第37話 オンショア(海風)
とりあえず彼は、目の前の山づみの
さて、これからどうすんの?
ダイは
なにも思いつかないまま、サイドスタンドをけって、走り出します。後は、どくじの
ソルは身も心も、さっぱりしていました。おおむかしに、山の
下からの音には、とっくに気づいていましたが、ぼんやり、
ピンクのツナギを着たライダーが、バイクからおりました。ひさしのあるヘルメットをぬぎながら、こちらにちかづいてきます。かなりビビッていましたが、彼は
「よお」
ゴーグルを上げ、ダイはいいました。
あんしんしたソルは、ちょい、かた手を上げました。
ダイがほほえむと、ソルも
「おむかえに上がりました。お
「かえんの?」
「おたわむれを」
「じゃあ、かえるか」
うながされるまま、さっさと後ろにまたがりました。
「なんかスカスカだな、このバイク」
「オフロードだからね」
ダイはヘルメットをぬいで、ソルにかぶせました。
ソルにとって、
二人のりのバイクは、エンジンブレーキで、どんどん
道がたいらになるにつれ、海は見えなくなりましたが、風の強さだけはかわりませんでした。
ダイは下っているさなか、
まぶしく
「おつかれぇー」
ニコニコ
「おつかれぇー」
うしろのソルにもいいました。
「ぜんぜんだよ。すぐに見つかった」
「アラ、
ちらっと、ソルを見て、
「ちょっとボクゥ、もっと、しっかりしなさいよぉ」
かるく手で、たたくそぶり。
「ハハ」
ひきつり
「なんか、トランシーバーきかんのよ」
ソルにかぶせたヘルメットをとり、じぶんが、かぶりました。
「じゃあ、これから
ママはぐっと、ツナギの
「いいのよ、いかなくて」
「はっ?」
「いかなくて、いいの」
「え、なに? またオッサンどうしケンカしたの? それとも
「そうじゃないの、もういいの」
アゴを
「これは、やめにするの」
「はぁ?」
「なに、オレのいない間に、きまったの? トランシーバー切れてたとき?」
「まだ、だれも
「
「あらぁ、べつにおどろかなくても、いいじゃない。
ママは、口もとに手をあてました。
「今さらって……」
「みんな自分の
「……」
ダイは、だまっていました。めいかくな
「チェロキーは?」
「
「ん、どっちの
「いいの、あれはほっといて。これは、ここだけの
ダイは、ふりかえってソルを見ました。
思わずソルも、ふりかえりたくなりましたが、しかたなくダイに目を合わせました。
「だってよ」
ママにふりかえって、
「で、どうするの?」
「どーするって、わかんないわよ! ――てか、この
だしぬけにいう、ママ。
「ふ~ん。で?」
「ちょっとぉ、マジメに聞いてんの?」
「聞いてるよ。それで?」
「だからー。この
「で?」
「でって?」
聞き返すママ。
「それで?」
「……」
口ごもるママ。
「いや、なんで、そんなこと
やつぎ早に問いただす、ダイ。
「それは……」
ぎゃくギレのように
「――そぉんな、いっぺんに言われたって、
竹中直人みたいな、おこり、わらい。
「じゃあ、一コずつ、じゅんばんに
「きゅうに
「えーと、なんだっけ?」
すっとぼけているのか、たんにボケているのか、よくわからないママ。
「もういいよ」
手ではらうしぐさ。
「どうせ、うまいことはぐらかすに
ダイは半分あてずっぽうに、わが身におきていることを、そのまま
「よく、
「どうでもいいけど、
「やってみる? やつらが後からつけたとでも? 言ってはなんだけど、あたしだってこう見えて、もとはカンオン持ち(自立民)なのよ。今どき
「――イヤ、
ダイは
「気を
「いちおう、聞いただけさ」
ダイは、べつに
「でもよく考えたら、こいつのこと、まだバレてないんじゃ――」
「バレてるに
二人がドッキとするほどの
「
「あんたの方は、どうなんだい?」
「あたしは……」
「まあいいや。じゃあ、どうしろと? どうでもいいけど、あんたもしかして……、うらぎってる?」
「子度藻はそーんなこと気にしなくて、いいのぉ(笑)」
「あ、そ。べつにキョーミないし」
おもったよりアッサリダイにいなされ、やや
「だいたいガキ一人ぽっち、頃しゃしねえだろ。フッー」
ぶっきらぼうにいう、ダイ。
「そぉんなの分かんないわよ。あたしにだって。それに――、むこうについて
「じゃあ、どうすんだよ」
ソルがその音に、いちばん早く気づきました。聞いたことのあるエンジン音です。
チェロキーのゼブラ
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