第5話 このシステムじゃなきゃ私は……駄目なの……
次のデート日を登録した直後お互いの両親に相手を紹介するイベントが発生した。マジかこんな勢いで色々絡んで来るのかこのシステムは……。
俺のスマホにこのイベントメールが送信されたと同時に、システムから両親に相手の報告が入った。月夜野の写真が添付されたメールが送られてきたらしく、それを見たうちの両親は歓喜していた。
「お、おい瞬! やったな超美人じゃないか」
「はううう、母さん嬉しい……」
親父は歓喜し母は泣き崩れた……おい……。
「か、母さん孫はもう見れないかと、今からお父さんともう一人作ろうか話してた所だったから、もう嬉しくて嬉しくて」
「母さんやったな! 見れるぞ孫が!」
「いやだから、おい!」
息子の前でもう一人とか言うな! いや、ギリギリ行ける年だからなおのこと生々しいんだよ。
父も母も若くして結婚、しかもデキ婚らしい……そしてうちの母親は異常に若い、若くして俺を生んだからなのか特異体質なのか、見た目は20代前半、親父は普通に40代なので二人が道を歩くとどうみても親娘……マジで援○カップルと間違われる程。
「お! 今度連れて来るのか、よし父さん床屋にいかなきゃだな」
父さんがシステムからのメールをスクロールしイベントを確認する。
「母さんも美容院予約しないと、いつ連れて来てくれるの?」
その父さんのメールを横から見て母さんも同じ様な事を言い出す。
そして二人揃ってキラキラした顔で、滅茶苦茶期待している目で俺を見る……うう、1年間限りの付き合いなのに……心が痛い……ごめんよ父ちゃん母ちゃん。
「か、彼女の都合も聞かないといけないから……」
「きゃあああああああ、彼女ですってお父さん」
「おおお、彼女か、でかしたぞ我が息子よ」
更に歓喜する両親を見て俺の心が益々痛んできた……でも……言うわけには行かない、既に俺だけの問題ではなくなっている。彼女、学校、お互いの両親、もう皆巻き込んでいる。俺がいい加減に、軽い気持ちでシステムを利用したせいで……皆に迷惑がかかっている。俺に出来る事はせめて1年間何事もなく終わらせるだけ……それがせめてもの責任って奴だから。
喜ぶ両親に「決まったら報告するよ」と言って俺は部屋に戻った。
部屋に戻ると俺はシステムの概要及び罰則事項、過去の経緯、データ等の載っているホームページ、そしてこれを使った人の感想、失敗例等を調べ始めた。
当初は失敗も多かったがここ数年で一気に改良され成功率は飛躍的に伸びた。今年から高校生にも実施出来る様になり、更なる飛躍が期待されているとの事。
「ただし未成年者(18歳未満の者)は年齢に相応しい交際を心がける事か」
今年から導入された高校生に対する一文が従来の規約の最後に追加されていた。
「……こんな面倒な物高校生で使う奴とかいるのか?」
改めて読んでみるとかなりの制約が入る。国が実施してるだけにお堅い言葉や法律用語が羅列していた。しかしかなりの予算をかけたAIにより好みや性格を考慮してカップルを選出している為にかなりの成功率を誇っているという利点もある。確かに月夜野の見た目は俺の好みに近い……あの性格さえ無かったらの話だけど……。
「あーーあ、いっそネクラやオタク女とかの方が良かったのになあ」
学校では一切隠している俺のオタク趣味……もし彼女が同じ趣味だったら凄く楽しいのに……。
メールに添付されている月夜野の写真を見ながら俺は凄く残念な気持ちでいた。
◈ ◈ ◈ ◈ ◈
「くううううう……なんでよりによってあいつなの……」
彼氏が欲しい……私の趣味を理解してくれる彼氏が欲しいの……。
中学の時に一度凄く仲の良い男友達が出来た。
そして私はすぐにわかった……こいつ私の事が好きって。
初めて彼氏が出来るチャンスが来た。
だから私はそいつが私を受け入れてくれるか……それとなく聞いてみた。
『ねえ……オタクって……嫌だよねえ?』
『あん? ああ、マジ最悪だよなあいつら、今恋愛出来ない奴らが多くて国で面倒見るシステム作ったとか言ってっけど、あいつらオタクの為だろそんなの? あいつらの為に税金使うとかマジあり得ねえよ』
『そ、そうだよね、あはははは……』
そして次の日、私がオタクだって噂が広まった……私は必死に否定したが、中学時代その噂が消える事は無かった。私は好きな人に裏切られた……。
私はシステムに頼るしかない……自分からはもう無理だ。あいつを思い出すから……男なんて信用出来ない……でも私は彼氏は欲しい……結婚したい…………赤ちゃんが欲しい……大好きなお婆ちゃんにひ孫を見せたい……それが私の夢。
「オタクに理解があって、そこまで考えてくれる男の子なんて中々見つかるわけない」
試しにゴスロリを着てみたけどあいつの反応は今一だった。
このシステムはシビアだ、成功率90%は相手が見つかったらの場合だ。年齢が上で理想が高いと該当無しとなる。幸いにも私は容姿だけは良いと思っている。でもチャンスは年齢の若い今しかない、高校生は1年間と短い、18歳以上は2年間の付き合いが義務となる。
要するに2年間は次の相手が探せない、駄目なら次って事が殆ど不可能に近い。
「私を理解してくれる人……そんな人……滅多にいない……」
よりによってあいつがなんて……私のオタクを知られるわけにはいかない……知られたら……また私は学校でオタク女のレッテルを貼られる。
「なんでこんなに近くなのよおおおおお、せめて違う学校なら話せるのにいいい、私には時間が無いのよおおお」
病気がちなお婆ちゃんに、せめて婚約の報告をしたい……出来れば高校卒業迄に。
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