第64話 停学1週間

 

 学校に呼び出され担任と教育主任に事情聴取をされた……。


 やましい事はしていない……風呂なんてプールと一緒だ……なんて言えない。

 隣の部屋にいたので気が付かなかったと誤魔化すが何を言っても結論は変わらないらしい。


 システムから送られて来た処分は俺のみ停学1週間、そして俺と月夜野はシステム利用1ヶ月の停止と言う事になった。何故俺だけかというと、やはり俺の家で、しかも母親の携帯絡みと言うことで、首謀者は俺、月夜野は巻き込まれただけと言う判断らしい、まあ事実その通りなんだけどね。


 そして呼び出されるも学校側は事実確認をするだけで処分撤回等は出来ないとの事、そもそも学校も初の事なのでよくわかっていない様子だった。


 1週間と言っても翌日から実施との事なので、夏休み及び土日も停学日に含まれる為に実際登校出来ないのは3日だけとなった。そこは学校側の温情らしいので素直に感謝しておく。


 ただ俺にとって一番辛い事は、停学中の1週間月夜野との接触を禁じられた事だ。

 直接会うのは勿論、携帯、メール等も一切禁じられた。

 一旦頭を冷やせとの事らしい……。


 会議室を出ると月夜野は俺にすがって泣き始めた。


「な、なんで五十川君だけ……私も同罪なのに……ごめんなさい」


「いや、俺が首謀者なのは間違い無い、そこはさすがシステムって感じだよな……むしろ月夜野まで停学になったら俺が申し訳無かった」


「……で、でも……」


「来週になったら会えるから……ね」

 俺は誰も居ない廊下を歩きながら月夜野の頭を撫でた。相変わらずサラサラな髪……1週間触れない、月夜野の声を聞けない、月夜野の可愛い顔を見れない……それが多分俺にとっての一番辛い罰なんだろうって思った。




 ◈ ◈ ◈




「くっそ暇だ……」

 今日から学校が始まった……しかし俺は停学中……一応自宅謹慎扱いなので外にも出れない……。

 あれから月夜野とは連絡を取っていない。色々手はあるが、もしバレた時、今度は月夜野にも迷惑がかかる……でも逢いたい……顔が見たい……触れたい。


 悶々としながらベッドで寝転び漫画を読んでいると『ピンポーン』と呼び鈴が鳴る。いつもなら居留守を決め込むんだがあまりに暇だったのと、もしかしたら月夜野が……と期待して玄関まで行き扉を開けた。


 そしてそこに居たのは……。


「やあ! 久しぶり」

 さらにコンガリと日焼けして真っ黒な顔の高麗川だった。


「高麗川? ど、どうしたんだ?」


「今日休んだだろ? 給食のパンを持ってきたぞ」


「いや……高校で給食って……」


「あはははは、とりあえず話がある……入れてくれ」

 笑えないお約束の様なギャグを言うと高麗川は真剣な顔で俺を見た……俺が停学になったのがバレたか……?

 学校は今回の停学に関して掲示板に貼り出す事はしないとは言っていたが……。


「じゃ、じゃあ……」

 停学中だし、誰も居ない家に入れるのはどうかと思うがここで追い返すわけにもいかない、仕方なく高麗川を家に入れリビングに案内した。



「何か飲むか?」


「ああ、何でも」


「そっか……じゃあ……麦茶でも」


「ありがとう」


 俺はキッチンから麦茶を持ってきて高麗川の前に出す。高麗川は麦茶を一気に飲み干す……男前だなあ……等と感心していると高麗川はコップを『ターーン』と音を鳴らしてテーブルに乱暴に置いた。


「僕は……嘘つきは嫌いだ!」


「えええ?」

 高麗川に突然嘘つき呼ばわりをされた……嘘? 俺が? 全く身に覚えが無い……一体何が言いたいんだ?


 俺は何が言いたいんだ!? と言おうとした矢先、高麗川は俺を睨み付けて言った。


「君達……システムで付き合い始めたんだろ?」


「え? な、なんで知って……」

 ……な、なんでそれを……。俺がそう言おうとすると被せる様に言われる。


「やっぱり……そうなんだな……」

 な! し、しまった……かまをかけられた。


「き、きたねえ、騙した……」


「……騙したのは君だろ」

 全部被される……高麗川の勢いに押される……。


「いや……騙したわけじゃ……確か……来年は使わないって言っただけ……」

 来年は使わない……そうなのか? システムなんか使わなくても俺と月夜野は……付き合いが続くはず……。


「そんな詭弁はいい……君と瑠がシステムを使って付き合っているのは事実なんだろ?」


「…………ああ」


「…………そうなんだ……おかしいって思ったんだ……あんなにやりあって居たのに急速に仲良くなったから……」


「いや、それは……」


「それは……なんだい?」


「……いや……」

 システムなんて無くてもと言いたかった……現に最初はシステムがあっても仲は悪いままだった……でも……やはりシステムが切っ掛けだ……システムが無ければ俺と月夜野はあのままだった……恐らくずっと……1年から今も……あの争いばかりしているままだった……。


「僕は言ったよね……君までシステムに取られるのは嫌だって……」


「……ああ……でも取られたわけじゃない、俺は月夜野を」


「……僕はまずそれを確かめに来たんだ……」


「それ?」


「……君は……本当に瑠が好きなのか?」


「……そ、それは勿論」


「君は瑠の……月夜野瑠のどこが好きなんだい」


「どこがって…………」


「顔かい? スタイルかい? あんなに争って嫌って居たのに、性格なんて言わないよな?」


「いや……でも……俺達は相性がいいって」


「あははははは……相性ね、それはシステムに選ばれたから……そう思い込んでいる、思い込まされているだけだ! 君達はそう言われて付き合ったって事だろ……君達はAIに……コンピューターに踊らされているだけだ!!」


「そ、それは……」

 そんな事は……そんな筈は…………。


「……僕は調べたんだ……お兄ちゃんを奪われたシステムの事を……そうしたら……システムなんて嘘ばかりさ、君達は騙されている……」


「嘘……ばかり……」

 どういう事なんだ? 嘘って……そして調べた? 俺だって調べたさ、でも何も……何故それを高麗川が?


「ああ、それを今日言いに来た……聞きたいかい?」


「……ああ」


 高麗川は一体何を知っているんだ……システムの嘘って一体……なんなんだ?







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