第30話 Anchorites(世捨て人たち)
ソルは、北サツマ通りのあのお店、「ニューアンカー」につれて来られていました。
ピラピラしたドレスを着て、
ジープのおじさんは、
「で、どーすんの?」
ママが
「どーするも、こうするもないだろ。来ちまったもんは、しょうがない。とにかく早く、もどさなくっちゃ。できるだけ、お、ん、び、ん、にな」
「だからさぁ、どうやって、その
「なに
ちょっとイラつきまじりで、おじさんは言いました。
「ようするに、けっきょく二パターンしかないわけだ。こっちから行くか、むこうから来てもらうか。でも、なるべく
「で、そのための
「おい、おまえも
「聞いてんのか?」
「……」
「まーた、だんまりかよ」
「カランコロン、カラン……」
ドアチャイムの音で、ビクッとなるソル。
「なんだよ、もう
また一人ふえました。
どんどん人が
彼は
「オッサンたちがガン
「ちがうわよ。この子の
「なんだ、子どもじゃん」
あらっぽくイスを引いて、ドカッと、ソルのとなりにすわりました。
ドキン! となるソル。もはや「ども」どころではありません。
「アレ、おまえ……」
「えーと、なんだっけ? んと、だれちゃん?」
目をつむって、うつむき、
パッと、
「ホルスの友だち、ちゃんじゃん!」
「ん? ちがった?」
じつは、ソルの方が早く気づいていましたが、おどろくより先、彼は、みょうな
「いえ。あっ、はい」
半テンポおくれるソル。
「
「
ニコニコ
「えー、お
ママが口もとに手を当て、いいました。
「イエース」
ダブルピースのダイ。
「
グッと、
「えっハイ」
およびごしに。
「アレ、おまえカンオンは?」
「そういえば
おじさんにいわれ、気がどうてんするソル。
「ハハ、しらない間に、いなくなっちゃってぇ、ハハ……、ハ……」
ジープのおじさんは、だまって
「――で、どうなのよ?」
「あの
あの
「つかえんの?」
ほおづえついて聞く、まぶたの重たげなダイ。
「おい」
おじさんは、ジープのおじさんを、ふりかえりました。
「……ああ」
「
「……あるよ」
「
「
ちょっと、うれしそうに。
「そうか、よし」
「
「いやーだいじょうぶかな、アレ。ぜんぜん使ってないだろ」
ダイが、ジ―プのおじさんにむかって言いました。
ジープのおじさんは、
「あれは
「そりゃそうだ」
おじさんが、あいの手を入れました。
「そのために、みんなで金を出し合って、こっそり買ったものだからね。ただ
「
うって変わって、ジープのおじさんは
しばらくみんな、だまっていました。
「まあ……、そんときゃ、そんときだ。なんだって、
「ちょっ――」
ママを
「そもそも、おれたちが
「おれたちはボランティアか?
ほほえんで、ことばを
しゃべらない他の大人たち。
「むこうが先に
「うまくいったとして、その後どうすんの?」
ママがいいました。
「そんなことは、おれたちが考えなくてもいいんだよ。後のことは、やつらに
「まあ、べつにどっちに
と、ダイがつけ足しました。
「
きゅうにジープのおじさんが、クチバシをはさみました。
「ダメだね。カンオンが足どりをチェックしているし」
そくざに
「こわしちゃえば、いいじゃない。カンオン」
「? ? ?」
ふいなママの
「できるかよ!」
ダイが
「アラ、なんで?」
「ダメなものは、ダメだ」
きゅうに
「だから、なんでよ?」
「後で
おじさんはメンドクサそうに言いました。
「どうやって?」
「
「
「だからぁ、
やれやれ、といったかんじのダイ。
「だったら、
「うるさいなー、とにかく、ダメなものはダメなの」
だんだん、イラつくダイ。
「えー、
「出た出た、
「ずるぅ、そういうときだけ
「
ダイは、ムリヤリ
おじさんは
「なによ、みんなで
「ねぇーボウヤ、アタシたちは、なかよくしましょうねぇー」
「ハハ……」
ひきつり
ママはカウンターの
しばし、時がながれました。
「ウオッホン。ゴホ、ゴホ」
ノドをならすと、おじさんは前のめりの
「おれがつれて行こうと思うんだが、
「……」
だれも口をききません。
「じゃあ、そういうことで。あとは
ジープのおじさんに目くばせして、そそくさと、おじさんは立ち上がりました。
「おい!」
うつむいたままのダイが、よび止めました。
「なんだ、なにか
「しらばっくれ――」
ダイが言おうとすると、ジープのおじさんが、わって入りました。
「なあ
「ちょっ、なにきゅうに言ってんの。また、いつもの
はんわらいのダイ。
「おまえがそう思えば、そうさ。なんだって
目がすわったままの
「そうじゃない。リーガルな
「お
「
「ハハ、こいつは一本とられた」
「オッサンたち、いいかげんにしてくれないか?」
こんどは、イラついたダイが、わって入りました。
「そういうの、後にしてくれる?」
「
わるふざけの、おじさん。
「そういう大人ゴッコは、いいから」
「
だしぬけに言うジープのおじさん。
「アレ、知らなかったの? なに、今さら?」
とぼけた
「なに、サラリと言ってくれてんだ? 開き直りかよ?」
「おいおい。おれもおまえらと、おなじ身の上なんだぜ。むこうの
「つかいっぱのクセに」
「むこうから見たら、大してちがわないさ。なにかあったら、あっさり切り
「よう、言うよ」
「その口のうまさで、いったい
ジープのおじさんがいうと、
「まあ、一番きらわれる
「今日はやけに
「
とつじょキッとなった、おじさんは、
「ここは
だんだん目が、すわってきました。
「
「
うすら
「クソ! けっきょく、こうなるのかよ!」
ダイがテーブルにケリを入れると、コップの水が
その
「まったく、どいつもこいつも
うっすら
「おい、
チェロキーが水をさしました。
「おい、
「ふふん、食えないねぇ。ただのナチュラルばかだと思っていたら、いや、そう思わせていたのかな?」
「おい
「かー、つごう
「おまえだって
「どいつもこいつも、
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