第59話 ←To Be Continued
「どういう事なんだ?」
「うーーん調べたけど……これが理由かなあ……」
月夜野は俺にスマホで調べた記事を見せた。
俺達は今、月夜野の家から離れた駅近くの喫茶店に来ていた。勿論月夜野がミニスカートノースリーブから着替えてだ。他の男に見せられるか! あんな可愛い月夜野を!
スマホに来たシステムからのメッセージは二通り、俺はその場から退去せよと、月夜野は退去させよとの文面だった。
理由がわからない……なぜ月夜野の家から出なければいけないのか……ただ俺達はマッチングシステム利用の際、警告には従うと誓約している。
誓約を無視した場合罰則事項があり、利用停止処分から始まり、罰金、懲役と段階的に処分される。
警告が来た以上従わなければならない……という事で俺達はとりあえず安全であろう喫茶店に避難した。喫茶店は今まで問題無かった。現状どうなるかわからない……とにかく警告が出た理由が知りたい。
ここ喫茶店で、今俺達はシステム的にどういう現状なのかを調べる事にした。
コーヒーを2つ頼み一旦落ち着いてから、スマホでシステム関連の書き込み等を調べる……しかし警告された等の情報は中々出てこなかった。全国にいるだろう高校生利用者の書き込みは発見出来ない。しかしその理由は直ぐにわかった。
システム利用時の誓約書にはSNS等で書き込みしないという物がある、その為だ。勿論匿名掲示板でも相手は国家機関の為、匿名性は意味をなさない。調査されバレた時のリスクは計り知れない。
それでも根気よく色々調べていると、月夜野がとある記事を発見した。昨年システムを高校生に活用すると決まった際に書かれた記事だ。
タイトルは『システム利用者(未成年及び高校生)活用時の制限』と書かれていた。
内容はこうだった。
未成年者や高校生にマッチングシステムを使わせる際に制限を設ける。
その対応の一つとして高校生らしい付き合いと言う条件をAIに付加する。
他にも色々難しい事が書いてあるが、恐らくはこれが今回俺達に適用されたと思われる。
そしてその例として、詳しい発動条件も書いてあった。それは、特定の場所等にて長時間二人きりで入り浸るとシステムは該当者に警告をすると言う物だった。
「これって……」
「多分……これだよね?」
俺はテーブルに置かれた月夜野のスマホを覗いた。 月夜野も反対側から覗き込む……顔が近い、さっき嗅いだ月夜野の良い香りがしてくる……いや、今はそれ所じゃない。
「ちょっと待て……何? 彼女の部屋に入るのが駄目なのか?」
俺の部屋は大丈夫だっただろ?
「多分親とか第三者がいるとか……後は時間とか?」
「時間?」
「う、うん……その……あれをするにはそれなりに時間が……」
「あれ?」
あれってなんだ? あれ?
「バカ! ……その……エッチ……な事……よ」
「あ、ああああ」
せっせせね……。
「って言うかなんだ! 俺達そういう事してたって疑われたのか?」
手を繋いで匂いを嗅いだだけだぞ! 健全だろ!!
「……多分だけど……最近システムの提案とか受けて無いし、二人で海に行ったし、相当仲が進んでるってAIにそう……思われているのかも……」
「……でも……友達とか一緒かも知れないだろ?」
俺達の場所は特定されても、利用者以外は特定されないだろ?
「……行動パターンでの判断……かも知れない」
「行動パターン?」
「私と五十川君で共通の友達はいないとか、今までクラスで遊びに行く様な所に五十川君が行かなかった……とか?」
「俺はAIにまで友達いないって思われているのか……」
一応いる……いる設定なんだよおお……。
「後……人は特定されないけど、家に誰かいるかは判断出来るかも……」
「いや……それってかなりヤバいんじゃ? まあ、人を特定しない情報は収集はよくある話だけど……」
「うん……でも多分……自宅に親が不在かとかは判断されていると思う……」
「まあ……親の管理責任って奴があるからなあ……」
「利用許可を貰う時にシステムに登録されている可能性があるから……とりあえず警告受けちゃったのはもうしょうがないね……まだ警告段階だから罰則とか無いとは思うけど……」
「けど?」
「何度も繰り返したり無視したりだと……学校に報告が行くかも」
「マジか……」
彼女の部屋に入ったら警告とか、マジでなんなの? 馬鹿なの? 死ぬの? 真面目に宿題する……いや匂い嗅いだりしてたけど、そのつもりは……あった……の……一応……。
「カラオケとか漫画喫茶とかは大丈夫だったから……そういうのは平気なんだろうけど……」
「あ、でも俺の部屋は平気だったよな?」
「あれは五十川君のご両親がいらっしゃったし、時間も短かったし、そもそもシステムの指示だし」
「あああ、めんどくせええええ!」
なんだよ、高校生がしちゃいけないのかよ!
