第3話
放課後、僕は指定された通りの図書室へ足を運んだ。
すると、先に朝比奈さんは待っていた。
「やあ、来たよ。」
「あ、
そうして予定調和のような挨拶を交わして、僕は朝比奈さんの隣に座る。
すると彼女はこほん、と小さく咳払いをして口を開く。
「うん、それじゃまずはさっきはごめんね。」
どうやらあの事を謝られたようだ。
「いや、まあ気にしないで。」
「うん、ありがと。それで今更信じないってことはないと思うけど実は私もなんだ。」
「私も?」
「うん、つまり私も神澤くんと同じでその……記憶泥棒に記憶を盗まれたの。」
「な……!?」
朝比奈さんも記憶を盗まれた?
そんな馬鹿な……。
いや、しかし僕もそうなのだからこれも信じる他ないと言うのか。
「それで……私……何だかビックリしちゃって。」
つまり、彼女の教室での行動はそういう事情も含まれていたからこその反応だったのだろう。
「えーとさ、僕をここに呼んだのもたださっきの事を謝りたいだけって事じゃないんだよね。」
「あ、そうだった。」
朝比奈さんは思い出したかのように、体を僕の正面に向き直す。
「うん、それでね。とりあえずなんか記憶盗まれた時というか、事件発生時に何か変わったこととか無かった?」
事件発生時などとそんなワードを日常会話で使うとも思わなかったが、事情聴取でもしようって腹なのだろう。
「いや、ご期待に添えなくて申し訳ないけど特に変わったこととかは無かったかな。昨日は普通に家で過ごしてそのまま寝たから。」
「うーん、そっか。」
そうして、朝比奈さんは考えているようなそぶりを見せた。
「……えーっとあの何しているの? 」
「推理だよ。」
「つまり、犯人を見つけようってこと?」
「うん、私達は共通の目的を見出した。だから仲間でしょ。」
「……。」
その不意打ちに僕は、彼女を一層強く意識してしまった。
「だからさ、これからは神澤くんのことを
「え?」
急な宣言に思わず戸惑ってしまう。
「というわけで、私の事は由美って呼んでください。よろしくね明。」
「え……?」
どうやら、僕達は「仲間」になったらしい。
「うん、よろしくあさ……いや、由美。」
少し照れくさいけれど、僕は彼女の名前を呼ぶ。
「うん、明。」
そして彼女は笑顔で僕の名前を呼ぶんだ。
「それで、明の話が本当なら、今の所はなんにも手掛かりないってことだよね。」
「そうなんだよなあ。」
そう、何も手掛かりがない。
よくよく考えたら手掛かりもなしに犯人探しをしようだなんてあまりにも無茶だ。
こんな時、推理小説みたいに情報屋でもいれば助かるのだが……。
……ん?情報屋……。
「そうだ。」
丁度いいのが一人居たじゃないか。
突然声を出した僕に驚いている様子の彼女に向け、僕はひとつ提案する。
「あーそれなんだけど、ちょっとこういうのに役に立ちそうな奴がいるんだよ。」
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