第62話 夢が現実になるなら買うよね?


「なんでスク水なのよ! 普通の水着で良いでしょ」


「そこはほら、わざわざ用意していないって所に夢があるって言うか、小中学の思い出の共有というか……」


「やっぱロリ……」


「ほらアニメでも言ってただろ? スクール水着って言うのは授業の道具でそれを変態やキモいって言うのは筆箱を好きって言う奴に変態って言うのと一緒だって」


「筆箱を見てそんな顔で好きって言ったら変態じゃない」


「そんな顔ってどんな顔だよ!」


「さっき私にスク水でお風呂入れと強要した時よ!」


「強要じゃない……お願いだから」


「ハイハイ、どっちにしろ出来ないでしょ?」


「まあ……そうだよなあ……」

 今も部屋の前をパタパタとわざとらしく足音を鳴らして母さんが何度も行き来している。

 俺の変な欲望……それどころかイチャイチャも儘ならない状況……これからって時にゆっくりと関係を深められる場所がない……当然お風呂なんて夢のまた夢……。

 俺達は宿題をやりながらどこかでゆっくりイチャイチャ出来ないかと話し合ったが、最後まで良い案は浮かばなかった……。


 しかし……この数日後、大チャンスが訪れた。



◈ ◈ ◈ ◈


 そろそろ学校始まる……平日にゆっくりと起きられるのも後数日間と俺は昼前まで惰眠を貪り、いい加減腹が減ったのとそろそろ約束の準備をしなければと、誰も居ないキッチンに降りて来た。


 とりあえず何か飲むものと冷蔵庫を開け、牛乳をパックごと飲んでいると、とある物がキッチンのテーブルに置いてあるのに気が付く……そう、母さんの携帯電話がそこにあった……。


「…………母さん忘れていったか……でも……これって……大チャンスじゃね?」

 システムは携帯で位置を確認している。ただ故意に忘れたりした場合罰則がある。過去の位置情報もシステムには記録されていてAIはそれを元に個人の行動パターンを把握する。なので誤魔化したり故意に忘れたり、異常な行動をしたりすると警告が来るらしい……ただそれはシステム利用者にであって、母さんには関係無い……しかも母さんの仕事はシフト制なので休みは休日等特定の日にはならない、仮に母さんの行動パターンまでシステムが監視していたとしても、今日が休みかどうかの判断は出来ない……つまり今、システムの中で母さんは家にいる事になっているはず……。


 つまり……今、千載一遇のチャンスが訪れている。


 今日も月夜野とこれから外でデートの予定だ。しかし俺は予定を変更するべく急いでショートメールを送った。


『今日外で会う約束してたけどやっぱ家に来ない?』


『ん? 今日お母様いるの? わかった良いよ~~』


 詳しい事は書けない、メールも監視されている可能性がある。


 とりあえず月夜野を家に呼ぶ事は出来た。今日お母様居ないんじゃなかったっけ? 等と返信が来たら中止にしたがそれも無かった。


 今の所思った通りに行っている……。


 とりあえず俺は月夜野が来るまで部屋に戻り色々と準備を始めた……夏休み最後の思い出作り……そして……今日……俺の夢が叶う……かも知れない。


 

 ウキウキと準備を終えその後ベットに寝ころびながら色々と妄想をして待っていると、呼び鈴が鳴る。俺は月夜野をとりあえず部屋に招き入れると直ぐに現状起きているチャンスの話をした。


「え? 居ないの? 本当?」


「うん……マジで」


「大丈夫なの?」


「とりあえず30分ここで様子を見よう……警告が来なければ上手くいっているって事だし」


「……そうなんだ……五十川君の部屋で……今、二人きり……えへへへへ」

 少し不安そうな顔をするも、俺を見て頬を染めにやけ顔をする月夜野……あああああ、どんだけ可愛いんだよおおお。


「あ、あのさ、メールで言えなかったけど……もし大丈夫だったら……その……あれやっても良いかな?」


「……あれ?」


「この間言ったじゃん……俺の、し、た、い、事」


「……えええええええええ! で、でも……私、なにも聞いて無かったから……水着持って来て無いよ?」


「大丈夫大丈夫……あるから」


「…………は?」


「じゃーーーん、買っちゃった」

 俺はそう言うと用意しておいたスクール水着(旧式)広げ月夜野に見せる。


「…………うーーーーーーーーーわ……マジでキモい」

 ああああ、月夜野のその目、ゴミを見る目……ゾクゾクする……最近これが無くなって少し寂しかった……毎日は辛いけど、たまにはその目で見て欲しい……ああ、そうさ俺は変態だよ、悪いか? 月夜野が嫌じゃなければ誰にも迷惑かけて無いんだ! 勿論俺は強要はしない!


「……いや、えっと……嫌なら無理にとは言わない」


「…………嫌じゃ……ない……よ」


「ほ、本当に?」


「……うん」

 ほら! 強要してないだろ! 恋人同士が納得してイチャイチャするんだ文句あるか!


「で、でも……着替えとか……見られるのは……」


「ああ、えっとね、お風呂はもう入れてある、着替えは……とりあえず俺が先に行って風呂場に入ってるから頃合いを見て後から入ってくれれば、中で待ってる……勿論覗いたりしないよ!」


「……全部準備済ですか~~そうですか~~」

 あ……いや、準備はしてたけど……勿論嫌だって言われれば、ここでまったりするだけ……いや、せめてキスくらい……いやいや、そんな妄想をさっきしてました……でも、言ったよね? OKしたよね?

 

 そうこうしているうちに30分が経過……お互いの携帯には警告等は来ない……これは行ける?


「……だ、大丈夫そう……」


「だね……」

 真っ赤な顔でうつむく月夜野……な、なにを恥ずかしがっている? 一緒に海に行ったし、月夜野が着てた水着よりも露出は少ないし、それこそ家の風呂なんだから月夜野を誰にも見られない安心感があるし、何も問題ない! むしろそれが理想とも思えるくらいだ。


「お風呂はトイレの横だから……先に入ってるね?」

 そういうと月夜野は俺を見ずにコクンと頷く……俺はそれを見ると自分の水着を持って部屋を出た。

 俺の水着は普通の奴だぞ? スク水じゃないぞ? 

 

 さあ俺の夢が叶う、月夜野のスク水姿が見れる……いや、スク水は学校の教材だからね、むしろビキニとかより健全だから! 変態って言うなよ! 泣くぞ! 泣くからな!? なんならやめるぞ~~!


 


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