第20話 凪
――ニーチェ全集7「曙光」(ちくま学芸文庫)
いけども、いけども、
小さなヨットは、波をかきわけ走ります。
たった一つの
子らは、時間がなくなったような
ゆうだいな
夜もとっぷりくれました。風は
ところでみんなは、一ばんだいじなことを、わすれていました。
どうせ、テキトーなトコで引きかえすだろう。てぢかな島にたどりつくだけだろう。よくあるミステリーツアーの
カンオンにゆだねることが
人は聞かされていました。
ようするに、だれもわるくはないのです。なまけることは、
とはいえ、人ができるような仕事だけは、たっぷりのこされていました。気づけば、
みんながわるい時、わるい人は、だれもいなくなってしまいます。
だからそう、わるい人なんて、だれもいなかったのです。
二日目。
「ちょっとお、なにやってんの!」
とつぜんジュリが、おこりだしました。
「?」
びっくりするソル。
「水がないじゃない、水が」
「……は? だって、のんだじゃない、きのう」
「きのうのうちに、わかってたんでしょ!」
「うん、おまえもな」
彼はぐるつと見まわしました。マリもニコライも、カンオンが、あいてをしていました。
「みんな、そうじゃん」
「どうすんの、そのカバン(ナップサック)の中に、なんか入ってないの」
「ないよ」
「どうすんの、もう食べもの、みんなないよ」
「いや、しってるけど。しってたでしょ?」
「しってる、しってない、とかじゃなくって。だから、どうすんの!」
「しらんよ。かえれば、いいじゃん」
「はぁ? どーやって」
「いや、しらんよ」
「もういいから、かえして。あんたが、かってにつれてきたんでしょ。もうじゅうぶん
「だから、さいしょっから……」
ソルは口をつぐみました。ため
他の
「ほらよ」
「うっわ、サイテー。あるじゃない」
「ふひょー、くれくれ!」
のりだしてくるニコライ。
「ダメ! マリがさき」
たしなめるジュリ。
「じぶんさえ、よければいいの? じぶんさえ!」
「そうだよ。だからついてくんなって、いっただろ?」
「いついったの?」
「……」
ソルは
「いいから、空のペットボトルに、みんなのぶん分けろよ」
「よかないわよ、マリには多めにだから」
「えー、ダイジョ―ブだよ。わたし」
こまり
「いいの、あなたじゃなく、赤ちゃんのぶん。これは
ほほえむジュリ。
ケッ、いちいち大げさ。
「あと、かえるんだから、
「まだ、あんのかよ、もうさぁ、すきにすれば……」
「いちばん、だいじなことでしょ。なにいってんの」
「しってるよ。だから……」
「あきれた。パスワード
なかなか、うごかない、うごきたくないソル。
「
しぶしぶソルは、
「
わざわざカンオンにむきなおって、
「あとは、しらんよ」
たおれるよう
「じぶん、かって、なんだから」
なぜか彼女も
「へへ、おこられてやんの」
ニコライが小さく、ささやきました。
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