第11話 サン・ヤーボリの白い船
ごちゃついた
その
夏休み前、さいごの
そこの名前も、
てぢかなトーキン・メトロからのりこみ、カンオンにみちびかれるまま、
しめきったバスの中よりも、いっそうこく
歩きだすと、ゆく手をとおせんぼするように、ビルが立ちはだかりました。大小さまざまな形のビルぐんの
やっと、切れ目から明るい光がさすと、
ぼんやり、むすうの白いヨットが、かさなって見えます。目の
まばゆい
サン・ヤーボリは
その中のほとんどが、ヨットの形をした
フェンスぎわを歩くソル。はしからはしまで歩いても、
ソルはもう一度、フェンスに顔をおしつけ、
――クラドンとは、クラランの
クラドンには、
ついさいきん、大手のカートゥーンコンテンツ
のっぺりとつづくフェンス。その一部が細長く切られ、ドアになっているのに、ソルは気づきました。横に引く
キョロキョロするソル。あたりに人の
彼は
とうとうたえかねて、彼はフェンスに手をかけました。足先が入るかどうか、
やく2メートル。このくらいは、よゆうよゆう。さて、ここから、しんちょうになります。やく3メートル。ここで
こういうときカンオン、は
足がガクガクしてきました。つま先はいたいし、こわばった指はつめたいし。とまっている方がつかれる気がして、彼はまた、のぼりはじめました。
やく4メートル。つかんだり、はなしたりしているうち、指の
下半身の力が「ヒュッ」と、ぬけ落ち、
なつかしき
止まっていても風だけで、ユラユラゆれている気がします。フェンス
「なんでもっと、ちゃんと作らないんだよ」
「ばかばか、死ねよ、ばぁーか」
ぬすっとたけだけしく、なにかに八つ当たりしました。
とにかく、上にいけば休めます。とうめん、力つきての
かた手がてっぺんをつかみ、さらに、もうかた方。りょう手でグンと、体を持ち上げ、おなかを
ぶわぁー、と耳に風があたるたび、ゆらぐてっぺん。むしろ、
ゆれる
しばらく休むと、
いきづまるほど
白い雲は、
巨大なものは
今どきの子のソルは、やおらカンオンで、ショートゲームをはじめました。このタイミングで、
おりかえしの下りは、あっという間。しんちょうをきしたはずなのに、まったく、おぼえていませんでした。
立っていることになれぬまま、目の前にもう、
ギチギチで止められた
デッキに上がってあらためて見まわすと、
いちおう
そこだけ
ちかよって
「いいね、これ」
「あ、
カンオンを見ずいいました。
「これってもしかして、あけられない?」
なんの気なしに、いいました。
「シュッ、コン」
ビンのフタを、あけたような音。
「え、マジで?」
「おいおい、あいたよ(笑)」
ロックの
「あーあ、あいちゃったよ」
「オレ、しらねぇー」
ほかに、とくに見るものはないようです。小さなモニター回りで、いじれそうな
「手もちブタさだなー」
りょう手を頭にまわして、
「エンジンでも、かけてみてよ」
なんとなしに、つぶやきました。
「カッツン、シュルシュルシュルシュル……
「わ、やばいって」
「とめろよ!」
「はやく止めろ!」
「シュウウゥゥゥーン」
しずまりました。
「あっぶねぇ、あせったー」
モニターはまっ黒ですが、赤と緑のランプだけ、
「なんだよ、まだ生きてんじゃん!」
「はよ、けせけせ」
なかなか、きえてくれません。おわりの
チカチカがやみました。ソルは
いちおうカンオンをプライベート・モードにしてはいましたが、まじないていどです。あわてふためく中、ふと、あるアイディアがうかびました。それは、だいたんなものでしたが、おもいでのラクガキのノリで、カンオンに、たのみました。どうせ、うまくいきっこないし、いかない方がいいくらいでした。
「シュッ、カツツッン」
ドアがロックされました。
「やばい、やばい」
「やばい、やばい」
「ギシギシ」
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