第26話 どどどど、どうしよう


「えーーーーーーーー」


「どういう事どういう事」

 意味がわからない、頭の中で整理出来ない。何が起きてるのか理解できない。

 カラオケ店から足早に離れる。彼から逃げる。今何が起きているのかを把握出来ない。


 孤高を気取った嫌な奴って思ってた。でも何故か気になって仕方無かった。

 昔の自分を見ているようだった。


 だから事ある毎に喧嘩した。彼を見るとイライラしてたから……。



 でも……これって同族嫌悪……だった?


「どうしようどうしようどうしよう……どーーーうーーーーしーーーよーーーー」

 え? これって運命? システムの恩恵? 私の理想の人って……彼?


 いや……あり得ない……確かにああいう乗りは嫌いじゃない。アニソンだって好きだし、ううん大好きだし、それしか知らないし、一人カラオケなら歌いまくりだし……。


 でも違うの、そう言うんじゃ無いの……あれじゃあ……オタ友にしかなれないよ…………あれ? でも……いいのかオタ友で……そもそも私も彼もお互いにこのカップリングは無理って思ってた。

 

 1年間の我慢って思ってた……。


 え?! わ、私に初めての……オタ友が!!

 

「言う? 言っちゃう? 言っちゃえば良かった?!」


 ただ……彼は言った、今の状態で対等な関係だって……私は来年もシステムを使いたい……彼は趣味をバラされたくない……ここで私がカミングアウトしたら…………バランスが崩れる? 


 そもそもボッチの彼と私じゃあオタバレした時の被害が違い過ぎる。


 昔に比べたら、中学の時に比べたら今のこの状態は十分過ぎるくらい幸せだ。

 この状態を卒業まで壊したくない……だからシステムを利用した。私の事を知らない人と付き合いたかった。そうしたら私は男の人に対して、素直になれる気がしたから。


「まさか……こんな事になるとは……」


 言いたい言いたい言いたい……五十川君に私の事を言いたい、本当の私の事を言いたい。


 でも……怖い怖い怖い……言うのが怖い……。


 そもそも、オタ趣味だって色々ある……BLを毛嫌いする男子は多い……。


 でも……ひょっとして五十川君って……BL容認派? って言うかこの間見つめ合っていた男の子といい、池袋のショップといい……ま、まさか!

 

 あり得る……だって私から1年以上の間オタ趣味を隠していたのだから……だからまだ他に隠し事があってもおかしくない……。


 はっきり言って私は匂いでわかる、ううん、わかっているって思ってた。

 

 うちのクラスの男子、特にあのオタ3人組……あのグループを見て、いつも羨ましく思ってた。

 私もああやって思う存分人目も憚らずオタ話がしたいって思ってた。


 仲間が欲しかった……。


 まあ、でもねえ、あのグループはちょっとオタ濃度が薄いから私が入ったら引くんだろうけどね。



 ……と、とにかく今は彼の事を知ろうと思う……あの時彼が言っていた意味が今頃わかった。


 私と向き合いたいって言っていた時の彼の真剣な顔、真っ直ぐな目を思い出す。


 まだまだ信用は出来ないけど……私も彼と向き合って見よう……彼の事を知ろう、そして……少しずつ私の事を知って貰おう……そうだ……私も今から始めよう。


 彼と、「五十川 瞬」と、システムで選ばれた私の相手と……今から始めよう……。



 そして……あの可愛らしい中学生と彼との関係も…………腐腐腐……。


 



 



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