第41話 サークル参加
「また一段と焼けたなあ……」
「ううう、この県は暑すぎるよ、これでも焼けないように日焼け止め塗って、スキンケアもしっかりやっているんだぞ」
コミフェまで後2日、一緒に行く約束はしたものの、高麗川が部活で忙しく日程等はいまだに決まっていない。その為さすがに後2日とあって、本日慌てて某有名ハンバーガーチェーン店で部活帰りの高麗川と待ち合わせをし直接話す事になった。
夏休みに入っている為、高麗川とは久しぶりに会ったが、元々日焼けして黒い高麗川がここ数日の猛暑でまた一段と黒くなっていた。完全にブラックこまちゃんと化していた。
「ほら見てくれよ、僕は結構色白なんだぞ」
そう言って高麗川襟元を指で押し下げ胸元を俺に見せる。胸元の白い肌と一緒に白基調で小さな花が散りばめられている可愛らしいブラがチラリと見えた。
「見えてる見えてる……」
「え? おっとスポブラから着替えたんだった」
そう言ってテヘペロしながら胸元を隠す高麗川、てかスポブラなら良いのかよ……。今度じっくり見せてくれ……。そう言えばこの間見た高麗川のランシャツ姿を思い出すと……確かに脇や首元からチラチラ見えてたなあ……。
「それより! コミフェなんとか行けそうだぞ!」
「お! 休めたか?」
「ああ、なんとかね……1日だけ休んで良いって監督から許可が出たよ。始め先輩に休みたいって言ったらどうせコミフェでしょって……どうせとはなんだあああ!! って言いたかったけど、うちの部活は上下関係厳しくてさあ」
「ははは、まあ、しょうがないよ、それでいつ行けるんだ?」
「ああ、えっと2日目だ」
「…………2日目かあ」
「ん? ダメなのか?」
「いや、ダメって事は無いんだけど、2日目は女性向けが多く出てるからさあ、ゲーム関連は1日目だから」
「そうかあ、まあ僕はコミフェ初心者だからな、今年は雰囲気を味わいに行くだけだ」
「まあそれなら良いけど、俺もあまり詳しくないからなあコミフェは」
「じゃあ僕と一緒に楽しもう!」
「まあそうだな……」
といっても2日目は完全高麗川の付き添いだろうなあ、3日目がメインだし……あまりお金は使えないし……そう考えていたその時、俺のスマホに着信が入る。チラリと見ると……相手は月夜野だった。あいつから通話が入るなんて珍しい……いや初めてかも知れない……俺は月夜野に何かあったのか不安になった。
「? 出ないのか?」
「あ、ああ、ごめんじゃあ」
そう言って俺は月夜野の着信を取った。
『早く出なさいよ!』
「いや、そんな事言われても」
『あ、ご、ごめんなさい、ついいつもの癖で』
「いつものって……」
『あ、あのね、あの……突然で悪いんだけど……明明後日、その……デートしない?』
「は?」
『いえ、デートっていうか、その、えっと……その』
「なんだよはっきりしないなあ」
『うん……その……五十川君……コミフェって行く?』
「まあ行くけど」
『あ、じゃあ2日目私と一緒に行かない?』
「2日目?」
『うん……ダメ?』
「いや、そこは……」
お互いに煮え切らない答え……俺は月夜野にはっきりと聞いた。すると
月夜野からとんでもない答えが返ってくる。
『あのね……その私緊急でサークル参加しなくちゃならなくなったの』
「――――は?」
『本当に緊急なの……私一人だとどうにもならないの……他に頼める人がいないの』
「……いや、それにしても」
月夜野はコミフェでサークル参加するというとんでもない事を俺に言ってきた。しかも手伝ってくれとまで……一体どういう事なのか? まさか月夜野は作家? しかも2日目って事は……。
一瞬そう思ったが、知り合いがインフルエンザで倒れ急遽頼まれたとの事だった。いや、それにしてもどんな関係だよ……。
『お願い……貴方だけが頼りなの……』
かなり深刻な事態らしい……助けたいのはやまやまなんだけど……。
「ごめん……2日目はちょっとダメなんだ、他の日なら」
『…………誰かと……行く約束でもしてるの』
月夜野がそう言う……どうしよう……正直に言った方が……コミフェには月夜野もサークル参加する。どこかで見られる可能性も……月夜野は中学時代男に騙されている。折角信頼されて電話をしてきたのに嘘はつけない……俺は黙って高麗川の顔を見た。
「ん? どうしたんだ? 2日目ってコミフェの話? 誰か他に来るのかい?」
『! ちょ、ちょっと今の声!』
高麗川が俺に喋ると声が聞こえたのか月夜野が反応した……ヤバい、俺は咄嗟にスマホのマイク部分を指で押さえたが既に遅かった。
『今の声どこかで…………こ、高麗川さんね、高麗川さんと居るのね! まさかコミフェに一緒に行くのって……高麗川さん?』
「いや、まあ……」
『……そ、そう……そう……なんだ…………代わって』
「は?」
『いいから高麗川さんに代わって!!』
「……お、おう」
月夜野の勢いに負け、俺は高麗川にスマホを渡す。
「ん? …………つ、月夜野さん?!」
高麗川は物凄く不思議そうな顔をしていたが素直に俺のスマホを受け取り話し始める。そしてすぐに驚きの表情に変わった。相手が月夜野だという事に驚いたのか、それとも俺と月夜野が電話をする仲という事に驚いたのか、その両方なのか……。
「うん……うん……よくわからないけど僕は別に、五十川君が良いって言うなら……ううん、うん、じゃ、じゃあ当日」
高麗川は月夜野にそう言うと通話を終了し俺にスマホを返した。
「なんかさあ、僕あまりよくわかってないけど、サークル参加する事になった。並ばなくて入れるし、五十川君なら大丈夫だからって」
「マジか……」
「これってラッキーなのかな?」
「……さあ?」
それより何より、俺と高麗川の関係、俺と月夜野の関係、月夜野とサークルの関係……どう説明するんだよ?
高麗川も一気に色んな情報が入って来て何を聞いたら良いかわからない状態になっているみたいだった。
とりあえず時間も遅く今から全部話すのは無理と俺は誤魔化した。
そもそもどこまで話して良いかもわからないし……諸々は月夜野と当日話すと言って高麗川には納得してもらいとりあえず俺たちは店前で別れた。
そして3日後……俺たちの暑い熱い夏が今始まった。
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