第24話 ドッキュン★ドキドキ大乱舞♡
「あんた……なに考えてるの?」
「え? あ、いや、どこでも良いって言ったから」
「そうだけど、もうついてきちゃったけど……まあ良いか、男子と二人きりなんて初めてだけど……」
俺はデート先をカラオケ店に決めた。二人きりでじっくり話せる個室っていうと自宅かここくらいしかない。
「私……曲とか知らないし、歌わないよ? あんたの歌を聞けって事?」
ソファーに深く腰をかけ少し横柄な態度の月夜野は俺を見てそう言った。
今日の月夜野どんなデートにも対応出来るようになのか? パンツルックにシャツというかなりカジュアルな格好だった。まあ高級ホテルでディナーなんて事は俺には出来ないしねえ。
「月夜野は歌わなくていい後で俺が歌う」
「……は?」
「その前に、今日俺達はここで初めて出会うんだよ」
「…………ご、ごめん……何を言ってるのかさっぱりなんだけど」
「初めまして
俺はそう言って深々と頭を下げる。そして顔をあげると月夜野はポカンとした顔で俺をじっと見ていた。
まあ、そうなるよな……。
そして俺は月夜野に今日の旨趣を説明した。
まずは俺達がなぜカップリングされたにも関わらずいい結果になっていないかを説明した。
つまりはこうだ、俺達は何かしらが原因でシステムの思惑から外れたという事だ。
高い成功率のその枠から外れた理由は一つしかない……そう……俺達は近すぎたんだ。
さすがのシステムも同じ学校にいるって迄の情報しかないだろう。
近ければ遠いよりもいいとシステムは判断する筈、遠すぎると成功率は下がるに決まっている、当然会う機会が減るからだ。
ディープランニングは成功と失敗から学習しそこから次の方法を導き出すのだが、おそらくここまで近いカップルというのは今まで存在しなかったのだろう。
そもそも席順迄の情報はシステムには入っていない、だって入力した事ないもん。
つまり俺と月夜野は知りすぎているが故に現状うまく行ってないという結論に達した。
「それで?」
月夜野は俺の話をあまり興味無さそうに聞きながら、俺を見ずにドリンクを飲み、歌いもしないのにカラオケのコントロールパネルをスクロールさせていた。
ここでイラっとしてはいけない、今まではそうだった。
でもそれも俺は結論付けている。そう、こいつは猫なんだ、それも野良猫だ。こっちから撫でに行くと嫌がったり逃げたり、さらに追いかけると引っ掻かれる。
だから遠くから、こっちに来るまでひたすら待つ……慣れるまでじっくりと餌をやりつつひたすら待つ。それが猫と仲良くなるコツだ。
「うん……だから、今日からやり直す、今日からスタートさせるんだよ俺達」
「スタートさせる? な、何を言ってるのかよくわからないんだけど?」
「俺と月夜野……さんは今初めて会ったんだ、そうだね?」
「そうだねって言われても」
「俺達がこの間した約束覚えてる?」
「まあ……」
来年まで次のカップリングが上手く行くように試験的に、実験的に、仮に付き合う事にした俺たちはそれを1年間やり続けるにあたっていくつかの約束をした。
一つは怒鳴らない、喧嘩も極力しない。お互いに好きな相手として気をつかい相手を尊重する。
当然それに付け込んで、相手の嫌がる事、いやらしい事等をしない。
そして、お互いに知った秘密は他には明かさない、二人がした会話を他の誰かに話さない。
他に細かい事もあるが大まかにはこの三つだ。
そこで俺は思った。約束を破った時の事を……口約束でも約束は約束だ、これは契約なのだ。
だが、契約が不履行になった時に罰則が無い。と、俺は思っていた。
違う、むしろ罰則があるのは月夜野の方だ……。
月夜野は来年もこのシステムを使いたいと願っている。俺はそこまで、このシステムにこだわっていない。
つまり、契約不履行で俺と月夜野が別れた場合、今後会わなかった場合、システムの罰則で不利益をより被るのは月夜野だ。
これがわかった時に俺は思った……それって同等な関係じゃないって。
だから、俺は今からスタートする。月夜野と同等な関係になる為に。
つまりは、不利益の共有をする事にした。そう決めたんだ……。
「だから、今から俺は月夜野に俺の秘密を打ち明けるから! 俺は月夜野と向き合いたい。同等な関係からスタートしたい」
「え? えええ?」
月夜野が俺の勢いにびっくりしている。 俺はそれに構わず月夜野が触っていたカラオケのコントローラーを奪い、曲を選択した。
曲は……
『魔法少女キララ♡ウルル、ドッキュン★ドキドキ大乱舞』
俺が小さい頃に嵌まったアニメのオープニングソングだ……俺はこのアニメからオタクになったと言っても過言ではない。
曲が始まると、俺は茫然としている月夜野の前に立ち、マイクを持つと得意の振り付けをしながら歌い始めた。
「わたしは~~~あなたに~~~ドキュンと~~~♪」
「えええええええええええ!」
俺の歌に合わせて月夜野の悲鳴の様な合いの手が部屋に響きわたった。
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