

 桜は立ち上がりそう言いながら腰を落として構える。


「だから、あきらめろって、ってか、もう勘弁してくれええええ」

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