第26話 ギャンブル
世界は出産する。そして女と同じように世界は美しくない。
――「無神学大全3 ニーチェについて」第三部 日記 G・バタイユ(現代思潮新社)
私は自由でありたい。狂気と紛うまでも自由でありたい。死産児のように自由でありたい。
――「生誕の災厄」E・M・シオラン(紀伊國屋書店)
今さっきまで
体がだるく、ほてり、ぼーっとしていました。
ゴロンと
「はたしてこの
「はぁー」
タメ
どーするよ……
マリの方をチラ見。
「はぁー」
また、タメ
「ふぁー」
生アクビ。
いいかげんタメ
じいーっと、
けっきょくさ……、カンオンなんだろ?
ソルは、あきらめたように、重い
カンオンは赤い
それに
一部、赤く大きな
「ジンソクって?」
「ものごとの
「じゃなくて。どんくらいまで、まってていいの?」
「
「?」
聞きなおします。
「だから、その
しばしの間。
「
ザックリかえされました。
「しるかよ」
ブワッと長文がおどり出るのと
あんのじょう、
もったいつけたような、たどたどしい
「
「てきせつな時間とは?」
ホログラムが
「
「おわれ!」
しつこく
しばらくの間、彼は考えあぐねていました。じっさいは、みじかい時間でしたが、えんえん、考えつづけた気がしました。
なにを、どんなに考えようとも、答えなんて出るワケがありません。
カンタンに
ところで
――カンオンが
ほんらい
ここから
いいかぁ、このままで……。
マリの方をチラ見。
「死んじゃってるしな」
ぽつりと、
もう、おわってるし。
赤んぼうにかんしては、今さらなにをやっても、もう後のまつりでした。
うーん……。
まだ、もんだいは、のこっているように思われました。
まあいいか、このままで……
「ゴホ、ゴホッ、ゴホッ」
むせました。おきる
「はぁーあ!」
「どっこいしょっ!」
わざと声に出して立ち上がりました。とっくに
彼は、マリの
生ぐさい魚のような
「ゴホン!」
あわてて口もとの手を、とおざけました。
ヒザで立ったり、すわったり、せわしなくポジションを変えています。足を閉じないよう
のっぺりとした
やらなきゃ、よかった……
さっそく
後もどりしようかと思いましたが、ギリギリのところで、ふみとどまりました。
なやんだすえ、彼は
どっちにころんだって、おなじだろ?
ほんとうは、(責任が)おなじじゃないことくらい、子の彼だって
まるく出かかった、シワのよった
引き出されたモノは人とは思えないほど小さく、
ソルは
立てヒザついて
広げた口をゆかにピッタリあて、下からすべりこますようソロソロと、赤いカタマリにちかづけていきます。うまくいかないので、かた手にペットボトルをもち、先っぼで
いちおう、これでおわり。なんとか、一ばんの
はっとしました。海に手がとどきません。
「チッ、あったのかよ、はじめからいえよ」
ハシゴをおり、かた手でのり出しジャブジャブあらいます。上がって、ギューとしぼりました。ソルは、のんきに
ハンドタオルでマリの
先ほどのしぼったタオルで、ゆかをぞうきんがけします。なんども海を
「ピコピコピコ、ピコピコピコ」
ぼやんと、ハッキリしない
「……なんだよ」
「今おわったばっかじゃん!」
かんぜんに、よみまちがい。ウラをかかれたと、彼はハラを立てます。かるいクツで
たしかソルは帰るよう、
5Kで見る
「ポーン、ポーン」
「ポーン、ポーン」
ほとんど
それからさらに
おそるおそるドアを開け、
まず、ニオイがちがっていました。
ソルは
カンオンが、足下と前方を
すぐに
「人いないのかよ?」
カンオンに、たずねました。
一年の内、
「ふ~ん……。」
ほんの
やれやれと、おき上がると、またちらかったものを、せっせっとかたづけ始めました。
やっと
ナップサックを
ソルはカンオンに、むき直りました。
「このまま、まっすぐ、クラランへ」
「このまま、まっすぐ、クラランへ」
「どこにも、よるなよ」
「どこにも、よるなよ」
「いけ!」
「カッツン」
かわいた音が、ひびきました。
「シュルシュルシュルシュシュル……」
モーターが回りはじめます。
ふと思いました。もとはだれのか分かりませんが、今じぶんについているこのカンオン、他の三つ分のエネルギーをたくされた、一つなのでは? と。それを
ソルは、いそいで
「なんだって、やってみなくちゃ分からないのさ」
ぼそっと、一人ごとをいいました。
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