第60話 オタクの妄想
純愛から凌○まで、オタクの恋愛趣味は幅広い……凌○が恋愛と言うのは些か乱暴だが、そういう愛の形もあると言っておこう。
オタク……自ら妄想を生み出し、又は作家さんの妄想力を借りて自ら妄想をする生き物。
可愛くてスタイル抜群なヒロイン、主人公に尽くし決して裏切らない。そんな2次元のキャラをおかずに……げほんげほん……キャラに恋をする。
3次元なんて要らない……2次元さえあればいい……。
中学時代はずっとそう思っていた。でも……それでも……やはり3次元への憧れはあった……捨てきれなかった。
だから俺は高校デビューを目論んだ。しかし、入学早々インフルエンザにかかると言うベタなボッチパターンに陥る。
ようやく治して登校したがやはり既にグループは形成されていた。
まだ行ける……まだ仲間に……俺はそう思ったが何故だか隣に座る女子陣のリーダー的美少女に目を付けられ、攻撃された。男子にとって恐怖の存在、その男を一刀両断にしてしまう美少女に男子は恐れた。
触らぬ神に祟りなし……虐めと一緒……彼女のターゲットなりたくない男共は俺に近付く事によって巻き込まれない様皆俺を避ける様になってしまった、
俺はクラスの男子の中で月夜野の壁的存在になってしまった。
俺の高校デビューはそこで潰えてしまった。
しかし……さすがにこのまま諦め3年間また2次元に浸かれば……俺はもう抜けられないと思った……それは嫌だ……このまま魔法使い妖精になるのは嫌だ! そこで俺は至極軽い気持ちで今年導入されたマッチングシステムに手を出した。
そしてそこで選ばれたのが俺のボッチを決定的にした張本人……月夜野 瑠嬢だった。
こいつは……どこまで俺の高校生活を邪魔するんだって……そう思った。
入学式に月夜野を始めて見た時、俺はなんて美しく綺麗で可愛い女の子がこの世にいるんだと驚いた。
アニメに出てくる様な、神秘的な美しさ、隣の席に座った彼女に俺は見惚れてしまった。
しかし、その第一印象とは正反対の性格……いや、むしろ3次元の女なんてそんなもんだと納得させられた。
そう……月夜野瑠は美しい俺にとって神秘的な美しさだ。
俺は月夜野の容姿が好きだ……めんどくさい性格も今は好きだ。
そしてどんどん沸き起こる俺の欲望、数年間鍛えたオタの妄想力が拍車をかける、
月夜野にもっと触れたい……抱き締めたい、キスをしたい……。
月夜野もオタクだ……同じ穴のむじなだ。そんな欲望も妄想もしているだろう……だから俺達はこれからどんどん二人で……そう思っていた。
しかしそこに立ちはだかったのが俺達を繋げた恩人とも言えるマッチングシステムだった。
…………以上前回 『To Be continued』までの粗筋……。
いや、マジで何なの高校生らしい付き合いって! 俺の、俺達の……いや、高校生の性に対する欲望を舐めんなよ! 高校性って言うくらいだぞ……。
だから俺達はめげずに今日も会う……イチャイチャする為に……だ。
「……ねえ……」
「はい……」
「親御さんが居る中でどうやってイチャイチャするの?」
「それな!」
「それなじゃ……ないよおおお」
とりあえず今日は母さんが家にいるので俺の部屋でイチャイチャ……宿題をやる事にした。そして母さんの隙を見て……そう思っていた。
でも……まさか母さんがここまでベタに俺達の邪魔をするとは思わなかった。
30分毎にお茶だお菓子だと様子を見に来る。今日は仕事が休みでいつもはのんびりしているのに洗濯掃除とやたら俺の部屋の前を通過する……何なの? 気になって仕方ない……。
「マジで集中出来ない……」
イチャイチャ出来ないならと宿題をやるつもりだったが……集中出来ない……まあ……そもそも月夜野が目の前にいる時点で集中出来ないんだけどね。ついつい月夜野の可愛い顔を見つめてしまう。
「……じゃあ止めよう、それで……何処に隠したの?」
隠した……そう月夜野は来て早々俺の部屋に入るなりスライディングでベットの下に潜り込んだ……俺のご趣味を調べる為にだ……いや、当然そこに物は無い……そう言うと月夜野はそれからずっと部屋をキョロキョロしている。
「お前だって隠してただろ!」
月夜野の部屋にBLは置いてなかった……いや、BLにだって色んな種類があるだろ? 月夜野はどういう系統が好きなのか俺は知りた……いや、知りたくは無いかも……。
「なんの事~~~」
オレガそう言うとヒューヒューと口笛を吹き、下手くそか!って言うくらいの誤魔化し方をする。
「嫌だ、絶対に見せない」
「……ひ、酷い……彼氏が彼女に隠し事をするって……もう浮気ね」
「浮気……お、お前も隠しただろって」
「私はBL趣味ってバラしたでしょ? だから今度は五十川君の彼氏の趣味を知りたいな~~」
「や、やだよ」
「な、何? 言えない趣味? うーーーわキモ」
「彼氏をキモいって言うなと……っておい」
痺れを切らしたのか月夜野は立ち上がる……そして部屋をぐるぐると歩き回る……いや、ちょっと待って……。
そして徐にクローゼットを……いや、格好良く言った……押し入れに手をかける……って!