「……だよね……ど、どうする?」
「どうもこうも罰則があるし」
「そ、そうね……」
何か言いたげな月夜野……モジモジしてて可愛い……いやいやそんな場合じゃなかった。いや勿論月夜野と付き合う事はそれ目当てだからってわけじゃない……でもさ、制約されるのって何か違うと思う……。
「あのさ……マッチングシステムなんて、もう要らなくないか?」
「え?」
「俺達はもう付き合ってるんだし……俺は別れるつもりなんて無いし……」
「……そ、そうだね……」
月夜野は少し考えてから俺を見て笑った……しかしその笑顔は満面な笑みでは無かった。何か言いたげな、何か不安そうな少し曇った笑顔だった。
「えっと……そう言えば前にも聞いたけど罰則ってまさか懲役とかじゃ無いよな?」
「うん、でも……私達高校生は今年から施行だからどういう罰則が適用されるか全然わからない……未成年だから不正使用は家庭裁判所の判断になるらしいけど……それだけじゃないと……少なくとも学校は退学だよね……」
「俺達は不正使用じゃないから、そこまでは重くは無いって事だよな?」
「……でも警告無視が学校に報告されたりしたら最悪不純異性交遊とかで停学処分……最悪退学になる可能性が……」
「なんだよそれ……ムカつく何が高校生らしい付き合いだよ……あ、いや……かといって俺はお前と……その……それ目当てで付き合ってるわけじゃ無いからな!」
「……う、うん……」
システムは少子高齢化対策でやっている事だから、マッチングさせて終わりでは意味が無いのはわかる。でも人の恋愛にそこまで踏み込むってどうなんだ? 俺は憤りを隠せないでいた。
俺達はお互いのわだかまりを乗り越えて正式に付き合った……そしてこれからって時に、まさかシステムが二人の障害になるとは思いもしなかった。
「……とりあえず停学はまずい……二人同時にに停学になったらなんて噂されるかわかったもんじゃない」
俺はいい……俺一人なら……でも月夜野は中学の時のトラウマがある。
「うん……」
「とりあえずさ、暫くは……控えるってのは? 会うのもちょっと抑えればシステムの判断も緩くなる気がするけど……」
「嫌!」
俺がそう言うと月夜野はテーブルを乗り越える勢いで俺の提案を全否定した。
「え?」
「やだ!」
「月夜野?」
「やだあ、やだよおお……会いたいよお、もっと一緒にいたいよお……」
泣きそうな顔で、駄々っ子の子供の様に俺に懇願する。それを見てその月夜野の姿を見て、俺はさっき言った事をすぐに後悔した。
「…………うん」
そうだ……俺も……俺も月夜野と一緒に居たい……ようやくここまで来たんだ……1年前では考えられない程俺達の間は縮まった。でも……俺は月夜野を守らなければいけない……俺だけ停学になるなら、俺だけ捕まるなら、システムなんて無視してやるのに……。
「……わかった……色々試してみよう……どこまで行けるかわからないけど……やるよ……俺も月夜野と一緒に居たい……だからこれは……俺達とシステムの勝負だ!」
「! い、五十川君!」
俺がそう言うとさっきまで泣きそうな顔が一瞬にして満面の笑みに変わった……可愛い月夜野……俺の月夜野……。
「かといってなあ……この先どうやって二人きりになれば良いのか難しいよなあ……」
漫喫とか? カラオケとか? まあ定番だよなあ……でも……いや、しないよ! そんな所で変な事は……。
「うーーん、そうだ! 外なら行けるんじゃない?」
「……外?」
「うん、なんだっけ? 前に同人で見た……えっと……えっと……あお……」
「あああああああああああ! 言うなあああああああ」
言うな! 15禁でもそれはヤバい! 俺が月夜野の言葉を大声で遮るも月夜野は止められた理由をあまり理解していなく、ポカーンとしていた。
こ、このオタク娘が……知識はあるのに経験は無い、積極的であったり消極的であったりする……ああああ、もう! めんどくさいいい!!
一体この先どうなるのか……俺達とシステムの戦いが……今始まる!
←To Be Continued
うーーわ……完全に負けフラグじゃん……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます