第52話 私は主人公
五十川君が走っていく……周りは家族連れが多いからナンパとかもなさそう。
私はのんびりと一人海を眺める……子供達がさっきの私達の様に波打ち際ではしゃいでいる。水平線の彼方に見える入道雲、お盆を過ぎたけどまだまだ夏の終わりは見えない。
五十川君にあんな態度を取っていたけど、本当は楽しいの……凄く……楽しい……。
五十川君ともっと一緒にいたい……コミフェだって二人で行きたかった、何度も連絡を取ろうとしたけど取れなかった……だから寂しくて悔しくて、つい……あんな態度を取ってしまった。
もっと……素直になりたい……。
小学生になった頃両親が色々あって、あまり構って貰えず、私は外で遊ばない友達もいない寂しい子供だった。
いつも部屋に閉じ籠り自分の殻に閉じ籠り一人で絵ばかり描いていた。
その中で私が唯一楽しみにしていた事は、お婆ちゃんの家に行く事だった。
夏休みに入れば直ぐにお婆ちゃんの家に行く、そこでお婆ちゃんと畑で野菜を取ったり、海水浴をしたり、花火をしたりしていた。
友達なんていなくていい、一人が楽でいい……って思ってた。
でも、お婆ちゃん家でとある1本のテレビを見た。地方の放送だった。あまり細かく覚えていないけど私と同じくらいの男の子を見て甚く感動した事は覚えている。
それを見てから、私は変わった……ううん、変わろうとした。
まあ、そのせいでそのままBLなんて趣味に、腐女子になってしまったんだけど……。
私はコミュ障を克服した。
オタク友達は出来なかったけど、その時友達だった子達とは中学に入った辺りからよく恋愛の話をするようになった。
初めはあまり関心は無かったけど、話していく内に次第に恋愛に目覚めていった。BL趣味のお陰で男の子には興味津々だった為か直ぐに恋愛物に嵌まった。
オタクだった私はBLと同じくら恋愛物を読みあさり自身と置き換えて妄想する様になった。
そう……私はBLよりも私自身の妄想をする様になった。
BLと違い恋愛は現実に出来る……妄想しているとやはり彼氏が欲しい……男の子と仲良くなりたい……そう思う様になった。
理想の彼氏とイチャイチャしたい……その理想は妄想は私の中でどんどん膨らんで行った。
そしてあの事件……私の男の子を見る目は180度変わってしまった。
男なんて……大嫌い、2次元の世界で妄想するのが一番いい、BLと同じ、現実なんて夢だって……そう思う様になってしまった……私はまた殻に閉じ籠ってしまった……。
でも……今ようやく私はその壁を自分が作った殻を破ろうとしている。
私の壁を殻を少しずつ壊してくれる人が出来たから……彼ならその壁を、私が閉じ籠ってしまった殻を壊してくれるかも知れない。
殻から出ることが出来たら……私は彼に身も心も委ねる。
彼の前でなら、私は……裸になれるかも知れない。
そうなれば……えへ、えへへへへへへ……。
オタクって内に籠ってるイメージがあるし、異性との付き合いが少ないから奥手ってイメージがあると思うけど、実は全く逆……興味ある事はトコトンまで追及しちゃう……それがオタク……。
私だってオタク、そしてBL趣味……つまり男の子には物凄く興味があるのです!
現実の男の子は嫌いだ。だから自分の中で理想の彼氏を作り上げ、その人と色々妄想していた。
妄想する事にかけてはオタクはピカ一、皆、2次元を3次元に補正する能力の持ち主だ。
そして今、私の数々の妄想を実現してくれる理想の人が出来た……それが……五十川君……。
もっと素直になりたい、もっとイチャイチャしたい……でも、どうしても素直になれない、積極的になれない。
最近少し強引な五十川君、でも……もっと強引でもいい……私は反射的に拒絶しちゃうから……だからもっと強引に来て欲しい……。
もっと……なでなでして欲しい、もっとギュってして欲しい、もっと……。
二人きりでの海……理想の彼氏と何百回も来ている海……。
五十川君は私の妄想を実現してくれた。そして海を見ながら手を繋ぐなんて……あはっ……あんな感触なんだ。
嬉しい、楽しい……もっとして欲しい、もっと一緒にいたい。
これからどんどん私の妄想を実現して欲しい、二人で妄想を実現したい。
「オタクって…………エッチなんだなあ……」
アニメや漫画、ラノベ、同人誌、そんな数々の趣味……そんなのに興味津々な私達……。
アニメの様に同人の様に……したい……されたい。
目を瞑れば主人公を自分に置き換えて冒険の旅に出る。
そこで色々な体験をする。主人公に伴って、主人公自身になって……。
全て空想、全て妄想……妄想彼氏との数々のシチュエーション
彼氏が出来たら、理想の彼氏が出来たら、私は主人公なれる、あの世界の色々な世界の主人公に……
異世界の様なおとぎ話の様な綺麗な海を眺めている……。
私は今……主人公だ!
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