第4話 近すぎるが故に
月曜日、俺と月夜野は職員室の隣にある会議室に呼び出された。
「珍しいわねえ同じ学校なんて、よっぽど相性が良かったのね、先生応援しちゃうから、席とかも……ああ、もう隣か、凄いわねえ奇跡の組み合わせね!」
「はあ……」
相変わらずテンション高めのうちの担任、年齢不詳の誰得ツインテールがトレードマークの白井先生が満面の笑みで俺達を迎えた。
「とりあえずこの書類に名前を書いておいてね、悪用とかいい加減に使用したわけじゃないとは思うけど一応決まりだからね」
書類には入学時の時以上に難しい事が書いてあった。当然停学退学の件も書いてある。
「やっぱり学校側から罰則があるんですか?」
「え? ああ、うん勿論そうね、でも普通にお付き合いすれば何も問題無いわよ?」
先生は何を今さらみたいな顔で俺を見る……本当にすみません……。
「うちの学校でも利用している生徒は少なく無いわ、同じ学校って言うのはかなり珍しいケースだけどね」
「やっぱり居ないんだ……」
「あ、でもそうだ、他でも居るって聞いたけどねえ」
「居る?」
「うん」
そういうと先生は簡単にシステムの説明を始めた。
曰く誰と誰が付き合っているとかはプライベートな問題なので出来るだけ秘密にしろと文科省から指示されているとの事。通常担任はシステムを利用しているかの有無だけ知らされて相手が誰かとかはわからないらしい。同じ学校でカップリングされた場合知っているのは校長だけ。
「先生……その二人は……どうなんですか?」
俺の横で黙って聞いていた月夜野がその事に反応し口を開いた。
「どうして? 気になる?」
「いいえ……なんとなく聞きたかったから……」
「うーーん、さっきも言ったけど誰だかは知らないのよ、本人から申告されなければ結果もわからない事になっているの、解消したのか、延長したのか、婚約したのかもわからない事になるわ。この誓約書も学校にいる間は有効になるから、解消して次の相手の時には書く必要もなくなるしね」
「そうですか……」
「まあ、頑張ってね、同じクラスなんて珍しいパターンだから先生応援しちゃう」
先生はツインテールを振りながら笑顔で頑張るポーズをする。いや、可愛いけどいくつですか先生?
「あ、あの……先生俺達がカップリングされている事は皆には内緒でお願いしたいんですけど」
「ああ、それは勿論よ、陰ながらね、陰ながら応援してるからね」
そう言って俺達にウインクをする先生……いやだから可愛いけど本当年いくつですか?
なんて聞けるわけもなく、聞くのが怖い俺達は誓約書にサインをして会議室を出た。
会議室を出るなり月夜野は俺に構わず教室の方に歩いて行く。振り向きもせずにスタスタと歩いて行く。俺達の関係は皆には内緒だ。1年間だけの仮のカップルだから、失敗を前提にシステムを利用しているなんて言えるわけない。
もし仮に俺と月夜野が初対面だったら、相手の事を何も知らなかったらどうなっていたか……当然初対面なら相手に気を使い自分を隠し良いところを見て貰おうと努力するだろう。しかし俺と月夜野は1年間喧嘩ばかりしていた、お互いの悪い所を見せすぎていた。多分システムはこの事は知らない。
近いんだ、近すぎるんだ。近すぎる故に失敗する。来年の俺達の結果を踏まえシステムがそう学習してくれればと俺はそう思っていた。
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