第5話 探索 2 ホルスの家
みちがどんどん細くなってゆきます。まだ日も高いのに、なんとなく、うす暗くなった気がします。そうこうしている内に、とうとう、まがりカドに行きあたりました。
立ち止まりそうなソル。ムキダシのまま、はだかで
エリゼ一とその
ゆくとも、ひくともできず、立ち止まることさえ、できないソル。ホルスの
カンオンがその
ひくい
エリゼそだちの彼にとっての
しかし、それよりソルの目をうばったのは、道の
それら
とおくの
池の外にも、中にも、子らがいます。子らが
ソルはギョッとしました。とうとう、鳥のむれが
ほんものと見まごう、
だんだんちかづいてゆくと、あっちこっちに、
でも、ソルがほんとうにおどろいたのは、
「バサバサバサバサ」
ソルはつかれていました。ボーッとしていました。車に長くのった後みたいな、まだゆられているような、そんな
エリゼの子であるソルには、ここは
彼はずっとイライラしっぱなしでした。なぜだかカンオンが
その一方で彼は、自分の
「カラカラカラカラ……」
暗さと、さむさと、つかれが重なると、いつものパターンで、
さっきから、鳥のはなし、ばかりしていました。他になにも、わだいがなかったからです。コトバのシッポに、つぎのコトバの
「なんでコッチばっか、しゃべってなきゃ、いけないんだ?」
と思うと、なんだかいつもの彼に、
ホルスは、ほとんどしゃべりませんでした。聞いているだけです。たまーに、あいづちをうつていど。二つ三つ
「なんとかいえよ、ゴルァ!」心の中で、ののしるソル。彼はしだいに、不安になってきました。やましさをおぼえつつ、あいての
シュッと、引き戸があきました。完全に
「いらっしゃい」
おじいさんが、おぼんをもって入ってきました。
「あ、ども」
小声で。
「よろしかったら、どうぞ」
テーブルにおくやいなや、ホルスが手をだし、ボリボリ食べだしました。
おじいさんは
二人がさり、ソル一人がのこされました。
さっきはビックリしました。じつは、彼がもっともおそれていたのが、うちの人との
ホルスのおじいさんは、ソルから見れば、しわくちゃでした。まるでタレントを
エリゼや、クララン市の
ソルはテーブルに目をむけます。オレンジジュースとクッキーが、
――
彼はなんの
しばらくした後、りょう手をつくと。
「フウー」
と大きく息をはき、のびをしました。やっとわれにかえり、彼はあらためて、まわりを見まわしました。
見まわせば、モノ、モノ、モノ、モノ。そのおびただしい量。あふれかかえる、ホルスのもちモノ。組立て
ソルは、モノとは
「いったい、自分のモノってなんだろう?」彼は
ホルスといる時、このヘヤの中で、見ないようにしていた
手足のないロボット、シャシーだけの車のラジコン、ゴムのキャタピラのとれた
空になったスーパーのカゴの中に、紙の
ヘヤのすみで暗くてよくわかりませんが、鳥カゴから、たまにカサカサする
ようやっとホルスがもどってきたので、ソルは、はなしをきりだすことにしました。
「あの、その、あの鳥のことなんだけど、ちょっといいかな」
「聞きたいことがあるんだけど、あれってもしかして、ケガとか
ホルスは、とうに
「もしそうなら、ここにおいといちゃ、マズイんじゃないかな」
ホルスはやっと、こっちをむきました。
「もしかしたら、くるんじゃないかな。だれか」
ホルスの顔の中心から、不安の色が広がってゆくのが見てとれました。
「くるって……。だれが?」
ソルはだまっていました。彼がしるわけがありませんが、
「鳥もってちゃ、いけないの?」
「ケーサツとか、くるの?」
彼はさっきまで、ホルスにハラを立てていましたが、きゅうに、自分がイヤになってきました。
「ケーサツか、どうかはしらないけど、それはト―ロクされてないだろ。足に
カンオンでかじった、なまじっかな
「その鳥はたぶん、ヤセーじゃないかな」
「ヤセーって、なに?」
え、そこから? と彼は思いましたが、そういわれてみると、それがなんなのか、彼は答えることができません。
「ようはその、なんてゆうか、その、人にたよっていないってことさ」
ソルは、たよっていない、というコトバにフリーズしかけます。ホルスは
「ようするに、人にかわれていないってことさ、エサとかもらってないんだよ。かんりされてないから、どんな
早口でまくしたてましたが、色々気にしているのは、ソルだけでした。ホルスはそれどころではありません。
「
ホルスはむごんで、鳥を見ています。
また、ダンマリかよ。ないしんイラつくソル。
「ヨボーセッシュとか、うけてないだろ」
「ヨボーセッシュ?」
「
「お金だって、かかるんだぜ」
ソルはなんだか、死にたくなってきました。
「
「さあ、ト―ロクもしてないし……」
しるかよ、てめぇーのカンオンに聞け! 彼は心の中でどなりました。それはエリゼの子たちが、切れたときに、よくつかうフレーズでした。私たちでしたらさしずめ、しらんがな、ググれカス! といったところでしょうか。
「
なんでこいつ、きゅうにジュ―ジュンになってんの? ちょっとおどろき、ホルスのきょくたんな
「いや、さっきからカンオンのちょうしが、なんかわるいんだ。しらべられないんだよ」
つごうのいい時にカンオンがつかえなくて、たすかりました。一つ分のウソをへらせます。
「そのー、きみはその」
「そもそも、ト―ロクできなんじゃないかな……」
「……」
「……」
ホルスは、じっと鳥を見ていました。ソルも鳥を見ていました。
ドアノブにさわった手を、ひっぱったスソでぬぐいながら、きざはしのきわに歩みよります。暗い
まえをむいたまま、
うす暗がりの中、リビングの方から音がします。げんかんにむかう、とちゅうの戸があいていて、ソファにいるおじいさんの
その
彼はぬき足さし足で、そのそばを後にしました。
げんかんを出てすぐ、ホルスによび止められました。
「これ、かぶってけって、」
まっ赤なフェルトのフードを、手わたされました。おじいさんからなのでしょう。ズッシリと重く、あやうく落としそうになりました。ホルスはさくっと、家にもどりました。つっ立ったままのソルは、彼らの
鳥はいったん、ソルがあずかることにきまりました。おくる手はずは彼のカンオンがすませ、
カンオンをもつものは、その空気のような
どっと、つかれました。まだ帰り道があるのです。きた
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