第19話 鳥
おお 季節よ 鳥よ
無疵な魂など、どこにいよう
――ランボー全詩集「地獄の季節」(ちくま文庫)より改竄
カンオンに
「ンペッ、ペッ、ペッ」
ジュリとマリが「きたないものを見るように」ではなく、まさに、きたないものから
ニコライの
ソルはナップサックをあさって、グレープキャンディーをとり出し、ニコライにあげました。
「くぅー」
マリのお
キラキラなにかが、
「グワァ、グワァ、バン!」
お
ピンク色の
「パチパチパチパンパンパン……グワァ、グワァ!」
手と足をたたいて、よろこぶアヒルのドメスト。
さっそく中みをひろげると、さまざまな
「えーあるなら、さいしょっからいってよぉ。ねぇーもぉぅ」
ジュリがマリに
ふくろの中から、カン入りビスケット、シロップづけのフルーツのカンヅメ、切れているサラミソーセージ、ミネラルウオーターなどをえらびました。ブツブツ、ペッペッいいながら、けっきょくニコライも食べていました。
ふたたび、アヒルがあらわれました。ピンクのリボンが
しらぬ間にエアコンが入り、
なんだか、ぶぜんとするソル。たしかにベンリ。ベンリはベンリ。もんくのつけようも、ありません。どう考えても、だれもわるくは、ありませんでした。
小さな
川の
スーパー
ソルの
赤白だんだらの、トロイの
「なんだ、きちゃってるじゃん」
ニコライ。
「ねーこれ海だよね、ほんものだよね?」
マリ。
「うん、とうとう来ちゃったね」
ジュリ。
「……」
ソルはデッキに出ると、
はじめての海。彼にとって、はじめての海でした。
開け
ややもすれば、
ソルはため息をつきました。
ギラギラ
チャプンと、ちっちゃなトビウオがはねました。
「うおーい!」
ニコライが手をふります。
「おーい!」
ソルは思い立って
「なに、それ?」
ジュリがたずね、ニコライが
「鳥」
「鳥だよ。オレの鳥」
「鳥って、これが?」
「すっげー、ブサイク」
ソルはクランクをクルクル回し、ゴムのためをつくっています。エリゼで
「バサバサッ」
手をはなし、すぐ止めました。
あーもういい! メンドくさ。あったらあったで、かまうもんか。そん時ゃ、そん時だ。
「とばすぞ!」
「ちょっとぉ、ここで?」
「アホか、海におちるぞ」
ソルは自分に、いいます。
「いいから、とばすぞ!」
「あ、バカ」
「なにやってんの!」
ほんのちょっと
ちょうど
「ポチャンッ」
「あ~あ」
二人がいいました。
「あ~あ」
わらって、ソルもいいました。
まあいいや、とにかくこれでおわった。そう思うと、彼はきゅうに、みがるになった気がしました。
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