「そ、そこは! ら、らめええええええ」
押し入れには、押し入れにはあああ俺のお宝抱き枕がああああ!
俺は月夜野を羽交い締めにして押し入れの扉から引き剥がすって軽!
思っていたよりも遥かに軽い体重、女の子ってこんなに軽いの? ってくらい軽かった。蟹にでも取り憑かれている様な軽さ、俺は勢い余って月夜野と一緒に床に倒れてしまう。
「……ご、ごめ……」
月夜野を守る様に抱き止めながら倒れ込み床に背中を打ち付ける……月夜野が俺の上に覆い被さる……うわわわわ。
俺に抱き付いている状態……や、ヤバい……俺の部屋で……こんな……。
「つ、月夜野……」
俺の理性はもう大分前から限界だ……もういっそこのまま……俺は上に乗っている月夜野を思わず抱き締めてしまった。
「い、いそ……!」
月夜野が声を上げた瞬間俺の部屋の扉が開いた。
「……瞬? 今大きな音がしたけどだいじょ…………」
ああああ、そうだった……母さん居る事をすっかり忘れていた……俺は慌てて月夜野を抱き締めていた腕を緩める……しかし月夜野は俺から離れない……うわうわうわああああ、まずいって……月夜野? あれ? どこを見てる?
「ああああ、あんた! な、何して……あんたまさか襲っ……ああああやっぱり、やっぱりいい、あ、あんな変な本や嫌らしい人形遊びとかして……まさか……それを月夜野さんに!」
「に、人形?!」
フィギュアだフィギュア! 母さんな、なんて事を!
「あああ、こんな可愛い彼女を連れて来てようやくまともになったと思ったのに……や、やっぱり……つ、月夜野さん! 息子がうちのバカ息子が、つ、通報しま…………つ? 月夜野……さん?」
母さんがヒステリックに騒ぎ始めるも月夜野はピクリとも動かない……どういう事なのかと俺は母さんから月夜野に視線を戻した……その時、月夜野の腕がスッっと動き俺のベットのマットレスの隙間に手を差し入れた……あああああああああああ!
「――――ふふふ……あった」
月夜野はそう言うと俺のお宝をマットレスの隙間から数冊引き抜いた……あうあうあうあうう……。
「……えっと……な、何か母さん勘違いしてた見たいね……あ、あまり変な事しちゃ駄目よ……さてお洗濯の続きしないと……」
その月夜野の冷静な姿? を見て何か感じたのか? 母さんはそう言うと慌てて俺の部屋を出ていく、いや、待ってえ、母さん行かないでええええ。
俺の懇願虚しく再び二人きりになる俺と月夜野……月夜野は本を持ったまま起き上がり俺の腰の上に座り込んだ。短めのスカートから白い太ももが露になる。
しかしそんな事気にも止めずそのヤバい態勢を維持したままで俺のお宝を読み始めた……な、何このシチュエーション? こんな美味しいシーンなのにシチュエーションなのに……全然燃えないし萌えない……いや、それどころでは無い……この間のコミフェ3日目に手に入れた同人が……今……月夜野の手に……。
ヤバい、まずい……た、頼む月夜野、最近俺は格好いい主人公って事になってるんだ! 頼むから内容だけは、内容だけは明かさないでくれええええええ!
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