虎視眈々4
四人目はDさんです。Dさんは優しくてとても気が利く人です。他人との付き合いが上手で初対面の人とも気軽に喋ることが出来ます。
あと世話焼きなのでKさんの面倒も自ら率先してみていますね。面白いことが好きで笑いのツボが浅くて、周囲を盛り上げるムードメイカーなDさん。Kさんとは親友であり入学以来の悪友であり最強コンビと認識されていました。
DさんにとってKさんのやることなすこと全てがツボにくるらしく、面倒を見ていると言いましたが、どっちかといえばDさんがKさんに付き纏っているようにも見えます。Kさんが避けようとしても、Dさんは大変目がいい上に視野が広いのですぐ見つけてしまいます。
巷ではハイスペックなんて呼ばれるほどで、人脈も広い行動派のDさん。彼が本気を出せば、Kさんが世界の果てに逃げてもずっと追いかけていくでしょうね。
さて、そんなDさんとKさんですが、同じクラスで同じ委員会、部活は違いますが隣同士の体育館を使い、同じ委員会、同じ選択科目、なぜか登下校も一緒である彼らはいわば親友のような関係で、周りからもニコイチ扱いをされるほど常に二人で行動していました。
Kさんが階段から転落した時もD君が傍にいて、すぐに先生と救急車を呼びました。緊迫した状況の中であまりにも冷静な対応をするDさんに、尊敬と不審を抱いたものも少なくないんじゃないでしょうか。しかしそれだけのことをしておきながら、Dさんが見舞いに来たのは四人の中で一番最後でした。
「ごめんナ、Kちゃん」
扉を開けて病室に入ったDさんは、悲しそうな顔をしながら開口一番に謝りました。「どうして謝る」とKさんが聞くと「オレが傍にいたのに、守ることが出来なかった。本当にごめんナ」と再び謝罪を口にします。Kさんは怪訝そうな顔をしながら「気にしていない。だから謝らなくていい」と答えました。
それからDさんとKさんはクラスのことや部活動の今後について話し合っていましたが、途中でDさんが話題を変えて、Kさんに質問をしました。ただし、質問の内容は他の三人とは少し違いました。
「オレが来るまでに誰がKちゃんのお見舞いに来たノ?」
Dさんが聞いたのは犯人のことでも怪我の具合でもありません。Dさんが知りたがったのはKさんのお見舞いに来た……即ち、彼女を心配した人達だったのです。Kさんは正直に「AとBとCさんがきた」と言えば驚いたように「え、Bチャンも来たの?」と返してきたので、Kさんは頷きました。
するとDさんは腕を組んで考え込むような素振りを見せます。「そっかー。Bチャンもかヨ……」とか何とか呟いているのが聞こえたそうですが、Kさんは特に気にしなかったそうです。それだけを訊くと、お礼と「じゃあまた今度ナ」と言って帰っていきました。
あの質問以降、Dさんに不審な動きも言動もありませんでした。
犯人を捕まえたAさんには笑顔でお礼を伝えました。性格を改善させたBさんには「本当にやってのけるとかすげージャン」と称賛しました。Kさんを見守り続けたCさんには「いつもKちゃんがお世話になっています。本当にありがとうございますネー」と頭を下げました。まるでKさんのお母さんの如く振る舞っていたそうです。
一番仲が良いはずのDさんが、あまりにも普段と変わりない態度をとるので、実は怪我のことなんて気にならず、Kさんのことを心配してないんじゃないか。あんなに一緒に居たのに、もしかして内心ではザマーミロとか思っているんじゃないか……とか気にする人出てくるくらいでした。
もちろん実際は違いました。
痛む足に苦しそうな表情をするKさんに対して悲痛な表情を浮かべ、足のマッサージから荷物持ちまで、Kさんの世話はちゃんとみていたようです。「みんながいっぱい心配するから、オレまでそうなるとKちゃんも大変ダロ? だからオレはいつも通りでいるね」とDさんが言えば「あらそう」とKさんは安心して笑ったそうです。
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