第13話 コドクな夜の散歩者
ソルは月あかりの、いがいな明るさをしりました。
カンオンの
黒い
ちょうど、
「グググググゥーッ」
小さく、うめくようにサオが下り――
「カンカンカンカン!」
赤い目玉のウィンクと、耳もとの
しばらく、なんの音さたもまないまま、またされます。
にげられないソルは、ひらきなおって、
目に
あわのような
エリゼ
「ボンッ」
ボイラーの
みょうにそっけなく、リフォームされた
とりつくしまもない、
ベランダが
むこうから、あまくケミカルなニオイが、ただよってきます。道に面した三角の
その
やにわに、
ささやき声で、ソルはたずねます。
「今、なんじ?」
「ここだけ、てらせ」
よどんだドロの
カンオンの
今がチャンス! 今日いっぱいの
「うむ、そろそろ12時だな」
彼はカンオンと池のむこうを、チラチラこうごに見くらべ、気もそぞろにまちます。
「……」
「……」
「……」
「く、やっぱダメか!」
まだ10分前でしたが、ダメだった時の、心の
11時52分。
「そろそろ
11時55分。
「なぁ、もういいかげん、なんかなきゃダメだろ」
たしかに今からだと、間に合いそうもありません。
12時00分。
「やっぱりな(笑)」
「ぜぇーったいなぁー、うまくなんて、いかないんだよなぁー」
「ぜぇーたい、なんだよなぁー」
「やーめた、やめた」
2時24分
まだ彼は、ねばっていました。時間つぶしに、もう
12時27分
ビニールのハギレとなった
12時28分。
もとの
12時29分。
どこかで、
12時37分50秒。
51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、01、02、03、04、05、06、07、08、09、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22……
きびすをかえして、ソルは立ちさりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます