第28話 カゴの鳥
「ハハ、まよってしまって、ハハ」
ヘラヘラ、うすらわらいをうかべました。
「まようって……、この
ソルは、
「ここまで、どうやってきたの? だれときたの?」
「ハハ、いやぁ~そのぉ~」
「え~。ハハ……ハハ……」
ぼうよみの、あやふやな
「で?
二人は
「かってにというか……そのぉ、はぁい。」
うなずくソル。
「それで、他の子はどうしたの?」
「はいっ?」
「ええ。
じぶんでもビックリするくらい、キッパリと。
「おいてかれたというか、なんというか、そのぉー……、
と、うなずきました。
おじさんのヒゲには、白いものがまじっていました。わかづくりが
ボディシャンプーのニオイはすれど、ボサボサのねぐせのままの
「あのー、ここって、カンオンのエネルギーターミナルとかって、ないんですか?」
「あったら、とっくにやってるだろ?」
カンオン
「あっ、そうですね……」
「まあ、なくはないんだが――」
「
おじさんはヘヤを出て、ドアつづきのおくのヘヤに入り、ゴソゴソはじめました。半開きのドアのむこうには、ダンボールや白い
黒いコードが
チカチカしているのは、
おじさんは、黒いヒモのついた
「
なんとなく、
「プッペッ、どこかにつながったカンオン、あるんですか? ペッ」
タネを出しながら、たずねます。
「うん、まあないよ」
おじさんは、つとめて
「ものものしいだろ? でもあっちには、どこにもつながった
「うーん。どうしたものか……」
おじさんはソルとおなじイスにすわっていました。
「いやマズイなこれは、マズイぞ」
おじさんは、なにやらきゅうに、あせりはじめました。彼の中で、うけ入れたくないことを、うけ入れた
「早くしないと、いずれ、なんらかの
「しゃくしゃくしゃく……」
「つぎに
「その前に、こっちから出すか?」
「プップップッ……」
「いや、あんな
「しゃくしゃくしゃく……」
「それか、だれか
かなり
「でも、だれが行くんだ? 行くとしても、先にむこうに
ちらっとソルの方を見ました。口をうごかしながら、まっすぐこっちを見ています。
「まいったな……」
おじさんは立ち上がって、こしに手をあてうつむき、目を閉じました。
子であっても彼でなかったら、この
ソルは、おなかが
「あ、スイマセン。トイレどこですか?」
ガンッ! キャビネットにイスをぶつけて、立ち上がりました。
「そこを出て……」
まだトイレの前にいそうな
ほら、やっぱり。
てきとうなところで切り上げねばなりませんが、考えの方がまとまりません。
「どうしたものか……」
おじさんと、おなじコトバをつぶやくソル。けっきょくのところ、子の
「あ~あ、やんなっちゃうな。もう」
わざと声に出しました。ふと、ナップサックのことを思い出し、あわてて立ち上がります。
いそいでイスにもどり、かたわらに落ちたナップサックをひろい上げました。
「あ、ちょっと、外出ます」
「え、なに? まだ夜だよ」
しまった。スキを見て、だまって出りゃよかった。と思っても、後のまつり。
「ちょっと
「なんなの?」
とっさに、うまい
ダメだ。いったん引き下がるしかないか。
「とくに……」
力なくいいました。
おじさんは
ところでまだ二人とも、おたがいに名のっていないのを、すっかりわすれていました。
「チッ」
ロックされていました。夜だし、
さっきまでいたヘヤに、おじさんはいませんでした。入って来たドアから、うらの
「ふぅー」
外へ出ると、やっと
「おい!」
「どこへいくんだい?」
「……」
コトバが出ません。
「だめじゃないか、こんな夜中に子どもが一人で出歩いちゃ」
子
めんどうくさいやりとりの後、どこにもいかないよう、つよく
ソルは
とつぜんガバッと、イスの上に立ち上がり、はだしの
カチャッと、とおくで音がしたかと思うと、すれるような
シーン。
長いつかの間の後、
やっぱり。
彼は
やっぱり、どう考えたっておかしい。
だいたい、さいしょっからして、見つかるの早すぎだろ?
のぞむ
どう考えたって、おかしくね?
ぐうぜんか? いうほど音立てたか?
なんか、やっぱ、おかしくね?
これ、なんか、おかしいだろ。
カンオンか?
でも、こっちのには
いくら考えたって、わからないものは、わからないのです。大人であるいじょうに、
エリゼをぬけ出ていらい、ようやっとここまで来ましたが、けっきょく彼はまた、カゴの鳥になってしまいました。この
てことは、朝までこのまんまかよ。
マジかよ!
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