第22話 妹攻略?
「僕は思うんだよ! やはりギャルゲーの妹攻略は外せないって」
「えーーでもさあ、結局行き着く所は結婚だろ? 妹結婚エンドはどうにも萎えるんだけど」
「妹腹ボテエンドよりましだろ!」
「だからエロゲーの話じゃねえ」
「えーーー、一緒だろ!」
「違う! 断じて違う! エロゲーとギャルゲーは全然違う」
「性描写があるか無いかだけだろ!」
「性描写とか言うなあああ!」
俺はまだ高麗川とゲーム談義をしていた。先程の喫茶店ではさすがにムリと俺からお願いし、もう少し喋りやすい所でと店を変え今はファミレスにいた。
ランチを食べながら始まったゲーム話は全く止まらず、時間はあっという間に過ぎ、そろそろ夕方近くになっていた。店は丁度空いている時間帯、それでもそこそこのお客は居るが、俺達は声を小さくする事なくずっと話を続けていた。
「高麗川って兄貴がいるとか言ってたけど、妹攻略ってさあ……なに? ブラコンなの?」
「あーーー、ほら、そういうのが偏見だって言うんだよ、君は自分がオタクと言うのを隠している。それはオタクに君自身が偏見をもっているって事だ。そういう所から直していかないと、いつまで経ってもカミングアウト出来ないし、オタ仲間も出来ないぞ!」
「……いや、するつもり無いし」
「……全く……まあいいよ、じゃあ僕がいつでも相手してあげるから」
「……え?」
「別に君がオタクという事を公開するつもりは無い、隠したいって気持ちも全くわからないでもなからね。でも仲間は欲しいだろ? 話をしたいだろ? だから僕で良かったらいつでも話を聞いてあげるよ」
ドリンクバーにてどうやって作ったのか? 三色カラーの飲み物をストローで啜りながら、高麗川は僕を見ずにメニューを見ながらそう言った。
いや奢るとは言ったがまさか夕飯迄食べる気じゃ無いだろうなあ……。
「いや……仲間が欲しいわけじゃ…………ない事もないような……」
「はっきりしないなあ、じゃあ聞くよ! 君は僕が必要じゃないのか!?」
高麗川は今度はしっかりと僕を見てそう言った。何か運動部の熱さが伝わってくる様に……。
必要かどうかで聞かれると、そりゃ必要無いとは言えない。現にこうして楽しい時間を過ごしているんだから……でも、俺はそう言われ今更ながらに思った。これって良いのか? 俺は今月夜野と付き合っているんだ。括弧仮とは言えこれって浮気扱いにならないのか?
そして考えた……しかし、答えは簡単だった。
浮気どころか、仮に浮気だったとしても問題無いのではないか? そう結論付けた。
何故なら、俺はまず正式には月夜野とは付き合っていない。システム上仕方なく会うだけ、そして来年に向けてのお試しでの付き合いなだけだ。
そもそも俺は月夜野に惚れているわけではない、月夜野だってそうだ。
そして月夜野には好きな人がいる可能性もある。その可能性は俺の中ではまだ捨てきれていない。
そして更には、俺は別に高麗川を好きなわけではない、ただこうして楽しく話せる相手っていうだけだ。
つまり、高麗川と会っても何も問題は無い。
「まあ、いいか……」
別に付き合うわけじゃない。オタ話が出来るのは凄く嬉しい……。
「まあいいかとは随分と酷い扱いだなあ~~」
「あ、いや、ごめんごめん」
「いや、許さない!」
「えーーーー」
「このパフェを食べなきゃ許す事は出来ない」
高麗川はメニューのデザート欄を俺に見せながら一番高いパフェを指差しニコニコ笑いながらそう言った。
「マジか……せめてミニに」
パフェの隣のミニサイズに俺は変更を要求する。ケチじゃねえ、ランチも奢ってるんだからこれ以上は痛いんだよ。
「仕方ないなあ~~じゃあそれで」
高麗川はそう言うと呼び鈴をならし店員にその旨伝える。
「さあ、じゃあもう少し君に今日買ったゲームの素晴らしさを伝授しようじゃないか!」
満面の笑みで、ジャージの袖を捲り小麦色に焼けている腕を俺に見せつけながら話始める高麗川。
しかも何故かこのゲームに出てくる主人公の妹、コンシューマー版ではカットされているらしいが、今日買ったこの原作の方では攻略出来るらしい。高麗川はその攻略出来る素晴らしさを延々と語っているんだが……いや、楽しいよ、楽しいんだけど、オタク談義ってこんな体育会系なのか?
俺は高麗川とオタ仲間になった事を少し後悔し始めていた。
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