切磋琢磨 蛇足2
とある日曜日の十一時半、やっと起きてきた弟が言った。
「退屈そうですね、姉さん。及川さんでも呼びますか?」
「は? 何でそうなるの」
「だって暇なんでしょう。僕も暇なのでちょうどいいと思って」
「暇なんかじゃないよ、平和を満喫してるの」
「確かに明日あたりなにかが起きそうなくらいの静けさですが、暇なことに代わりはないでしょう。あ、僕は及川さんとアドレス交換してないので、姉さん教えて下さい」
「は? 何当然のように呼び出そうするの?」
「だって姉さん、本当に暇ですから、弟として暇潰しの手伝いをしてあげようと思っただけですよ」
「だから暇じゃないって。私だってたまにはまったりのんびりしたいんだよ。五月蠅いの嫌いなの、君も一緒じゃないか」
「まったりと暇は別物でしょう。まあ、及川さんはそこまで五月蠅くくない方なので許容範囲ですよ。どうせならここで及川さんに姉さんの情報を売ってポイントを稼いでおいた方がお得ですし」
「姉を売る気とはいい度胸だね愚弟」
「――本当にお嫌でしたら、やめますけど?」
淡々と言われて、夜空は口を噤んだ。
「いつ何時でも己が欲望に忠実であってこそ、僕の大好きな姉さんですよ」
「あっそ……」
この気まぐれがアブサン会に殴り込む切欠になることは、流石の歩く天災と名高い神風姉弟も想定外だった。
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