暗中模索2

 シャワーのコックを思い切り捻る。温い水がだんだん熱くなり、冷え切って強張った躰を和らげてくれる。ざあざあと音を立てて全部洗い流す。

 躰に纏わりついた汗も、腕を掴まれた時の気持ちの悪い感触も。けど、助けてくれた彼と家に着くまで繋いでいた手に残る暖かさだけは、消してしまうのが惜しいと思った。脱衣所にまで持ち込んでいた防水加工の携帯電話を手に取り、目的の番号を見つけてダイヤルし、濡れるのも構わずに耳に押し当てた。数回のコール音の後、彼が電話に出る。


「無事家に戻れたのかね」

「もう一人でふらふらしないように」

「必ず誰かと一緒に帰るようにしなさい」

「今日は運が良かっただけだよ」


 ぶっきらぼうだけど、ひたすら心配してくれる彼の声が嬉しくて、青空は小さく声を上げて笑う。笑い事じゃないよと大きなため息と共に声がしたので、


「今度、先輩と二人で帰りたいです」


 からかい交じりに聞いてみる。裏返った声が聞こえて、また笑った。

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